「東京創元社新刊ラインナップ説明会2017」で
好評だったスピーチを全文公開!
イベント後に収録した著者インタビューに加え、
サイン本が当たるプレゼント企画つき!
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2017年2月23日におこなわれた「東京創元社新刊ラインナップ説明会2017」に、ゲストとして参加された『ペナンブラ氏の24時間書店』の著者ロビン・スローン先生。ここで、当日読みあげられたスピーチの全文とその日本語訳を公開します。
さらに、イベント後にロビン・スローン氏に対しておこなったインタビューも特別公開!
さらにさらに、スローンさんにサインしていただいた『ペナンブラ氏の24時間書店』文庫本を、抽選で3名のかたにプレゼントします!
応募方法の詳細はこの記事のいちばん下をご覧ください。
ROBIN SLOAN -- BRIEF REMARKS
I think of them as super heroes -- using not only their super intelligence and super erudition, but a kind of super strength. I imagine their muscles stretching to establish sturdy bridges between languages, between continents, between cultures.
I'm speaking, of course, about translators.
When you're writing your first novel, you hardly dare to imagine that people in your *own* country will read it, let alone others. So translation comes as a surprise, and a gift.
But of course it's not the first one. Every writer is a reader first. The translators' gifts have piled up over the years.
There's the gift of Yoko Ogawa's "The Housekeeper and the Professor," translated into English by Stephen Snyder.
There's the gift of Hayao Miyazaki's "Nausicaa and the Valley of the Wind" -- the manga, not the movie -- which is my favorite book of all time, and which required a whole team of translators: Toren Smith, Dana Lewis, and Matt Thorn.
There's the recent gift of "The Decagon House Murders," a honkaku mystery written by Yukito Ayatsuji in 1987, but only translated into English very recently, in 2015. I'm grateful to its translator, Ho-Ling Wong, for a new favorite.
And of course, there is the great gift of Hiroko Shimamura's craft and care -- which makes it possible for readers to explore "Mr. Penumbra's 24-Hour Bookstore" in Japanese.
Every translation has ripple effects. These books -- "Nausicaa," "The Decagon House Murders," and so many more -- they are all present in my work.
And so it becomes a loop, or a great spinning wheel -- book to book, mind to mind, all of us influencing each other and being influenced in return. Everyone has a role to play: the writer, the publisher, the reader.
But none of it would be possible without the super heroes and their exertions.
So, here in Tokyo, the only thing I want to say is "thank you" -- to Hiroko Shimamura, and all the translators of the world.
May the wheel keep spinning.
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ロビン・スローンからのメッセージ
私は彼らのことをスーパーヒーローだと思っています。並外れた知性と知識を備えているだけでなく、ある種の特別な精神力も持っている、そんな人たちです。彼らは大いなる努力により、異なる言語と言語、大陸と大陸、文化と文化の間に、揺るぎない橋を架けてくれるのです。
いったい誰のことを話しているのか? もちろん、翻訳者のことです。
初めての小説を書くときは、自分の国で読まれるということさえ、なかなか想像できないものです。それが「翻訳」されるというのは、予期せぬ贈り物をもらうようなものです。
もちろん、それは今に始まったことではありません。どんな作家も最初は読者です。翻訳者たちからの贈り物は、長い時を掛けて積み重ねられてきたのです。
そんな贈り物のひとつに、小川洋子氏の『博士の愛した数式』があります。この作品はスティーヴン・スナイダー氏によって、英語に翻訳されました。
宮崎駿氏による『風の谷のナウシカ』のコミック版は、私の一番好きな本です。この作品は、トーレン・スミス氏とデイナ・ルイス氏、そしてマット・ソーン氏のチームワークにより、英訳されました。
最近では、綾辻行人氏の本格ミステリー『十角館の殺人』があります。日本では1987年に出版された作品ですが、英語版が出たのはごく最近、2015年のことです。私の新たなお気に入りとなった本作を訳してくれた、ホーリン・ウォン氏に感謝します。
そしてもちろん、島村浩子氏による素晴らしい贈り物があります。彼女の細やかな職人技のおかげで、日本の皆さんも『ペナンブラ氏の24時間書店』を訪れることができるのです。
すべての翻訳は、さざ波が広がるように、後の作品に影響を与えていきます。『風の谷のナウシカ』や『十角館の殺人』、そして多くの翻訳作品が、私の作品の中に存在するのです。
こうして翻訳は、一つの輪になっていきます。あるいは大きな紡ぎ車のようなものかもしれません。本から本へ、心から心へ、私たちは皆互いに影響を与え合います。作家、出版社、読者――それぞれが役割を持っているのです。
しかし、スーパーヒーローたちの多大な努力が無かったら、この動きも止まってしまいます。
ですから、この東京で私が伝えたいのはただ一つ、島村浩子さん、そして世界中の全ての翻訳者の皆さん、「ありがとう」。
この偉大な紡ぎ車が動き続けますように。
ロビン・スローン氏特別インタビュー
――新刊ラインナップ説明会でのスピーチ、すばらしかったです。日本にいらしたのは今回が初めてですか?
スローン ありがとう。以前の仕事やプライベートでいろいろな国……イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン……バングラデシュや韓国にも行ったけど、日本は今回が初めてだね。
――かなりたくさんの国に行かれていますね。そのことはスピーチで話された「翻訳」に対する考え方に影響を与えていますか?
スローン 僕自身に関していえば、「旅行」と「翻訳」のどちらかがどちらかに影響を与えたわけではないかな。ただ、「家に居ながらにして『旅行』ができる」のが「翻訳」の良いところだよね。本を通じて日本やロシア、ドイツ、中国などさまざまな「遠くの異なる声」に触れることができる。そこが「翻訳」のすばらしい点だと思う。
――『ペナンブラ氏の24時間書店』の中には、実在するフィクション作品が多数登場します。これにはどういった意図があるのでしょう。
スローン ここで取りあげたのはすべて、実際に僕の本棚にある、大好きな作品だよ。『ペナンブラ』自体、それらに対する一種のオマージュだったんだ。本を書くとき、何も無いところから生まれたりはしない。それまでに読んできたすべての本が糧になっているわけだから、それらの作者たちに対する敬意や感謝の気持ちを表したかったんだ。僕にとっては、とっても大切なことだった。
――ジャンルの割合としては、SFが多いように感じました。いくつか好きな作家や作品について教えてください。
スローン 古典作家ではアイザック・アシモフ。〈銀河帝国の興亡〉シリーズが大好きなんだ。それにフランク・ハーバートの『デューン』。あれは史上最高のSFのひとつだね。ダグラス・アダムスの『銀河ヒッチハイク・ガイド』も、クセはあるけど大好きだよ。もっと新しい作家ではイアン・バンクスがいいね。彼ははるか遠い未来への想像をかきたてる作品をいくつも書いていた。数年前に亡くなってしまったけど、非常に偉大な人だったと思う。イギリスのベテランSF作家M・ジョン・ハリスン(著作に『ライト』など)もお気に入りだよ。
――挙げていただいた著者の本が好きな人なら、あなたの本も気に入ってもらえると思います。この小説でいちばん印象的かつユニークだったのが、例えば活字の本と電子書籍、印刷技術とコンピュータの最新デジタル技術といった、古いものと新しいものが両方出てくるとき、どちらか一方に肩入れするのではなく、フラットな視点で書かれていることでした。この点も意識されて書かれたのですか。
スローン うん、それは完全に意図的にやったことだね。こういうテーマについて議論すると、どうしても「伝統技術VS最新テクノロジー」、「紙の書物VS電子書籍」のような二項対立になりがちだけど、僕は常々、そういう「戦い」のような捉え方は違うと思っていた。本当はすべて共存することができるし、みんな全部を楽しめるはずだと思っていたので、そのことをこの小説の中で見せたかったんだ。
――では最後に、まだあなたの本を読んだことがない人に向けて『ペナンブラ氏の24時間書店』を紹介してください。いわば自分の本を使った「ビブリオバトル」です。
スローン わかった、やってみよう。
……この『ペナンブラ氏の24時間書店』は、さまざまなジャンルがミックスされてできた作品です。ミステリーやファンタジー、テクノロジーといったいろんな要素が、ちょっとずつ混ぜ合わされている。そしてその中心には、「友情」それに「皆で協力して問題を解決する」という普遍的なテーマがあります。
日本の皆さんには、いま現在のサンフランシスコのベイエリアでの暮らしを垣間見ることができるって点も、面白がってもらえるんじゃないかな。もし、中身が楽しめなかったとしても、この本を買えばスカイエマさんの描いたとってもすてきなカバーを本棚に飾れるよ!
……こんな感じかな? そういえば、この本についてはアメリカ国内やカナダでもイベントをやったけど、いわゆる「海外」、海を越えたところでのイベントに出席したのはきょうが初めてだね。貴重な機会をありがとう!
――こちらこそ、きょうはありがとうございます。
(2017年2月23日、東京創元社新刊ラインナップ説明会会場にて収録)
『ペナンブラ氏の24時間書店』著者サイン本プレゼント
『ペナンブラ氏の24時間書店』文庫版発売&著者来日を記念して、ロビン・スローン先生のサイン入り文庫本を抽選で3名のかたにプレゼントいたします。
ご希望の方は、下の応募フォームよりお申し込みください。ご応募多数の場合は抽選となります。当選発表は、商品の発送をもって代えさせていただきます。
※サインは本扉に入っています(画像参照)。また、為書きなどはお受けできません。あらかじめご了承ください。
■お申し込み締切:2017年3月12日(日)
※終了いたしました。たくさんのご応募、誠にありがとうございます。
(2017年3月7日)
【2009年3月以前の「本の話題」はこちらからご覧ください】
海外ミステリの専門出版社|東京創元社