ロサンゼルスで私立探偵業をしているガイ・ロガートは、かつてGIとして日本に駐留していた時代の上司ブランドンから調査依頼をうけます。ブランドンの妻がヘロインを隠し持っていて、素行を調べてほしいというのです。ロガートが尾行をはじめた矢先、ブランドンの妻は何者かにさらわれ、ロガートも襲われて……。
後の小泉の作品からはなかなか想像がつかないユーモア・ハードボイルドで、小泉のファンが落穂拾いに読むにはちょっと厳しいかもしれません。あとがきで語るように小泉自身の読書嗜好(しこう)に沿った内容で、クレイグ・ライスやカーター・ブラウンの味わいをみせています。発表当時にこの味を書けた日本人作家は他に都筑道夫か山下諭一、それに河野典生(てんせい)くらいではなかったでしょうか。このあたりの作家にひかれる方には間違いなく楽しく読める作品です。
大学生の桐原は、彼女が身ごもったようだと気付き、寂しい懐(ふところ)事情をなんとかしようと魔が差してしまいます。悪友・古川の誘いにのって、古川の叔父が隠し持つ金品を盗もうと屋敷に忍び込みますが、どうも古川の様子が事前の計画どおりではありません。桐原は騙(だま)されたようなかたちで窮地に追い込まれることになり……。
そのストレートな題名と、シリーズ探偵の弁護士・俵岩男の登場作だというところから、弁護側の目撃者探しという筋だと容易に予測がつくのに、道中の展開はそれを忘れさせてしまう意外性に満ちていますね。また「アプレゲールの犯罪」ものではじまった物語が、青春小説のような情感をともなう着地をする巧さには、乱歩が 「感情の探検家」と称した大下の特徴がよくあらわれているように思います。
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■大川正人(おおかわ・まさひと)
ミステリ研究家。1975年静岡県生まれ。東京工業大学大学院修了。共著書に『本格ミステリ・フラッシュバック』がある。
(2017年5月31日)
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