今年2017年は「新本格30周年」として、記念イベントや刊行物が話題となりました。その最後を飾るのが、市川哲也『名探偵の証明』の文庫化である(ということにしておこう)。
なぜなら、本書の設定は1980年代に一世を風靡した屋敷啓次郎という名探偵(解決率はほぼ100%)の活躍に日本中が名探偵ブームとなり、そこからミステリ界に波及して新本格の作家たちに影響を与えたという。単行本を刊行した時にはあまり思いませんでしたが、こうして今年新本格30周年という年を考えてみると、何と大胆な設定であろうか! デビュー前からこんな事を考えているなんて、野心的だなと驚いてしまいます。
ただ、そういった大胆な設定は冒頭部分でしかなく、本書の本質的なところは「名探偵とはいったい何なのか」といった問いに、真摯に応えたストーリーに仕上がっています。舞台としては、名探偵・屋敷啓次郎が活躍していた時代(1980年代)から、一気に現代に飛びます。還暦を過ぎたかつての名探偵の姿はどうなのか? 現代に活躍する名探偵である蜜柑花子は、どんな活躍をみせるのか? 伝説の名探偵と、現代の名探偵の対決はあるのか? そこは読んでのお楽しみ。
ちなみに、これまでの市川さんの作品すべてに登場する、この名探偵・蜜柑花子。のちの『名探偵の証明 密室館殺人事件』『名探偵の証明 蜜柑花子の栄光』さらに、『屋上の名探偵』でも重要な役割を担っています。あまりにも事件に巻きこまれてしまうことから、子供のころから“死神”とも揶揄されており、とある本との出合いから、自身の名探偵としての素質を肯定的に捉えることになります。そのきっかけとなった本というのが、屋敷啓次郎が自伝的に綴った小説『名探偵の証明』、そしてその続編の『名探偵の証明 弐』(タイトルが本書と一緒なのがややこしいが、もちろん別物です)であるのだ。
個人的には、屋敷が書いたこの二冊、どんなストーリーなのか気になります。屋敷が出合ってしまって、解決してきた数々の事件について詳細に書かれているということなので、仕上げるのは大変そうですよね、市川さん!
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なぜなら、本書の設定は1980年代に一世を風靡した屋敷啓次郎という名探偵(解決率はほぼ100%)の活躍に日本中が名探偵ブームとなり、そこからミステリ界に波及して新本格の作家たちに影響を与えたという。単行本を刊行した時にはあまり思いませんでしたが、こうして今年新本格30周年という年を考えてみると、何と大胆な設定であろうか! デビュー前からこんな事を考えているなんて、野心的だなと驚いてしまいます。
ただ、そういった大胆な設定は冒頭部分でしかなく、本書の本質的なところは「名探偵とはいったい何なのか」といった問いに、真摯に応えたストーリーに仕上がっています。舞台としては、名探偵・屋敷啓次郎が活躍していた時代(1980年代)から、一気に現代に飛びます。還暦を過ぎたかつての名探偵の姿はどうなのか? 現代に活躍する名探偵である蜜柑花子は、どんな活躍をみせるのか? 伝説の名探偵と、現代の名探偵の対決はあるのか? そこは読んでのお楽しみ。
ちなみに、これまでの市川さんの作品すべてに登場する、この名探偵・蜜柑花子。のちの『名探偵の証明 密室館殺人事件』『名探偵の証明 蜜柑花子の栄光』さらに、『屋上の名探偵』でも重要な役割を担っています。あまりにも事件に巻きこまれてしまうことから、子供のころから“死神”とも揶揄されており、とある本との出合いから、自身の名探偵としての素質を肯定的に捉えることになります。そのきっかけとなった本というのが、屋敷啓次郎が自伝的に綴った小説『名探偵の証明』、そしてその続編の『名探偵の証明 弐』(タイトルが本書と一緒なのがややこしいが、もちろん別物です)であるのだ。
個人的には、屋敷が書いたこの二冊、どんなストーリーなのか気になります。屋敷が出合ってしまって、解決してきた数々の事件について詳細に書かれているということなので、仕上げるのは大変そうですよね、市川さん!
(2017年12月6日)
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