2015年7月、リンジー・フェイによるニューヨークを舞台にした歴史ミステリ、『7は秘密――ニューヨーク最初の警官』を刊行いたします。それに先駆けまして、前日譚にあたる『ゴッサムの神々――ニューヨーク最初の警官』も新装版でお届けすることになりました!

 『ゴッサムの神々』の舞台となるのは、1845年のニューヨーク。バーテンダーのティムは大火事で顔にやけどを負って職を失ってしまい、兄の口利きで創設されたばかりのNY市警察の警官になりました。巡回をしていたある夜、彼は通りで血まみれの少女とぶつかります。「彼、切り刻まれちゃう」と謎めいたことを口走った彼女の言葉どおり、胴体を十字に切り裂かれた少年の死体が発見されます。しかしそれは、街を震撼させた大事件の始まりにすぎませんでした……。新人警官のティムは、この不可解な死体の謎に挑んでいいきます。

 本書の魅力はなんと言っても歴史ミステリとしてのおもしろさにあります。いまでこそアメリカ最大の大都市にして経済・文化の発信地でもあるニューヨークですが、1800年代なかばの本書では、猥雑で混沌とした面を持つ発展途上の街として描かれています。アイルランドからやってきたおそろしい数の移民が、それまでニューヨークに住んでいた人々と職や食べ物、そしてカトリックとプロテスタントという宗教をめぐって争っています。
 ほとんど馴染みがない時代設定にもかかわらず、まるでその場にいるような気分を味わうことができます。映像が目にうかんでくるだけでなく、においや音までが伝わってくるような……。本書を読み始めたら最後、その世界に没入し、しばらく戻ってこれなくなることうけあいです。

 6月下旬に書店に並ぶ新装版では、イラストレーターとして活躍するケッソクヒデキさんに、ミステリアスなニューヨークの街角を描いていただきました。それぞれ迫力ある構図のイラストですが、2冊並べると実は……? 実際の本をぜひじっくり見てみてください!

 不可解な謎と激動の時代を生き抜く人々を鮮烈に活写した傑作です。そして本書の続編『7は秘密――ニューヨーク最初の警官』は7月半ば頃の発売です。どうぞお楽しみに!


(2015年6月5日)




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