ディナーのあとで謎解きを
科学、歴史、暗号、アリバイ……
会員を悩ます多様な分野にわたる謎も
名給仕ヘンリーにかかれば一刀両断
解説:東川篤哉




 アイザック・アシモフ『黒後家蜘蛛の会』新装版も早いもので3冊目。本書も1、2巻と同様、さまざまなジャンルやテーマの謎解きが楽しめる12編を収録しています。会員たちの雑談→(主に)ゲストが持ちこんだ《謎》の討論→給仕ヘンリーの鮮やかな解決という黄金パターンもすっかり確立し、どの話を読んでも「〈黒後家〉ものを読んだ」という満足感が得られることうけあいです。

そして、3巻の新解説は『館島』『謎解きはディナーのあとで』などの東川篤哉先生。かねてより『謎解きはディナーのあとで』『黒後家蜘蛛の会』の影響するところ大である、と公言されていらっしゃっただけに、満を持しての登場となりました。

……満を持しての登場のはずなのですが、どうも様子がおかしい。ちょっと解説の冒頭を引用してみましょう。

 東京都国立市の某所にデンと聳える西洋屋敷、宝生邸。そのリビングでは真紅のドレスを纏った宝生麗子が、ソファに腰を沈めてワイングラス片手に読書中。やがて本をパタンと閉じた麗子は、傍らに控えるタキシード姿の執事に悪戯っぽい視線をやると、唐突にこう尋ねた。
「ねえ、影山、わたしは名高い宝生家のひとり娘で、美人で知的で可愛くて、おまけに国立署の現職刑事でもあるから、敢えて身の証を立てる必要なんてないけれど――あなたは何をもって自身の存在を正当とするのかしら?」


……どうやら、東川先生ご本人ではなく、どこか見覚えのあるお嬢様刑事と毒舌執事が出張してきて、〈黒後家蜘蛛の会〉について大いに語っているようです。その内容は、ぜひご自身でご確認ください。

アイザック・アシモフ『黒後家蜘蛛の会3』は8月10日刊行です。


〈黒後家蜘蛛の会〉には数々のお楽しみがある――会員たちによる丁々発止の会話、ゲストが食後に提供する多様な謎、そしてその難問を見事に解決する偉大なる給仕ヘンリーの名推理が。黄金パターンを確立した、殿堂入りの連作ミステリ短編集第3巻には、火星や日蝕の様相など科学の領域から、アメリカ大統領にまつわるトリビアまで、多岐にわたる分野に材を取った全12編を収録。


(2018年8月7日)




【2009年3月以前の「本の話題」はこちらからご覧ください】

海外ミステリの専門出版社|東京創元社