今月末発売の創元推理文庫『助手席のチェット』は2010年に『ぼくの名はチェット』のタイトルで出た単行本の文庫化です。
私立探偵のバーニー・リトル(元刑事でバツイチ、別れた妻と暮らす息子のチャーリーを盲愛しています)の相棒犬チェット。ミックスの大型犬。左右の耳の色がちがうのが特徴のこのチェット、警察犬訓練所を優秀な成績で卒業……するはずでしたが、猫がらみの何かがあって、卒業できなかったという経歴の持ち主。
とにかく、嗅覚は抜群、ジャンプ力も大変なもの、そしてバーニーを思う気持ちたるや、犬を飼ったことのある方なら感動しますよ!
確かに優秀なこのチェット、ただの優等生ではなく、犬らしさ炸裂なのです。
重要な話の途中でも、床のハンバーガーのかけらに目がいったら、どうしても食べずにはいられません。パクリッ、「おい、チェット、そうだろう?」えっ? そうだろうって何が? え? 今ちょっと食べていて聞いてなかったよ、という具合。犬っぷりが実に見事。
動物を擬人化した作品は数あれど、こんなふうに犬が犬のままで、しかも語り手だという作品は、まずほかにはありません。
犬たちがもし本を読めたら、「わお~ん、どうしてぼくたちのことがこんなにわかるんだ!」と大感動するはず。
そして犬好きの皆様、自分が犬ではないかと思うほど犬が好きな皆様、「大」という字を見ると「犬」と読んでしまう皆様、これを読まずして犬好きと言うなかれ。
そうです、そこの犬林さん、犬塚さん、犬泉さん……! じゃなかった、犬好きの大林さんも、大塚さんも、大泉さんも迷わず読むべし。
犬好きの私は何度読んでも、嬉しくて涙が出ます。実は私「大」の字が「犬」に見えるだけでなく、「白描」は「白猫」に見え、「素描」は「素猫」(素猫ってなんだ? スッピンの猫?)に見えてしまうほど猫も好き。要するに動物全般が好きなんですね。犬も猫も、フクロウも、キューピーも、ペンギンも、ウサギもみんな大好きなのです(あ、固いことは言わないでください)。
そんな私が保証します。
動物好きなら、絶対満足されること間違いなしの犬傑作、いえ大傑作ミステリなのです。
ロバート・クレイスの『容疑者』に胸を震わせたあなたも是非!
(2015年5月8日)
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