みなさまこんにちは。フェルディナント・フォン・シーラッハ作品を担当している翻訳班Sです。

このたび、なんとシーラッハさんの『テロ』をドイツでドラマ化したものが、日本唯一のミステリー専門チャンネルAXNミステリーさんで〈生放送「裁判劇テロ」あなたの審判は?!〉として放映されることになりました! ドイツやヨーロッパ各国ですごく話題になったことは知っていたので、日本でも観られることになってとってもうれしいです!

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© Julia_Terjung_ARD_Degeto_Moovie

さて、最初に著者のシーラッハさんと『テロ』の簡単なご説明を。シーラッハさんは刑事事件専門の弁護士で、『犯罪』『罪悪』などで実際の事件に材を得て異様な罪を犯した人間たちの真実を鮮やかに描きだしました。著者の体験がベースになっていると思われる、新人弁護士が主人公の『コリーニ事件』では、見事な法廷劇を通してドイツで本当にあった驚くべき“法律の落とし穴”を人々に知らしめました。

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© Michael Mann

そんな著者が発表した『テロ』は、なんと二通りの結末が用意された驚きの法廷劇です!

ドイツ上空で旅客機がハイジャックされた。テロリストがサッカースタジアムに旅客機を墜落させ、7万人の観客を殺害しようと目論んだのだ。しかし緊急発進した空軍少佐が独断で旅客機を撃墜する。乗客164人を殺して7万人を救った彼は英雄か? 犯罪者か? 
結論は一般人が審議に参加する参審裁判所に委ねられた。検察官の論告、弁護人の最終弁論ののちに、有罪と無罪、ふたとおりの判決が用意された衝撃の法廷劇。どちらの判決を下すかは、読んだあなたの決断次第。

『テロ』は戯曲として執筆されており、実際の劇として上演することができます。検察官と弁護人がそれぞれの意見を述べたあとで、有罪か無罪かを観客の投票によって決定します。多数決で多いほうの結末のみが上演されるという体裁になっています。

そして今回AXNミステリーさんで放送される〈生放送「裁判劇テロ」あなたの審判は?!〉も、ヨーロッパと同様に、視聴者のみなさんに電話によるリアルタイム評決を行っていただき、多数決で選ばれたバージョンが放送されるそうなんです! こういう放送の仕方はAXNミステリーさんでもかなり画期的なことらしく、シーラッハ作品に対する深い愛情を感じております。ありがとうございます!!

この記事を書くためにドラマを一足先に観てみました。最初は原作を片手に「あ、ここのセリフは削ったんだな」とか「あ、ハイジャックが起こった年なんかも変えているのね」と違いを楽しんでいたのですが、次第に引き込まれ、気がついたら緊迫の法廷劇にどっぷり浸かっておりました。やっぱり戯曲とは違ったドラマならではの良さがあって、顔のアップとか身振りとかのおかげで人々の感情がダイレクトに伝わってくるんですね。裁判所で実際の裁判員裁判を見学したことがあるのですが、そのときの雰囲気を思い出しつつ、とても緊張しながら観てしまいました。

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© Julia_Terjung_ARD_Degeto_Moovie

また、脚本家の方が、戯曲に書かれていないことまでしっかり想像しているのだなというのが感じられました。特に、傍聴席の様子などは原作にほとんど記述がないため、「こういうふうにしたのか!」という驚きがありました。ぜひ注目してほしいです。そして視聴者の意見が有罪、無罪、どちらかに偏ることがないよう、きっちりフェアに作られているのも印象的でした。ほんとうに、今回の生放送ではどちらの結末が放映されるのかさっぱりわからないですね。もう一方の結末が気になる方は、両方の判決が掲載されている原作を読んでみてください!(ここぞとばかりに宣伝)

〈生放送「裁判劇テロ」あなたの審判は?!〉はAXNミステリーにて 6月17日 (土) 20:00放映開始です! どうぞお楽しみに!!

詳細はこちら(公式サイト):https://www.mystery.co.jp/programs/verdict


(2017年5月23日)



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