『ミミズクと夜の王』『サエズリ図書館のワルツさん』など、ファンタジー、SFにおいて叙情的な作品を多く描いてきた紅玉いづき。2016年3月に刊行される『現代詩人探偵』は、初のミステリにして創作の業も描き切った、唯一無二の物語です。

元弊社代表取締役の戸川安宣による推薦コメントや、全国の書店員さんからも、絶賛の声が続々と届いております(書店名五十音順)。

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◆破滅テーマのSFに、紙の「本」を愛する気持ちを凝集させた『サエズリ図書館のワルツさん』がとても気に入って、咄嗟にぼくはこの人の書くミステリが読みたい、と思った。きっと良いものが出来る、という確信は、予想を遙かに上回る作品となって、提供された。「死ななければ、詩人じゃないのか」という「探偵」の抱く謎は、二十一世紀の推理小説に突きつける根源的な問いかけだ。進むべき方向を照射する一冊となるに違いない。
――戸川安宣(元・東京創元社代表取締役)

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◆生きることそのものへのままならさ。決して心地よくない内容の中に、どうしようもなく人の共感を呼ぶ想いがある。たぶん、この作品は詩という短文の連なりの行間に詰まる情念を小説の形に整えなおしたもの。だから、小説でありながら、詩そのものであると感じた。
――あおい書店春日店 並木宏誌さん

◆全編からにじみ出るミステリアスな死の匂い。淡く儚く虚しく哀しく危ういムードに包まれながら貫かれるのは清らかな真理の光と確かな生への希求。それぞれの詩に込められた言葉は記憶を刻み、人を惑わせ、命を繋ぐ…。生きにくい世の中に灯火をともすような素晴らしい一冊だ!著者の底知れぬ才能を実感。
――三省堂書店営業企画室 内田剛さん

◆読み始めてすぐ、詩とこの鬱とした雰囲気に、これ私の好きなやつ!と思った。4人の詩人の自殺の謎を辿る主人公。なるほど。こういうミステリか。と思っていたら、最終章、思わず「えっ!!」と大声をあげる、とんでもない真実が待っていた!
――東京旭屋書店新越谷店 猪股宏美さん

◆物書きの中でも一等繊細な詩人の生きづらさ。家族を、友情を壊しても詩作をやめられないのは呼吸と同義だから。そんな主人公が葛藤を抱えながらかつての詩人仲間の死の真相を探る。それは彼が創作者だからこそ解くことのできる謎。夜の海に吼えるような、詩人たちの孤独な叫びが胸に突き刺さる。
――ときわ書房IY船橋店 小峰麻衣子さん

◆創作とは、罪か、救いか。“探偵”が詩人たちの死に触れるたび、胸が潰れるように苦しく、叫び出したくなるほど心が掻き乱される。そして、あの“仕掛け”以降、読み終えるまでにひたすら頬を濡らし続けてしまった。本作を書いてくれたことに心から感謝し、ミステリー作家・紅玉いづきの誕生を寿ぎたい。
――ときわ書房本店 宇田川拓也さん

◆「さびしい人格」「探偵」というキーワード、そして登場人物たちが“言葉そのもののいのち”を掴えようともがき苦しみ、時には他者をだしぬこうとすらする姿は、まさに朔太郎をはじめとした詩人たちをモチーフにしているなと思わされました。明治以降の作家は自らの思考を言葉にする作業に煩悶し、ある者は志半ばにして命を絶ちました。本作は文学が即ち生そのものであったありし日の作家の姿を思い出させてくれる読みごたえ十分の作品でした。
――図書館流通センター 松村幹彦さん

◆今までの作品の雰囲気とはまた違い、新たな紅玉先生の作品に出会えた気持ちになりました。主人公がさまざまな謎に立ち向かうことにより、残された者たちが最終的に救われていくさまはリアルに心に響き、より人間らしさを感じました。終盤に待ち受ける展開は予測していなかったので見事にやられました。
――ブックポート中野島店 渡辺美由希さん

◆昔、作家といえば、その業ゆえに命を削りながら何かを作り出していく人だと思っていました。死ななければ詩人ではないのか。こんな切ないまでの想いを抱きながら、人は詩と向き合うのか。孤独な探偵が辿り着いた謎解きに、哀しみを感じました。人は悲しくて、そしてそれほど強くない。胸にささるミステリです。“詩人”と“自殺”ほど、マッチするものはないのかもしれません。美しい詩を紡ぐ者達の心の危うさに触れたような読後でした。
――有隣堂伊勢佐木町本店 佐伯敦子さん


新境地にして最高傑作の、切実な祈りを描いたミステリです。ぜひ、お手にとってご堪能ください。

(2016年3月7日)



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