ホペイロの憂鬱
 前回のスパイク関連に続きまして、ユニホームやボールもここ数年で大きく変わってきました。ユニホームに関しては、やはりスポーツ用素材の革新により軽量化と通気性のアップが大きな変化といえるでしょう。どのスポーツウエアも一緒ですが、かつては綿(綿混だった気がします)が使われることが一般的でした。ですから汗を吸って重くなるし、寒い時期の試合だと汗冷えはするしで、子供の頃は大変でしたね(逆にいまは通気性がよすぎてお腹がひえるときもありますが)。
 また90年代初頭頃からはインナースパッツ(サッカーパンツの下に履くもの)が登場します。当初は何色を履いていてもかまわなかったのですが、最近の公式ルールでは、パンツの主たる色と同色でなくてならないため、その組み合わせも悩ましいところです。
 一方でシャツの方も下に着用するストレッチインナーの登場により変化が出てきました。これまでは、寒いときは長袖、暑いときは半袖と二択でしかなかったのですが、半袖シャツのみ、半袖シャツの下に長袖のインナー、長袖シャツのみ(寒い場合によっては長袖インナーも着用)と三択以上の組み合わせでの準備が必要になってきます。加えてスタメンで出場する選手は、ハーフタイムで着替えるでしょうし、『ホペイロの憂鬱』「忘れ物リング」内でも触れていますように、試合前のウォーミングアップ用のウエアまで合わせるとその量も大変なものになります。選手、スタッフ併せると20人以上になりますから。
 ちなみに、ここ最近ではストッキングまで変化があります。国内外の選手(例えばメッシ選手や、日本代表の本田選手、長友選手など)の足下をよくよくみると、その足首から下は微妙に色味の違うソックスを着用している写真がみつけられると思います。足首から先を切り取って、踏ん張りやすいように五本指ソックスを着用したり、滑り止めのついた機能性ソックスを着用したりもあります。ホペイロさんが、試合前に足首から先を切り落としたりなんて作業をするクラブもあると聞きます。それに併せて、足首から下のないレッグウォーマーのようなソックスを用意するメーカーさんもあるようですね。
 もっといえば、シンガード(スネ当て)にこだわる選手、スパイクのインソールにこだわる選手、必ずヘアバンドを着用する選手、リストバンドを着用する選手などなど、十人十色の好みに応じた準備をすることで、試合でベストパフォーマンスをしてもらうことに繋がるのでしょうね。

 ボールも2006年(ドイツ大会)のW杯公式球から大きく変化しました。デザイン的な変化はありましたが、しばらく(1970年~202年まで)が五角形(12枚)と六角形(20枚)を組み合わせた(白黒のボールをイメージしていただければ)ボールが主流でしたが、06年の公式球からは枚数を減らしてより球体に近づいた仕様になっています。『ホペイロの憂鬱』でも“本官ボール”なんて表現で登場しています。ブレ球という言葉が一般化したのもこの頃からです。もちろん、メーカーによって昔ながらの五角形、六角形デザインのボールもまだまだ現役ですけれどね。どちらかというと、手縫いだったボールが、圧着式になって凸凹がなくなってきたというのが正解かもしれませんが。
 ところでヨーロッパの主要リーグの公式球は、スペイン(ナイキ社)、イングランド(ナイキ社)、ドイツ(アディダス社)、イタリア(ナイキ社)となっています。ここにチャンピオンズリーグ(アディダス社)や、UEFAカップ(アディダス社、来シーズンからはモルテン社に変わるのも大きなニュースでした)と、国内外のカップ戦ではまた異なることも多いです(日本ではJリーグとルヴァンカップがアディダス社、天皇杯がモルテン社、JFLがアンブロ社と様々)。ですから、リーグ戦用の練習と、カップ戦の練習では準備するボールも異なってきます。ちなみに、W杯公式球(アディダス社)の技術は、日本の会社(モルテン社)から提供されているようです。その縁なのか、JリーグはW杯本戦に先立って公式球を使用しており、クセの強かった2010年大会(南アフリカ大会)のボールにいち早く順応していたとも言われています。
 これをお読みの方は、ボールの変化なんでとお思いでしょうが、ほんと違いますから。最近のボールの蹴り心地は、やや軽く柔らかめです。メーカーやブランドによって違いますから、繊細な選手にとっては困るでしょうね。
 いや~、これが毎シーズン、下手をするとシーズン途中からのルール変更(ヨーロッパのシーズンが夏開幕、翌春閉幕のため)に対応するホペイロさんなど、クラブの裏方さんたちには頭が下がります。練習場所もクラブハウスの目の前にあるわけではありませんからね。映画内の白石くんが演じるホペイロ坂上ではありませんが、転々とする練習場に併せて、ボール他を準備するのがほぼ毎日になりますものね。お疲れさまです。
 そんなこんなで、二回に亘って映画「ホペイロの憂鬱」応援企画をお贈りしました。この後は映画館でぜひ。

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(2018年1月31日)



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