「もしよければ……うちに泊まりますか?」
 霧による飛行機欠航で空港で途方に暮れていたエレインに、知的で魅力的な弁護士マークは一夜の宿を提供することになった。しかし、その晩以降、彼女の姿は消えた……。
 何があったのか……? 彼女は幼馴染みの結婚式に呼ばれ、ロンドンのヒースロー空港からジブラルタルに向かうところだった。
 イングランドの田舎町で身体障害者の兄の世話をしていた彼女は、その境遇から逃げ出したかったのか? それとも?
 5年後、その結婚式の花嫁だったロザンナは、雑誌記者というかつての仕事に復帰するために、失踪者たちについての取材を引き受けた。その失踪者リストには、消えた友人エレインも含まれていた。
 彼女と最後に接触した弁護士は何か知っているのか? 嫌疑をかけられ仕事を失った彼は本当に殺人者なのか? シリアル・キラー事件もからみ、調査に深入りしていくロザンナ。そしてエレインを知っているという男から連絡が入る……。彼女が生きている?!

 翻訳者も、編集者も、校正者もリンクの筆力に圧倒され、途中でやめることなど考えられずにぐいぐいとその世界に引きずり込まれました。いわゆるトリックやどんでん返しがなくて、これだけ読者を虜にするその筆力には脱帽です。なるほど出すものすべてがベストセラーになるというのも納得です。
 そういえば、数年前に来日したオーストリアのミステリ作家アンドレアス・グルーバー氏夫人に、「グルーバーさんの作品以外ではどんなミステリがお好きですか?」とお訊きしたところ、即座に「シャルロッテ・リンクは出れば必ず読みますよ。大好きなんです」とお答えくださいました。
 謎に満ちた、愛憎渦巻く人間ドラマにひきずりれ込まれてみてください。上下巻などまったく苦にならないことを保証致します。 

(2017年1月24日)



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