サラ・グラン『探偵は壊れた街で』がいよいよ刊行となります! 本書の舞台はアメリカのルイジアナ州南部に位置するニューオーリンズ。この街は2005年8月にとてつもない規模のハリケーンが襲来し、嵐と洪水で市内の八割が水没するという被害を受けました。この作品はそれから約1年半後を描いており、それだけの月日が経ったにもかかわらずほとんど復旧していない“壊れた街”の描写が胸に迫ります。

 主人公のクレア・デウィットはカリフォルニア州在住の女性私立探偵。亡き師匠から教わった独特の探偵術と鋭い観察眼が武器で、普通は誰も気にしないようなささいな物事にこだわり、調査のために必要とあれば占いや妖しい幻覚剤をも使います。しかし他人からは奇行に見えるような行動も厭わず、地道に手がかりを集めて真実を追い求めていきます。銃や車を巧みに扱うかなりタフに思える彼女ですが、弱さや傷つきやすさも合わせ持っているところが魅力。過去に親友が失踪したという大きな謎を抱えており、真実を知ることを誰よりも恐れています。彼女と、傷ついた街の人々との交流の場面を読んでいると、言葉に出来ない、複雑なあたたかい気持ちがわき上がってきます。

 本書は2015年4月13日ごろ刊行です。カバーイラストは『&Premium』などの雑誌や広告、書籍のイラストレーターとして活躍されている三宅瑠人さんに、カバーデザインは『ヴァイオリン職人の探求と推理』『最後の1分』などを手がけられている鈴木久美さんにお願いしました。鈴木さんのご提案で、タイトルを、ひらがなを横にたおした独特のデザインにしていただきました。作品にぴったりあったスタイリッシュな装幀に仕上がってうれしいです! ぜひ書店でお求めいただければ幸いです。

* * * あらすじ * * *

クレア・デウィットはただの女探偵ではない。独特の探偵術を駆使し、巧みに銃を扱い、困難な調査でも決して諦めない。2007年、ハリケーンの傷痕が残るニューオーリンズで、クレアは失踪した地方検事補の捜索を依頼される。洪水で死んだと思われる一方で、嵐のあとに姿を見た者もおり経緯がわからない。真実によって誰かが傷つくこともある。しかし探偵にできるのは、謎を解決し先に進むことだけだ。傷ついた街と人々に寄り添う女探偵の活躍を描く、マカヴィティ賞最優秀長篇賞受賞作。

* * * 書評など * * *

この本が好き! 本当に大好き!……著者は巧みなストーリーテリングを駆使し、私立探偵小説というジャンルでオリジナリティ溢れるすばらしい作品を生み出した。
――スー・グラフトン

著者はわたしの愛する私立探偵小説というジャンルを活性化させてくれた。……名作群に、価値ある1冊が加えられた。
――ローラ・リップマン

クレアは、冷徹なまでに真実を追いかける。……だからといって、クレアが心の痛みを知らない非情な女というわけではない。……表には見せないが、じつは心の中に哀しみや弱さを隠し持ち、事件に関わる人々の心に密かに寄り添っているのだ。
――訳者あとがきより



(2015年4月6日)




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