二〇〇六年二月。 読書にまつわるすごいこと(たぶん)を発見する。 |
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一月某日 今日のぶんの原稿が無事にあがったので、夕方、空手に行く。わたしは気分転換やストレス解消をかねて週に二度ほど、近所の道場に通ってるのだ。 一月某日 昨日の反動(?)か、古いものが読みたくなった。夕方、一仕事終えてから外に出かけた。うちから十五分ほど歩いて、紀伊國屋書店新宿本店にいった。(わたしが住んでいるのは新宿のわりとど真ん中の、古いマンションである) 紀伊國屋書店裏のちょっと右手にある赤い喫茶店(名前は忘れた)の、いつもの窓際席に座って、季節のワッフルを注文する。戦利品の本を取り出して表にして、裏にして、裏のあらすじを読み、開いて一ページめのあらすじを読む(内容は同じ)。登場人物表を見て、本文をちら見して、解説を読み、広告を読む。開いて匂いをかぐ。紙とインクの湿った匂いがする。いい匂いだとしみじみしていると、ワッフルがきた。食べながら解説をもう一回、じっくり読む。 本文はうちに帰ってから。日本茶をいれて、こたつにもぐって読む。おぉ、おもしろい。複雑で女性的なパズル、という感じがして、だまされ方も、どこかにゆっくり運ばれていく感じで気持ちいい。 一月某日 創元の担当編集者、K島氏と会う。紀伊國屋書店一階のミステリ棚の前で待ち合わせる。 わたし「あのほら、戦国時代で姫の○○が○○○に○○○○○やつ。あとロシアで煙のようにドロンと館が消えるやつ。あの二つ、大好きなんですよ」わぁわぁ話していたら、カレーがきた。ごはんにルーをかけながら、 わたし「『アルファベット・パズラーズ』(大山誠一郎/東京創元社)とか……」スプーンをおいて、両手で○○○○と、館島のトリックを再現してみせた。ふふふふ、と笑いがこみ上げた。 わたし「このトリックが、ふふふふ、好きで、つまりこういうのが、ふふふ、好きなんです。あの二冊を読んだとき、喜びに部屋の床を転がりながら、この感動を誰に伝えればいいかと」面影屋珈琲店のカレーは、煮込んで柔らかくなった牛すね肉がゴロゴロ入っていて、こくがあっておいしい。ふたりでもりもり食べながら、 わたし「○○○○。ふふふふ」帰り道。また紀伊國屋書店に入り(週に何度入ってるんだ……)二階にてさっそく北山さんの本を買おうとする。開いた瞬間に、どうしていままで長編を読んでなかったのか、衝撃の記憶がよみがえる。 著者近影が、かっこいいのだ……(わたしは爬虫類全般とグリンピースと、見知らぬかっこいい異性が苦手である)。 ギャッと飛び上がり、あわてて棚に戻しかける。しかし、歯を食いしばって(?)『「クロック城」殺人事件』を買う。 あまりあちこち開かないように注意し、うちに直帰してすぐ本文を読み始める。おぉ、おもしろい! 夜中にK島氏にメールする。返信に「それなら、『「ギロチン城」殺人事件』(講談社ノベルス)も読んでみては」とある。あわててコートを着て、マフラーを巻いた。夜十一時まであと十分ほどあるので、近所のあおい書店に走る。 |
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