『忘れられた花園』『秘密』に続き、青木純子さん訳によるケイト・モートン『湖畔荘』がそろそろ書店に並びます。
 またもや上下巻! 各巻300ページ超えですが、そこはケイト・モートンのことですから読者の皆様を退屈させることなどありません。

 ケイト・モートンか……女性向けだよねとか、ロマンス風じゃないか? といった印象から敬遠なさる方もいらっしゃるかと思います。
 もちろんそういう味わいのある作品なのですが、モートンが他のそうした作品群と違うのは、きっちりとミステリであるところなのです。
 あの時代にあそこであんなことがあった……それがあのことなのか……。
 あの時の彼(彼女)のあの行動がそれだったのか……。
 ミステリであれば当たり前といえば当たり前のことなのですが、伏線とその回収が、ケイト・モートンの豊穣な物語の流れに組み込まれていると、大いなるうねりの中にまぎれてしまい、読んでいてミステリということをつい忘れてしまうのです。それほど、物語を読む楽しみが溢れているということでしょうか。
 とはいえ、モートン作品は翻訳ミステリー大賞を二度受賞(『秘密』は翻訳ミステリー大賞読者賞も同時受賞。『忘れられた花園』の時にはまだ読者者賞はありませんでした!)しているのですから、そう、皆さん、ケイト・モートン作品が見事なミステリであるということは、決して担当編集者の思い込みではないのです。

 ロンドン警視庁の女性刑事(謹慎中――この謹慎の原因は、彼女自身が抱える問題とも、この本全体のテーマとも、大いに関わってきます)がコーンウォールの祖父の家に身を寄せている間に、二匹の大型犬(ゴールデレトリーバー、いい犬たちです)とランニングに出かけた森の中で無人の館を見つけるのですが、そこでは70年前のミッドサマー・パーティーの夜、男の赤ん坊が育児室から行方不明になるという事件がありました。  子供は結局発見されず、事件は迷宮入りに。
 三人の娘たちを連れて両親は館を捨て、一家は二度とそこに戻ることはありませんでした。
 現在の館の持ち主は、消えた赤ん坊の姉の一人で、今や高名なミステリー作家となっている高齢のアリス・エダヴェイン(ロンドン住まいです)。

 今回も1910年代、30年代、2000年代を物語は行き来します。
 2003年は、謹慎中のロンドン警視庁の女性刑事の物語。
 1930年代は、赤ん坊の姉アリスが湖畔荘で活き活きと暮らしています。そして事件。  1910年代は、湖畔荘を捨てることになる夫婦が出会ったころ。

 さあ、ケイト・モートン劇場の幕が上がります。もう皆さんは最終ページまで逃れることはできません。夏休みがまだある方はいまのうちに……、もう終わってしまった方は週末まで本を開くのを我慢してください。翌日睡眠不足のままふらふらと、学校に、職場に向かうことになりますから。

           * 

◆素晴らしい筆致、息詰まる展開、驚愕の結末……ケイト・モートンは最高だ。
――フィラデルフィア・インクワイアラー

◆これぞページターナー。――ピープル・マガジン

◆引き込まれる……モートンのストーリー作りには非のうちどころがなく、人物造形の見事さと驚愕の結末に読者は心底驚かされ魅了される。
――パブリッシャーズ・ウィークリー

◆読者をひねりの渦に巻き込む蠱惑的なミステリ。謎のなかにまた謎が隠され、それが解けたと思うとさらに新たな謎が現われる。
――サンディエゴ・ブック・レビュー

◆最後の最後まで緊迫感は続き、もしもあなたが複雑精緻なプロットや家族の秘密といったテーマに惹かれる読者であれば、私のこの喜びに共感してくれるはずだ。
――レクスプレス

(2017年8月22日)



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