3月に鳥見レポートを書いたら、意外にも反響が(主に社員から)あったので、この機に乗じて……(?)と思っていたが、本業(校正)が忙しくて鳥見もままならず、はや五月。あんなにたくさんいた渡り鳥のカモたちも北に帰り、外濠はすっかり静かになってしまった。そんなわけで、Webミス担当者からは「春の鳥」のお題を頂戴していたが、今回は留鳥(一年中同じ地域で見られる鳥)についてレポートしようと思う。以下に紹介するのは、今も見られる鳥だ。
写真は市ケ谷駅前の釣り堀だ。釣り堀にいるのは魚だろうって? そう、ここではコイを釣ることができるらしい。休日の昼ごろに撮った写真なのでお客がいるが、営業時間前の朝の通勤時間帯にはひっそりしている。
ところで、「この釣り堀で鳥がコイを食べていた」という目撃情報を寄せてくれた人がいた。総務部のMさんである。Mさんは社内ではアングラー(釣り師)として知られている。けっしてバーダー(野鳥観察者)ではないと思っていたのだが……。よく行くのは海釣りだと聞いていたけれど、釣り師だけについ釣り堀を観察してしまうのだろうか。その話を聞いて以来、私は電車から釣り堀観察を続けているのだが、釣り堀のプールサイド(?)に立っている鳥を見たことはあるものの、魚を食べているシーンを見たことは、まだない。
Mさんが見た鳥は、カワウ(河鵜・ペリカン目ウ科)だった。都内でも池のある公園ではよく見かける鳥で、羽色は雌雄同色。全体的に黒く、目の虹彩は緑色をしている。全長(くちばしから尾の先まで、まっすぐに伸ばした状態で測った長さ)は82センチ、前回のハシビロガモのオスが51センチだから、それよりけっこう大きい。
鵜飼に使われることで有名なのは日本ではウミウ(海鵜・ペリカン目ウ科)で、カワウより少し大きい体をしているが、魚を食べるところは同じ。写真のカワウは、繁殖期を迎えるにあたって、頭の上から顎、脚の付け根あたりが白い羽になっている。ウの仲間は翼の油分が少ないらしく、水から出るとこの写真のように翼を広げて、杭などの上に乗って羽を乾かしていることが多い。
ウ類は水に浮いているとき、体の3分の2ほどが沈んで見えるという。油分が少ないので、浮くのは苦手なのかもしれない。ただし潜水して魚を採るときは、約70秒も潜るらしい。地味な鳥としか思っていなかったが、鮮やかにコイを捕まえるところを一度釣り堀で見てみたいものである。
次に目撃情報を寄せてくれたのは、猫と鳥を飼っているという(といってもやはりバーダーとは思えない)製作課のIさんだ。いわく、市ケ谷駅の(飯田橋から見て)向こう側の外濠に水上レストランのような店があり、その前あたりでカイツブリ(鳰・カイツブリ目カイツブリ科)がたむろしているという。
さっそく行ってみると、なるほどたしかにこれは水上レストラン。でもカイツブリはどこだ?
いたいた、なにやら枯れた植物のまわりに。カイツブリは全長26センチ、その小ささゆえに、「カモの赤ちゃん」などと誤解されていることもしばしば。名前も覚えにくいかもしれない。しかしカイツブリはカモではなく、あくまでもカイツブリ。これを機会に覚えてやってほしい。この写真のように群れているとは限らないが、外濠にぽつりと浮かんでいたり潜っていたりするところをよく見かける。
カイツブリもまた、水に潜って魚を捕まえて食べる鳥だ。潜ってしまったあとは、思いがけない遠くの水面にぷかりと浮かび上がってくる。「キュルルル」というよく通る鳴き声が特徴的なので、小さくて、よく潜って、「キュルルルッ」と鳴いている水鳥がいたら、それはカイツブリと思っていいだろう。
カイツブリの羽色も雌雄同色。この2個体は、大きくて色の濃いほうは成鳥、小さくて色の薄いほうが幼鳥だろう。この個体はヒナとはいえないほど成長しているが、カイツブリのヒナはとても愛らしい。親鳥の背中に乗っている姿を見れば、誰しもノックダウン(死語?)されてしまうこと間違いなし。
これは外濠で撮った写真ではないが、ヒナの愛らしさを伝えるために載せておく。親の背中に乗っている写真が見つからず残念だ。生まれてしばらくは縞模様があり、成鳥とは違って目が黒っぽい。ただしよく見ると、わき腹に格納されているような脚はしっかりと太い。この爬虫類みたいな脚で力強く水を蹴り、潜っていくのだ。
それにしても、MさんといいIさんといい、意外に鳥を見ている人が多いのには驚く。今日も営業部のSさんからはツバメの話を、製作課のSさんからはコウノトリの話をされたばかり。社内では猫派が最大派閥だが、じわじわと鳥派が形成されているのかもしれない。
参考文献
『日本の野鳥590』平凡社
『絵解きで野鳥が識別できる本』文一総合出版
『散歩で楽しむ野鳥の本』山と渓谷社
ミステリ小説の月刊ウェブマガジン|Webミステリーズ! 東京創元社 >
市ヶ谷フィッシュセンターの釣り堀
写真は市ケ谷駅前の釣り堀だ。釣り堀にいるのは魚だろうって? そう、ここではコイを釣ることができるらしい。休日の昼ごろに撮った写真なのでお客がいるが、営業時間前の朝の通勤時間帯にはひっそりしている。
ところで、「この釣り堀で鳥がコイを食べていた」という目撃情報を寄せてくれた人がいた。総務部のMさんである。Mさんは社内ではアングラー(釣り師)として知られている。けっしてバーダー(野鳥観察者)ではないと思っていたのだが……。よく行くのは海釣りだと聞いていたけれど、釣り師だけについ釣り堀を観察してしまうのだろうか。その話を聞いて以来、私は電車から釣り堀観察を続けているのだが、釣り堀のプールサイド(?)に立っている鳥を見たことはあるものの、魚を食べているシーンを見たことは、まだない。
繁殖羽のカワウ
Mさんが見た鳥は、カワウ(河鵜・ペリカン目ウ科)だった。都内でも池のある公園ではよく見かける鳥で、羽色は雌雄同色。全体的に黒く、目の虹彩は緑色をしている。全長(くちばしから尾の先まで、まっすぐに伸ばした状態で測った長さ)は82センチ、前回のハシビロガモのオスが51センチだから、それよりけっこう大きい。
鵜飼に使われることで有名なのは日本ではウミウ(海鵜・ペリカン目ウ科)で、カワウより少し大きい体をしているが、魚を食べるところは同じ。写真のカワウは、繁殖期を迎えるにあたって、頭の上から顎、脚の付け根あたりが白い羽になっている。ウの仲間は翼の油分が少ないらしく、水から出るとこの写真のように翼を広げて、杭などの上に乗って羽を乾かしていることが多い。
泳ぐカワウ
ウ類は水に浮いているとき、体の3分の2ほどが沈んで見えるという。油分が少ないので、浮くのは苦手なのかもしれない。ただし潜水して魚を採るときは、約70秒も潜るらしい。地味な鳥としか思っていなかったが、鮮やかにコイを捕まえるところを一度釣り堀で見てみたいものである。
次に目撃情報を寄せてくれたのは、猫と鳥を飼っているという(といってもやはりバーダーとは思えない)製作課のIさんだ。いわく、市ケ谷駅の(飯田橋から見て)向こう側の外濠に水上レストランのような店があり、その前あたりでカイツブリ(鳰・カイツブリ目カイツブリ科)がたむろしているという。
水上レストランのような建物
さっそく行ってみると、なるほどたしかにこれは水上レストラン。でもカイツブリはどこだ?
水上レストラン前のカイツブリたち
いたいた、なにやら枯れた植物のまわりに。カイツブリは全長26センチ、その小ささゆえに、「カモの赤ちゃん」などと誤解されていることもしばしば。名前も覚えにくいかもしれない。しかしカイツブリはカモではなく、あくまでもカイツブリ。これを機会に覚えてやってほしい。この写真のように群れているとは限らないが、外濠にぽつりと浮かんでいたり潜っていたりするところをよく見かける。
カイツブリもまた、水に潜って魚を捕まえて食べる鳥だ。潜ってしまったあとは、思いがけない遠くの水面にぷかりと浮かび上がってくる。「キュルルル」というよく通る鳴き声が特徴的なので、小さくて、よく潜って、「キュルルルッ」と鳴いている水鳥がいたら、それはカイツブリと思っていいだろう。
カイツブリ親子?
カイツブリの羽色も雌雄同色。この2個体は、大きくて色の濃いほうは成鳥、小さくて色の薄いほうが幼鳥だろう。この個体はヒナとはいえないほど成長しているが、カイツブリのヒナはとても愛らしい。親鳥の背中に乗っている姿を見れば、誰しもノックダウン(死語?)されてしまうこと間違いなし。
カイツブリのヒナ
これは外濠で撮った写真ではないが、ヒナの愛らしさを伝えるために載せておく。親の背中に乗っている写真が見つからず残念だ。生まれてしばらくは縞模様があり、成鳥とは違って目が黒っぽい。ただしよく見ると、わき腹に格納されているような脚はしっかりと太い。この爬虫類みたいな脚で力強く水を蹴り、潜っていくのだ。
それにしても、MさんといいIさんといい、意外に鳥を見ている人が多いのには驚く。今日も営業部のSさんからはツバメの話を、製作課のSさんからはコウノトリの話をされたばかり。社内では猫派が最大派閥だが、じわじわと鳥派が形成されているのかもしれない。
(校正課M)
参考文献
『日本の野鳥590』平凡社
『絵解きで野鳥が識別できる本』文一総合出版
『散歩で楽しむ野鳥の本』山と渓谷社
(2017年5月30日)
ミステリ小説の月刊ウェブマガジン|Webミステリーズ! 東京創元社 >