鳥籠の家
 顔の半分を漆にかぶれたような爛れに覆われた少年、豪商天鵺家の跡継ぎ鷹丸。そんな若君の遊び相手として迎え入れられたのは、天鵺家の分家にあたる沖野家の娘、茜だった。兄ふたりに鍛えられ、男の子とばかり遊んでいた明るいお転婆娘。他にも沢山いた若君のお相手候補のお嬢様たちのなかで、なぜ茜が選ばれたのか……。

 天鵺家の屋敷は、沖野家の生活からは想像もつかぬほどの豪華なものだった。沢山の部屋、贅沢な玩具の数々。だが、天鵺家での日々は、いくつもの奇妙な禁忌やしきたりに縛られていた。
 虫の模様のものを身につけてはならない。虫は見つけ次第殺すこと。鳥を傷つけたり追い払ってはならない。口笛を吹いてはならない……。そして、鳥女と呼ばれる守り神。茜と同じくらいの年齢の少女の姿で、ぼろぼろの着物を着て、手足は傷だらけ、口もきけない。代々の天鵺家の若君を守る、人ならぬ不思議な存在。

 そんな天鵺家での若君との毎日に茜がようやく慣れてきた頃、茜がひとりで留守を預かっていたそのときに、屋敷の背後に広がる黒い森から人ならぬものが襲撃してきた。それは、かつて富と引き換えに実の兄の手で魔物に捧げられた天鵺家の女、揚羽姫の怨霊だった。

 代々の一族の後継ぎにのしかかる負の鎖を断ち切るため、茜と鷹丸はふたりきりで黒い森へ向かう。〈妖怪の子預かります〉シリーズで人気の著者の時代ファンタジー。

(2017年12月7日)



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