2月に刊行して以来大評判となっている異世界青春医療ファンタジイ『竜の医師団』シリーズ(庵野ゆき、創元推理文庫)ですが、医療部分の描写のリアルさ、キャラクターの魅力もさることながら、料理が美味しそうなことも読みどころのひとつ。
〈竜ノ巣〉行きの飛空船の機内食は「酢漬けのニシンと香草の前菜、真っ赤なビーツ豆と塩漬け豚の煮込み、ふかふかの丸パン、そして鶏挽肉の揚げつくね」、学生食堂では、「胡瓜の塩漬けのスープ、食堂名物水餃子、目玉は素晴らしく美味しい血の腸詰め」が出され、とある理由から食堂で働くことになったリョウとレオが開発する新メニューは「じゅうじゅうと果汁のしたたる焼き林檎をすりつぶして卵白と砂糖とともに泡立てたものに、冷やした林檎ジャムをたっぷり塗り、それを丸太状に巻いて仕上げに粉砂糖をふりかけた〈ふわふわ林檎の砂糖菓子〉」だ。
そんな料理も楽しみのひとつの本シリーズ、せっかくなので主な登場人物の好きな食べものと嫌いな食べもの、そして得意料理を大公開!
これを見てから物語を読み直してみると面白さが増すこと間違いなしです。
◆リョウ・リュウ・ジ……ヤポネ人の少年。〈竜ノ医師〉を目指す

大概のものは美味しく食べられる。味をよく覚えており、材料を当てられるのが密かな特技。骨を割って骨髄を食べるのは、廃棄穴暮らしの時の知恵。憧れは羊のあばら肉。しかし生涯で一番美味しいと思ったのは、イリェーナ先生の山菜の根っこのスープ。たまに夜中にこっそり分けてもらった、砂糖漬けキャンディ(マルメラード)も、思い出の一品。本土では貴重な砂糖漬けだが、〈竜ノ巣〉ではどこでも買えるので、イリェーナ先生にひと瓶贈ってみた。返事の手紙で、余計な散財をするなと怒られた(でも送り返されてはこなかった)。
嫌いなもの
生肉だけは未体験(縦穴生活では、口にするものは火を通さないと、命に関わったため。燃料が手に入らないことも多かったが……、楽しくない記憶なので、もう忘れた)。
得意料理
火を通す料理全般。ヤポネの目をフル活用。〈竜ノ巣〉に来て以降、発見した特技である。
◆レオニート・レオニトルカ・オパロフ……オパロフ家の子息。〈竜ノ医師〉を目指す

好きなもの
葉物、きのこ(グリボーク)。白トルフェル(トリュフ)と赤シャロット(レタス)のスープがお気に入り(だがどういうわけか、家出してからは見かけない)。嫌いなもの
生臭ものは一切食べられない。クロヤンカ(血の腸詰め)、ルシャグのガンバルガ(レバーのハンバーグ)などなどなど……。たんぱく源はもっぱら豆類と白身魚で摂取している。
得意料理
余りもので作るオープンサンド、〈ハム・サーロと旬の野菜のバゲット乗せ~レフォルの香りを添えて~〉は食堂の新規メニューとして採用された。女生徒を中心に人気。見た目が重要なメニューなので、彼の盛り付け方が厳密に再現されている。
◆リリ……〈竜ノ巣〉生まれの少女

好きなもの
甘党。お菓子全般が好き。リョウとレオに贈られた〈ふわふわ林檎の砂糖菓子〉が一番のお気に入り。また母親が毎朝作ってくれるブリニイ(薄いパンケーキ)が大好き。 お気に入りの具は、サーモンやイクラ、ニシンなどをトヴォロク(カッテージチーズ)に和えたもの。(なお、この世界では沖合に出る漁はしないが、湾内の沿岸部での定置網漁は唯一許されている)
嫌いなもの
魚とキノコのサリャンカ(とっても酸っぱいスープ)。赤ノ民の香草茶(ギビスクスの花と、野ばらの果実の真っ赤なお茶。とても酸っぱい。蜂蜜をたっぷり入れたら、なんとか飲める)
得意料理
興味はないが、へらじか(オリエーニ)の解体作業はやってみたいと思っている。リョウに教わった鳥の骨髄すすりは楽しかった。
◆カイナ・ニーナ……竜血管内科長

好きなもの
へらじか(オリエーニ)の凍刺身(ストロガ二ーナ)。
嫌いなもの
生の緑野菜(「あれは牧草だ(人の食べるモノではない)」などと放言し、シェーウにこっぴどく怒られて以来、仕方なく食べている)。
得意料理
料理はできないが、強いていえば羊、鹿、そのほかの解体作業は天下一品の技。
◆ロザヴィ……竜血管内科所属の看護主任
好きなもの
血の滴るようなレアのツテーク(ステーキ)。
嫌いなもの
ガナラージャのダワダワ(バオバブの実の納豆)だけはどうしても食べられない。
得意料理
なんでもござれだが、同僚(ファンクラブ)からの差し入れ(貢物)が多く、いつも食卓が豪勢である。
◆タマル……〈死ノ医師団〉の医師

好きなもの
血の滴るようなレアのツテーク(ステーキ)。(実は昔は苦手だったが、憧れの人を真似て克服。今ではお気に入り)
嫌いなもの
振る舞われた以上はなんでも食べる。ただし歯にくっつくチャプカ(タフィー)は少々苦手。
得意料理
料理はするものでなく、出されるものである。ただし、紅茶だけは自分で淹れる。茶器と茶葉を集めており、どこに行くにも紅茶セットを一式持ち歩いている。
◆マシャワ……〈竜ノ医師団〉団長
好きなもの
何故かみんなにパン好きと思われているが、本当はお米が好き。パンはふわふわのものに限る。
嫌いなもの
かちこちになった黒パン。
得意料理
ガナラージャから取り寄せたバオバブの実で、お手製のダワダワ(納豆)を毎年作っている。そのままご飯にかけても、スープや炊き込みご飯にしても大変美味。毎年たくさん作って団員におすそ分けしているが、カランバスの本土出身者には少々不評の模様。
◆ゼヤンダ……竜皮膚科長
几帳面な性格が災いして、料理は手順通りレシピ通りに進まないと気が済まない。
分量がきちんと決まっている菓子なら作れるが、料理は「適量」の表記が多すぎてイライラする。
好きなもの
イゴリの得意料理ムシュカーキ(山羊の串焼き。ガナラージャ・スパイスをまぶし、ライムをかけて食べる)。
嫌いなもの
カランバスのグレチカ(蕎麦)とセモリナ(蕎麦粉)料理。ガナラージャは肥沃な土地のため、そばの栽培は一般的ではなかった。特に蕎麦のカーシャ(おかゆ)は理解不能。彼女にとっておかゆと言えば、干しスイカと決まっている。
得意料理
料理は得意ではない。毎回きっちり同じ分量で作っているはずが、なんだか味が決まらない。雑なイゴリの料理の方が美味いのが釈然としないが、不利益はないので許している。
◆イゴリ……竜整形外科長
南大国ガナラージャに留学時代、ゼヤンダに一目ぼれ。口説き落とすため、彼女の好みの料理を猛特訓。今でも早起きして彼女のための特製プレートを毎朝作っている。
好きなもの
たんぱく質(プロティーン)、とくに炭鶏のむね肉は至上。
嫌いなもの
干しスイカのおかゆ。ガナラージャ料理で唯一理解できないもの。スイカは瑞々しいまま、かぶりつきたい(祖国ウラーナでは、スイカは夏の果物として定着している)。でもゼヤンダの子供時代の朝ごはんの定番だったと聞いて、克服すべく奮闘中。
得意料理
ガナラージャ料理。各種スパイスを取り揃えている。全て目分量で豪快に入れるが不思議と美味しい。ただし計量は一切しないので毎回微妙に違う、一期一会の味付け。夫人に飽きられない秘訣。
◆イリェーナ……リョウが育った孤児院の院長
粗食に耐えるのが孤児院の大人の務め。少しでも栄養のあるものは子供たちに。そう口癖で言うものの、本当は甘いものが大好き。好きなもの
棚の中に保存の利く、砂糖漬けキャンディ(マルメラード)をこっそり隠している(唯一の贅沢)。
嫌いなもの
贅沢は敵が口癖だが、セモリナ(蕎麦粉)のカーシャ(おかゆ)に浮かぶ山羊乳の膜だけは見るのもイヤ。厨房には丁寧に掬って取り去るように指示している(でもすぐに浮いてくる)。
得意料理
白夜の季節に生える山菜(シダ類)を誰より早く摘んで、葉から根っこまで常備菜にしてスープを作る。見た目は貧相だがかなり美味しい。先生だけが知っているシダの生える場所があり、それを摘んだ帰り道の線路沿いに、リョウが倒れていた。
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