〈あなた〉だったかもしれない人たちの物語
シャーリイ・ジャクスン賞、全米図書館協会アレックス賞受賞作



これは「あなた」だったかもしれない人たちが織りなす、孤独と共感についての11の物語。代理祖父母派遣会社で引く手あまたの「祖母」として働く女性、人体自然発火現象で死ぬことを恐れながら弟と暮らす青年、折りヅルを使った奇妙な遺産相続ゲームに挑む男たち、ある日突然思い立ち、裏庭でひたすらトンネルを掘る三人の若者......少しだけ「普通」から逸脱した日々を送る人々の、生活と感情の断片を切り取った挿話が、不思議としみじみした余韻をもたらす短編集。シャーリイ・ジャクスン賞、全米図書館協会アレックス賞受賞作。

ケヴィン・ウィルソンの短編は、現実と空想の世界の両方を示してくれる……彼は新たな人生を選んだわたしや、ほんのわずかずれた道を選んでいたわたしの姿を、否応なしに見せるのだ。 ――アン・パチェット(作家)

ウィルソンのささやかな寓話集は、さながらマグリットの絵画が現実のものとなったような、シュルレアリスムの凝縮だ。 ――〈ワシントン・ポスト〉紙

ひねりのきいたユーモアのセンスを持つ南部作家が著した、これまでになくすばらしいデビュー短編集だ。ウィルソンは創意あふれる語りの才能と、得がたい斬新なアイディアから生まれた、奇妙で不思議な物語を見せつけてくれた。 ――〈カーカス・レビュー〉誌


読者モニターの皆様の声

◎20代女性:読了作品「替え玉」「ゴー・ファイト・ウィン」「ワースト・ケース・シナリオ株式会社」
3編を読み終えて、あっという間にケビン・ウィルソンのファンになってしまいました! ありそうでなさそうな不思議な日常のなかに、どこか懐かしさを感じる作品たち。結末には爽やかさが感じられ、主人公に好感が持てました。日常に生きる人への作者の愛情を感じます。

◎30代男性:読了作品「地球の中心までトンネルを掘る」「あれやこれや博物館」「ワースト・ケース・シナリオ株式会社」
3編すべてが読んだ人間に人生とは何か? 幸せとは何か? を教えてくれるような内容であり、読後感が非常に清々しい。タイトルからはちょっと想像が出来ない内容ばかりで、そのギャップも本作品の良さなのだと思う。

◎40代女性:読了作品「替え玉」「発火点」「あれやこれや博物館」
選んだ3編とも「へんてこな職業」についている人たちの話で、読みはじめはどれも「ちがう世界の話」と思っていましたが、その人たちはみんな、どこにでもいるようなふつうの人たちで、おかげでなんとか「こちらの世界」に踏みとどまりながら、不思議ワールドを愉しめました。どれもほんとうに、静かだけれど心にぐっとくる話で、こんな世の中でもひとりひとりはすばらしいと感じられたし、最後は自分で選択して新しい道を歩いていこうとする姿を見せてくれて、ほんとうに読んでよかったと思えました。

◎20代女性:読了作品「替え玉」「ツルの舞う家」「ゴー・ファイト・ウィン」
なんとなく心惹かれてしまう、隣人たちのスナップショットのような物語でした。自分を大事にすることが、誰かを大事にすることでもある。それをはだ触りで知っている、優しくシリアスな愛おしい人々。その、小さな哀しみに心地よく寄り添わせてもらいました。

◎30代男性:読了作品「地球の中心までトンネルを掘る」「モータルコンバット」「あれやこれや博物館」
3編とも年相応の成長しきれなさが書かれていて、面白おかしいのに少し寂しい。自分自身のちょっと足りない部分が刺激される奇妙な読書体験でした。

◎30代女性:読了作品「今は亡き姉ハンドブック」「地球の中心までトンネルを掘る」「合唱部の指揮者を愛人にした男の物語(あるいは歯の生えた赤ん坊の)」
選んだ3編を読んで思ったのは、読後のふっとした空気だ。肩の力が抜けるというか、読む前と読んだ後では部屋の空気が違っているように思う。はっきりとした読後の余韻。久しぶりにそっと高揚しているのだ。本は読んだ後にもう一度始めから読み直したい、と思えるかどうかが重要です。私はもうずっとこればかり繰り返し読んでいる。この本は買うだろうな、きっと。そしてずっと読んでいくのだと思う。



8月に刊行される本書『地球の中心までトンネルを掘る』Tunneling to the Center of the Earthはシャーリイ・ジャクスン賞、全米図書館協会アレックス賞を受賞したケヴィン・ウィルソンの第一短編集で、11編の物語が収められています。収録作のタイトルと原題はこちら。

 「替え玉」  Grand Stand-In
 「発火点」  Blowing Up on the Spot
 「今は亡き姉ハンドブック:繊細な少年のための手引き」
  The Dead Sister Handbook: A Guide for Sensitive Boys
 「ツルの舞う家」  Birds in the House
 「モータルコンバット」  Mortal Kombat
 「地球の中心までトンネルを掘る」  Tunneling to the Center of the Earth
 「弾丸マクシミリアン」  The Shooting Man
 「女子合唱部の指揮者を愛人にした男の物語(もしくは歯の生えた赤ん坊の)」
  The Choir Director Affair(The Baby's Teeth)
 「ゴー・ファイト・ウィン」  Go, Fight, Win
 「あれやこれや博物館」  The Museum of Whatnot
 「ワースト・ケース・シナリオ株式会社」  Worst-Case Scenario

これらの11短編は、完全に独立した話なのですが、どの作品にも通底するイメージ、雰囲気といったものがあります。ほぼ必ず、語り手自身もしくはその身近に現実にはありえないようなできごとが発生するか、ありえないようなものごとが存在するのです(「ありえない」レベルは作品によって大小さまざま)。そのせいで語り手は周囲とのあいだに距離を感じ、孤独を覚えるのですが、読んでいてその「孤独」に不思議と共感してしまう。不思議な読書体験を味わえる一冊です。読む人によって、お気に入りの作品が分かれるのではないでしょうか。


そんな本書をひと足先に読んでいただこうと、東京創元社ホームページで募集しましたゲラ版読者モニターに多数の申込をいただきました。今回の募集は収録作全11編の中からタイトルとページ数だけを頼りに3編選んでもらうという形式を取っておりまして、そこでの応募者の希望を集計した、いわば「タイトルだけ人気投票」の結果を発表したいと思います。ベスト3までは票数も公表いたします。

第1位 地球の中心までトンネルを掘る【16p】 58票
第2位 ワースト・ケース・シナリオ株式会社【22p】 47票
第3位 あれやこれや博物館【32p】 44票
第4位 今は亡き姉ハンドブック:繊細な少年のための手引き【12p】
第5位 替え玉【40p】
第6位 ツルの舞う家【25p】
第7位 女子合唱部の指揮者を愛人にした男の物語(もしくは歯の生えた赤ん坊の) 【16p】
第8位 発火点【25p】
第9位 ゴー・ファイト・ウィン【59p】
第10位 弾丸マクシミリアン(※モニター応募時のタイトル「弾丸野郎」を改題)【22p】
第11位 モータルコンバット【28p】
(応募総数:101名/有効票数:303票。【 】内の数字はページ数)

ゲラ版読者モニターからいただいたコメントは後日掲載予定です。なお、本書刊行後には改めて、読者を対象にした通常の人気投票をおこなう予定ですので、どうかお楽しみに。ケヴィン・ウィルソン『地球の中心までトンネルを掘る』は8月12日刊行予定です。


これは「あなた」だったかもしれない人たちが織りなす、孤独と共感についての11の物語。代理祖父母派遣会社で引く手あまたの「祖母」として働く女性、人体自然発火現象で死ぬことを恐れながら弟と暮らす青年、折りヅルを使った奇妙な遺産相続ゲームに挑む男たち、ある日突然思い立ち、裏庭でひたすらトンネルを掘る三人の若者......少しだけ「普通」から逸脱した日々を送る人々の、生活と感情の断片を切り取った挿話が、不思議としみじみした余韻をもたらす短編集。シャーリイ・ジャクスン賞、全米図書館協会アレックス賞受賞作。


(2015年7月6日/2015年8月5日)




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