夏といえば、私にとっては樋口有介さんの『ぼくと、ぼくらの夏』の世界観。とくに樋口さんの小説は暑い夏がとても似合います。毎夏、読み返していますが創元推理文庫版で読むのは初めてとなります。せっかくなので、休日を利用して作品に登場するスポットのいくつかを聖地巡礼してみました。

まずは新宿からスタート。紀伊國屋書店と新宿高野、歌舞伎町から京王線で府中まで。府中駅周辺も駅ビルが建ち並びだいぶ様変わりしました。徒歩すぐの大國魂(おおくにたま)神社など散策後に調布まで戻ります。調布駅も府中駅同様に再開発で風景が一変しました。そこからバスで深大寺(じんだいじ)へ。緑の多く残る深大寺をお参りします。深大寺から調布に戻って、今度は吉祥寺へ。よく調べてみると、調布に戻らなくとも、深大寺から吉祥寺へのバスもありました。
以下、いくつかのポイントをまとめてみました。

・紀伊國屋書店新宿本店……春一がフレドリック・ブラウンの探偵小説を二冊購入。『3、1、2とノックせよ』が樋口さんのお気に入りでした。現在ではミステリとしては、新訳版の短編集『真っ白な嘘』『不吉なことは何も』が創元推理文庫で楽しめます。
紀伊國屋書店新宿本店

・新宿高野……母親との数ヶ月ぶりの食事に利用。現在はフルーツパーラーのみ。喫茶とレストランが同じビルということであれば、いまなら中村屋などを利用するのかな?

・歌舞伎町……映画『コットンクラブ』を観ようと春一は歌舞伎町に向かいますが、そこで酒井麻子とばったりと出くわす。映画館は現在なら、TOHOシネマズ、109シネマズがあります。
歌舞伎町

・新宿アルタ……アルタ内の喫茶店で春一と麻子はコーラを飲みながら事件のことを相談します。「笑っていいとも!」で人気を博したアルタも、来年2025年2月で閉館。時代ですね。

・府中駅周辺……岩沢訓子の通夜の後、春一と麻子で鮨屋に立ち寄る。高校生なのに渋すぎる。鮨屋で飲んだくれていた秀さんのキャラクターが、いいんですよね。まさに、酔っ払った樋口さんのようです。大國魂神社も良い雰囲気です。ロケハンした際には「八朔相撲」向けに露店の準備も進んでいました。
大國魂神社

・深大寺……東京随一のパワースポットとしても知られ、深大寺そばや、鬼太郎茶屋なども人気。第二の事件があったのが深大寺の南側。主人公達が通う高校の名前も「深大寺学園」なので、この近隣ということでしょう。神代植物園もすぐ。
深大寺

・調布駅周辺……京王線の地下駅下によって80年代とはだいぶ様変わりしましたが、春一が夕飯の買い出しに向かった調布とうきゅう(作中は東急ストア)は現在でも人気。春一が雨宮君枝と夕飯を食べたレストランもこの周辺。調布PARCO(『ぼくと、ぼくらの夏』初刊時の1988年にはまだなく、翌年89年オープン)や、シネコン(シアタス調布)がある。新宿や吉祥寺に行かなくとも、いまなら地元で事足りますね。
調布とうきゅう

・吉祥寺……春一は一人で映画を観たり、父親の洋服を買いに行ったりと吉祥寺まで足を伸ばす。村岡先生の住むマンション「パークビュー」はバス通り沿い。公園通りには「ジブリ美術館」もあり、観光客も多い。村岡先生とともに父親の衣料品を買いに行く東急百貨店吉祥寺店も健在(HPによれば今年開業50周年とのこと)。

残念ながら、稲城(いなぎ)大橋、よみうりランドまでは行けず。春一や麻子のようにバイクでもあればなと思います。

・稲城大橋……多摩川にかかる橋。東京都の府中市と稲城市を結ぶ。第一の事件の現場。創元推理文庫版のカバーイラストのモデル。

・よみうりランド……東京都稲城市と神奈川県川崎市にまたがる、遊園地。今年開園60周年を迎えた。春一と麻子が二人でプールに出かけた場所。いまはナイトプールも人気らしい。

【編集部・猫原(にゃんばら)】