お待たせしました! 〈ドイツミステリの女王〉ネレ・ノイハウスの「刑事オリヴァー&ピア」シリーズ第5作、『穢れた風』をお届けします!

いやー、Twitterで「ノイハウスの新作出ますよ~」「カバーはこんな感じですよ~」とつぶやくたび、たくさんの方にリツイートしていただき、わたくし担当編集者Sはたいへんうれしかったです。新刊を待ってくださる方のおかげで、ぶじ5作目まで刊行することができました!

とはいえ「前に4巻もあると読むのが大変そう」と思われる、シリーズ未読の方もいらっしゃるかもしれません。ご安心ください! このシリーズは一巻ごとに事件が独立しており、既刊のネタバレなし。おまけに、各巻で「悪女(?)もの」「バラバラ死体もの」「ナチもの」「ドイツ版横溝正史!?」と特色がまったく違うのです。だからどこから入ってもだいじょうぶ。おすすめはナチにからんだ連続殺人でドイツミステリの魅力がたっぷり味わえる『深い疵』(シリーズ3作目)です! 登場人物が多い! でも家系図つきでわかりやすい! 2012年の『IN★POCKET』文庫翻訳ミステリー・ベスト10/読者部門で2位に輝いた面白さ抜群の作品です! もちろん、シリーズ一巻目から追いたい方は、『悪女は自殺しない』をどうぞ。こちらは「ノイハウス作品の登場人物ってほんと嫌な人物多いよね」「殺されて当然って感じだよね」という感想が聞こえてくる、ドロドロの人間関係のおそろしさが味わえる一冊です!!

そう、この「刑事オリヴァー&ピア」シリーズの特色のひとつが、濃ゆーい登場人物たちが織りなす人間ドラマ! オリヴァーは貴族出身(フルネームがオリヴァー・フォン・ボーデンシュタインといういかにもな感じ)の紳士でハンサムな刑事で、仕事のできる3児の父。ところが巻を重ねていくうちにダメ男要素がちらっちらっと顔を出すようになり、最近は「オリヴァーってほんとさあ!(怒りマーク)」という怖いお姉さま方の感想が聞こえてわたしはおびえています。
対するピアは動物好きでさっぱりした性格の女刑事。離婚して牧場を買って馬や犬たちと暮らしています。オリヴァーと違ってピアはどんどん有能さが見えてくるようになり、特に鋭い直感が事件解決に役立つことが多いです。過去に犯罪に巻き込まれてつらい体験もしていますが、それでも負けずに捜査に邁進する姿がかっこいいです! 男女コンビものの警察小説がお好きな方は必読ですよ!

捜査側であるオリヴァーもピアも、刑事である前に夫であり恋人であったりするので、仕事と日常生活との両立が大変なのも読みどころ。でもそれがしっかり事件自体の面白さとからんでいるところもすばらしいのです。『穢れた風』の解説で、書評家の大矢博子さんがこうおっしゃっています。
「弱いのは罪を犯す人間だけではない。刑事もまた弱さと事情を持つ人間に他ならない、ということがこのシリーズからは見えてくるのだ。そしてこれこそが、本シリーズが世界中で支持されている要因のひとつであり、ノイハウスが最も描きたかったことではないだろうか」
うーん、まさに! 特にこの『穢れた風』は、「えっ! オリヴァー!? どうなっちゃうの!??!」というものすごい展開になるので、オリヴァーのダメ男ぶりがツボな方はぜひぜひお手に取ってみてください。

もちろんミステリとしての面白さもすごいですよ(最初に言うべきだというツッコミはなしでお願いします)!! 特に今作は著者のミスリードがうまく、ある時点で意外な事実が明らかになったときに、「そうだったのかー!」感をがっつり味わえます。これだけの複雑な事件をよくもまあ、中だるみなしに読ませるなと、リーダビリティの高さにほれぼれします! さすが世界20か国で翻訳されて、累計700万部を突破しているおそるべきシリーズです。部数、調べてびっくりしました……。

ふう、いろいろ熱く語ってしまいましたが、新刊は10月21日ごろ発売です。とにかく面白いので、ノイハウス『穢れた風』ならびに「刑事オリヴァー&ピア」シリーズをよろしくお願いします!
(東京創元社S)

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『穢れた風』

風力発電をめぐる殺人と巨大な陰謀!

風力発電施設建設会社で夜警の死体が発見された。ビルには何者かが侵入した形跡が。奇妙なことに、社長室のデスクにハムスターの死骸が残されていた。これは何を意味しているのか? 風力発電の利権をめぐって次々に容疑者が浮かびあがり、さらに殺人が……。
再生可能エネルギーにかかわる国家的犯罪なのか。巨大な陰謀に呑み込まれる刑事たち。ドイツのナンバーワン警察小説!

(2017年10月18日)



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