不思議な読み心地と読後感のよさから好評だった連作短編集『メグル』の乾ルカさんの最新作の登場です。

今作の舞台は大正時代の北海道。とある一族の物語です。

水源を失って信州から移住してきており、周囲の人々は彼らを“ミツハの一族”と呼ぶ不思議な一族。一族の人間で未練をもったまま死ぬと、神社の井戸の水が赤く濁り、水源に鬼が出現する――。そのまま放置しておくと、水源まで涸れ果ててしまう。それを防ぐことができるのは、一族を統べる「烏目役」のみ。そして、鬼を見ることができるのは「水守」と呼ばれる女性のみだけである。

大正十二年、北海道帝国大学の医学部に通う、八尾清次郎のもとに「烏目役」の従兄の死と鬼の出現を伝える電報が届く。墓参りのために村へ向かった清次郎が、「水守」のもとを訪ねることになって……。当初は嫌々ながら「烏目役」をつとめることになった清次郎と、ある秘密をかかえている「水守」の二人は、果たして鬼の未練を断つことができるのか?

数奇な運命にさらされる二人、そして一族を切れ味鋭く描いた連作ミステリ『ミツハの一族』をご堪能ください。


(2015年4月6日)




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