珠玉の犯人当て
異様な心理実験、矛盾する目撃証言
亡命化学者殺し解明の鍵はどこに?
名探偵ウィリング博士登場の本格ミステリ
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本書『月明かりの男』は1940年に発表されたヘレン・マクロイの第二長編です。
マクロイの初期作は、謎解きものとしてストレートかつ高い完成度を誇るものが多く(『ささやく真実』がいい例ですね)、本書も珠玉の犯人当てが楽しめる一冊です。
事件の舞台となるのは、ニューヨークにある大学のキャンパス。シリーズおなじみの警察官であるフォイル次長警視正が、風に飛ばされてきた紙片を拾うところから始まります。その紙片には、殺人計画が具体的に描かれていました。しかも決行日時は今夜八時。いたずらでない可能性を考え、フォイルが“犯行現場”に指定された実験室のある建物に行ってみると、そこでは拳銃を使った心理学の実験がおこなわれている最中でした。しかも直後、その拳銃が紛失してしまったのです……!
いやな予感を覚え、八時前に再度大学を訪れたフォイルは、“犯行現場”で銃声を耳にします。実験室の一角では、拳銃自殺をしたような恰好でひとりの男が死んでいました。それは日中、紙片を拾ったフォイルに声をかけてきた亡命化学者のコンラディ博士でした。遺書があったものの、はたしてこれは自殺なのか他殺なのか。さらに、現場から逃げる不審な人物が三人の男性に目撃されていましたが、彼らの証言する不審人物の容姿はバラバラで、性別すら違っていたのです……!
異様な心理学の実験の痕跡、自殺か他殺かわからない状況、矛盾する目撃証言……いくつもの要素が錯綜する事件を解決すべく、フォイルは精神科医ベイジル・ウィリングに助力をあおぎます。ベイジルが丹念な調査と訊問をもとに、ある手がかりから導きだす事件の真相と犯人の名前は……?
ヘレン・マクロイ『月明かりの男』は8月31日発売予定です。
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私用で大学を訪れたフォイル次長警視正は“殺人計画”の書かれた紙を拾う。決行は今夜八時。直後に拳銃の紛失騒ぎが起きたことに不安を覚え、夜に再び大学を訪れると、亡命化学者の教授が死体で発見された。現場から逃げた人物に関する目撃者三名の証言は、容姿はおろか性別も一致せず、謎は深まっていく。精神科医ウィリングが矛盾だらけの事件に取り組む、珠玉の本格ミステリ。
(2017年8月23日)
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