早いもので2024年も4月に突入しました。
今年、創立70周年を迎える東京創元社では、書店でのフェアやトークイベントなどさまざまな催しが今月からスタートします。詳細はこのWeb東京創元社マガジンやホームページ、70周年特設サイトなどで随時お知らせしますのでどうぞお楽しみに。



今回の記事では、それにさきがけて2023年の11月から2024年の3月にかけて東京創元社が刊行した翻訳ミステリを、担当編集者のコメントつきで一挙ご紹介します! 「これ面白そう!」と思った作品があれば、ぜひ手に取ってみてください。

※価格は総額表示です。

【2023年11月刊】

古書の来歴 (創元推理文庫)
ジェラルディン・ブルックス
東京創元社
2023-11-13


『古書の来歴』(創元推理文庫)
著者:ジェラルディン・ブルックス
訳者:森嶋マリ
定価:1650円

焚書(ふんしょ)と戦火の時代、伝説の古書は誰に読まれ、守られてきたのか? 謎解きの妙と哀惜に満ちた⼈間ドラマが絡み合う、第二回翻訳ミステリー⼤賞受賞作!

担当者コメント:古本屋さんで本を買ったとき、「この本は以前、どこで誰に読まれていたんだろう?」と想像してみたことはありませんか。私たちにできるのは想像だけで、謎は謎のままにされますが、本書の主人公ハンナは古書鑑定家――謎解きのプロです。伝説の古書に残された微細な手がかりから、ずばり「古書の来歴」をひも解いていきます。その過程がミステリとしてひたすら面白いうえに、徐々に明かされる古書と生きた人々の歴史には、力強く胸を打たれます。

著者:ジュリー・ワスマー
訳者:圷香織
定価:1254円

クリスマスを前にしたウィスタブル。パールの友人が中傷メッセージ入りのクリスマスカードを受け取り……。英国の港町でシェフ兼探偵のパールが活躍する好評シリーズ第二弾。

担当者コメント:実在する英国の海辺のリゾート地ウィスタブルを舞台に、レストランのシェフ兼探偵のパールが事件を追うシリーズ第2弾。1巻目は真夏のオイスター・フェスティバルの時期の出来事でしたが、今回はがらっと趣をかえて真冬のクリスマスシーズン。プレゼントを買いに行ったり、ツリーの飾りつけをしたり、カードを送ったりと、英国のクリスマスの雰囲気がたっぷり。勿論クリスマスプディングやミンスパイといったクリスマスならではの料理も読みどころです。

シェフ
ゴーティエ・バティステッラ
東京創元社
2023-11-30


『シェフ』(東京創元社/単行本)
著者:ゴーティエ・バティステッラ
訳者:田中裕子
定価:2750円

元ミシュラン編集部の著者が描くフランス美食界の真実 ! 三ツ星シェフはなぜ死を選んだのか ? 星の重圧、シェフ同士の闘い、野心、嫉妬……。 美食と陰謀の傑作小説。カゼス文学賞・海辺の文学賞受賞。

担当者コメント:元ミシュラン編集部員の著者が、フランス美食界の表も裏も見事に描き上げています。三つ星シェフはなぜ猟銃自殺を遂げたのか? 実際の事件そっくりのこの出来事、星の重圧、陰謀策謀、どれほどこの業界が厳しく苦しいものか。読み進むと、えっ!と声をあげる箇所があります。そこにはとんでもない犯罪が……。衝撃的であると同時に、アラン・デュカスもポール・ボキューズも登場して、料理描写も見事でお腹も鳴ってしまう傑作です。

孔雀屋敷: フィルポッツ傑作短編集 (創元推理文庫)
イーデン・フィルポッツ
東京創元社
2023-11-30


『孔雀屋敷 フィルポッツ傑作短編集』(創元推理文庫)
著者:イーデン・フィルポッツ
訳者:武藤崇恵
定価:1100円

〈クイーンの定員〉に選ばれた「フライング・スコッツマン号での冒険」など、『赤毛のレドメイン家』で名高い巨匠の傑作全6編。いずれも初訳・新訳で贈る待望の短編集!

担当者コメント:担当編集者が気軽に投稿した『だれがコマドリを殺したのか?』からめたポストがX(旧:ツイッター)でバズって、インプレッションが400万を突破したイーデン・フィルポッツの短編集です。江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集』に収められた名品から、〈クイーンの定員〉に選ばれた傑作まで、すべて新訳の全6編を収めています。個人的なお気に入りは、「なにやってるんだこの犯人……」という、夢に見そうな某作品です。

印 (創元推理文庫)
アーナルデュル・インドリダソン
東京創元社
2023-11-30


『印(サイン)』(創元推理文庫)
著者:アーナルデュル・インドリダソン
訳者:柳沢由実子
定価:1386円

首を吊った女性は母親の死後精神的に不安定になり、降霊術師のもとに出入りしていたという。アイスランド推理小説大賞受賞、北欧ミステリの巨人による好評シリーズ第6弾。

担当者コメント:優れたミステリであり警察小説でありながら、毎回手を変え品を変えて現代ならではの様々な問題を我々につきつけてくる本シリーズですが、『印』で取り上げられるのはまさかの死後の世界と降霊術。でもご安心ください、相変わらず心にしみる余韻を残しつつ事件の解決は見事なもの。主人公の犯罪捜査官エーレンデュルの悩み深き人生にも興味津々です。

【2023年12月刊】

殺人は展示する: 初版本図書館の事件簿 (創元推理文庫)
マーティ・ウィンゲイト
東京創元社
2023-12-18


『殺人は展示する 初版本図書館の事件簿』(創元推理文庫)
著者:マーティ・ウィンゲイト
訳者:藤井美佐子
定価:1430円

イングランドのバースにある初版本協会のキュレーターのわたし。展覧会の準備に奮闘していると事件が……。好評『図書室の死体』に続く、〈初版本図書館の事件簿〉第2弾!

担当者コメント:かつてはミステリ愛好家がたくさん訪れていたのに今では訪れる人もまばら……そんな寂しい状況の図書館に賑わいを取り戻そうと、新米キュレーターが奮闘するシリーズの第2弾。ある企画の準備を進めていたところ、案の定事件が――。タイトルも素敵な第3弾The Librarian Always Rings Twiceも刊行が決定していますので、どうぞお楽しみに!

【2024年1月刊】



『グリーン家殺人事件【新訳版】』(創元推理文庫)
著者:S・S・ヴァン・ダイン
訳者:日暮雅通
定価:1100円

【名作ミステリ新訳プロジェクト】ニューヨークのグリーン屋敷で勃発する怪事件に挑む探偵ファイロ・ヴァンス。鬼気迫るストーリーと恐るべき真相で『僧正殺人事件』と並び称される不朽の名作が、新訳で登場!

担当者コメント:ミステリの名作をあげていくと必ずその名があがる作品の新訳です。新訳で読み直して「これは名作とされるはずだわ」と実感するとともに、新訳を編集していて既訳を見るたびに思うことですが、インターネットのない時代によくぞここまで先人たちは調べ上げましたね……と畏敬の念を抱きました。また、巽昌章さんの解説も必読です!

『受験生は謎解きに向かない』(創元推理文庫)
著者:ホリー・ジャクソン
訳者:服部京子
定価:880円

高校生のピップは、仲間たちと共に架空の殺人事件の犯人当てゲームに挑戦する。ピップの観察力や推理力を堪能できる、爽やかで楽しい『自由研究には向かない殺人』前日譚!

担当者コメント:『自由研究には向かない殺人』三部作前日譚の本書は、高校生のピップと友人たちが殺人の犯人当てゲームを解くというお話です。謎解きの面白さがしっかり味わえると同時に、三部作につながるものすごく重要な一冊でもあります! 『自由研究には向かない殺人』が気になっているという方、まずこちらから読んでみてはいかがでしょうか?

悪い男 エーレンデュル捜査官シリーズ
アーナルデュル・インドリダソン
東京創元社
2024-01-19


『悪い男』(東京創元社/単行本)
著者:アーナルデュル・インドリダソン
訳者:柳沢由実子
定価:2420円

レイキャヴィクのアパートの一室で若い男の死体が発見された。女性にクスリを飲ませて意識を失わせレイプしていた常習犯らしい。復讐か? 北欧の巨人の人気シリーズ第7弾。

担当者コメント:アイスランドが世界に誇るミステリの巨匠が本作で描くのは、ある殺人事件。残酷な殺され方をした男は、じつはとんでもない裏の顔をもっていた。なぜか行方不明になってしまった主人公にかわり、同僚の女性捜査官が地道な捜査を重ねて犯人にたどり着きます。いつもながら事件が解決するだけでは終わらない、心をえぐるような深い物語に注目です。それにしても主人公はどこに……。

三十九階段
ジョン・バカン
東京創元社
2024-01-29


『三十九階段』(東京創元社/単行本)
著者:ジョン・バカン
装画・挿画:エドワード・ゴーリー
訳者:小西宏
定価:1980円

スパイ小説の原点ともいうべき不朽の名作を、熱烈なファンの多いエドワード・ゴーリーのイラスト10点とともに贈るマニア垂涎の一冊。

担当者コメント:なにしろスパイ小説の、冒険小説の原点……ですから、「古びた作品でしょ?」と思われるかもしれません。私も何十年も前に読んだおぼろげな記憶しかなかったのですが、読み直してびっくり。のどかな読み心地だというのに、決してだれたりせず、わくわくドキドキの読書体験なのです。そして何と言っても、エドワード・ゴーリーのイラストの数々。もう、最初から最後まで、すっかりのめり込んで楽しみました。これは必読の一冊です!

飛蝗の農場 (創元推理文庫)
ジェレミー・ドロンフィールド
東京創元社
2024-01-29


『飛蝗の農場【新装版】』(創元推理文庫)
著者:ジェレミー・ドロンフィールド
訳者:越前敏弥
定価:1540円

【ベスト1ミステリ・セレクション】ヨークシャーの荒れ野に暮らす女のもとに、謎めいた記憶喪失の男が転がりこむ。背後で繰りひろげられる異様な逃避行! 圧倒的な筆力で英国の新鋭が描く、悪夢と戦慄の物語。

担当者コメント:一読者として「すごく変な話だった」ことだけ覚えている状態で今回の新装版復刊にのぞんだのですが、出だしも設定もサスペンスとして始まるのに、終わってみるととんでもないところに置き去りにされるような、記憶にたがわずちょっとほかに例を見ない変わった小説、変わったミステリでした。傑作です。

【2024年2月刊】

二人で探偵を【新訳版】 (創元推理文庫)
アガサ・クリスティ
東京創元社
2024-02-13


『二人で探偵を【新訳版】』(創元推理文庫)
著者:アガサ・クリスティ
訳者:野口百合子
定価:946円

【名作ミステリ新訳プロジェクト】探偵社を引きついだトミーとタペンスは、難事件、怪事件を古今東西の名探偵の捜査法を真似て事件を解決する。ミステリの女王がおくるコンビ探偵ものの白眉、新訳決定版。

担当者コメント:ミステリの女王クリスティはポワロやミス・マープルだけじゃない、ということを再認識させてくれる名作であり快作。おしどり探偵トミーとタペンスが持ちこまれる難事件・怪事件・珍事件の捜査に大活躍。しかもその捜査方法は古今東西の名探偵の手法を真似ているのですから、ミステリ好きにはたまらない。同じくトミーとタペンスが活躍する前作『秘密組織』と併せてお楽しみください。



『友情よここで終われ』(創元推理文庫)
著者:ネレ・ノイハウス
訳者:酒寄進一
定価:1760円

有名編集者である女性が失踪した。自宅には血の跡が。彼女に何が起きたのか? 出版業界をめぐる泥沼の事件に刑事オリヴァー&ピアが挑む。大人気警察小説シリーズ最新作!

担当者コメント:刑事オリヴァーとピアが帰ってきた! ドイツ発、創元推理文庫の大人気警察小説シリーズの新作です。今回はミステリ作家デビューしたヘニングの仕事関係、つまり出版業界をめぐるすさまじい事件が勃発します。オリヴァーの私生活もめっちゃ大変!! 暖かく見守ってあげてください……。

最上階の殺人 (創元推理文庫)
アントニイ・バークリー
東京創元社
2024-02-29


『最上階の殺人【新訳版】』(創元推理文庫)
著者:アントニイ・バークリー
訳者:藤村裕美
定価:946円

【名作ミステリ新訳プロジェクト】四階建てフラットの最上階で発見された女性の絞殺死体。建物内に犯人がいると推理した名探偵ロジャー・シェリンガムは、各階の住人の調査に乗り出す。シリーズ屈指の傑作!

担当者コメント:ミステリの紹介で「衝撃の結末!」と書くのはちょっとためらわれます。読む人を身構えさせてしまいますし、多くのミステリが衝撃を備えているので無二のアピールポイントにはなりません――とうにゃうにゃ書いてからあえて書くと、本書の結末はすごいです。無二のすごさです。既読の方(つまり結末をご存知の方)にも、ぜひこの新訳を機に再読していただきたいです。結末を支える謎解き小説としての強度に改めて驚かされると思います。

有名すぎて尾行ができない (創元推理文庫)
クイーム・マクドネル
東京創元社
2024-02-29


『有名すぎて尾行ができない』(創元推理文庫)
著者:クイーム・マクドネル
訳者:青木悦子
定価:1430円

探偵事務所を始めた青年ポールは、チャンドラーを教本に尾行中。だが国中が注目する不動産開発詐欺事件と殺人事件に巻き込まれ……。大好評ノンストップ・ミステリ第2弾!

担当者コメント:『平凡すぎて殺される』シリーズの第2弾ですが、この作品から読んでも大丈夫です。探偵事務所を開こうとしている青年ポール、恋人のブリジット、元警官バニーがアイルランド中を揺るがす大事件に巻き込まれます。個性豊かな登場人物たちが斜め上の行動をするのが面白い、先の読めないミステリです。ジャーマン・シェパードのマギーちゃんも、とっても良い味を出しています!

【2024年3月刊】

騙し絵の檻 (創元推理文庫)
ジル・マゴーン
東京創元社
2024-03-18


『騙し絵の檻【新装版】』(創元推理文庫)
著者:ジル・マゴーン
訳者:中村有希
定価:1144円

【ベスト1ミステリ・セレクション】冷酷な殺人犯として投獄され16年後仮釈放された主人公は、自分を罠に嵌めた真犯人を捜し始める。次々に浮かび上がる疑惑と仮説。現代本格ミステリの旗手が底知れぬ実力を知らしめた出世作。 

担当者コメント:登場人物表に掲載されている人物は全部で12人。そのうちひとりは殺人の濡れ衣を着せられた主人公で、2人は被害者です。つまり、真犯人は残る9人の中に必ずいる――のですが、これがまず当てられない。担当編集者も初読時に解決編でのけぞりました。2000年代に日本で翻訳された海外本格ミステリの頂点に選ばれたのも納得の、謎解きミステリの大傑作です。

夜明けを探す少女は (創元推理文庫)
ジュリアナ・グッドマン
東京創元社
2024-03-18


『夜明けを探す少女は』(創元推理文庫)
著者:ジュリアナ・グッドマン
訳者:圷香織
定価:1386円

盗みも撃ち合いもない世界に憧れた姉が、犯罪に手を染めたはずがない。十六歳の冬、わたしは姉の死の真実を探しにゆく――姉妹の絆が胸を打つ、アメリカ探偵作家クラブ賞最終候補作!

担当者コメント:近年の話題作『自由研究には向かない殺人』など、弊社はしばしばYAミステリの傑作を刊行しています。本書はアメリカ探偵作家クラブ賞のYA部門にノミネートされた作品で、十六歳の黒人の少女の調査行が描かれます。亡き姉の思い出を胸に、姉の無実を信じて突き進む彼女の姿を頼もしく、ときにはらはらと読み進めると――最終盤でこぼされる少女の本当の心境に、ああ、と腑に落ちるものがあります。静かに胸に迫る真実を見届けてください。

あの夏が教えてくれた (創元推理文庫)
アレン・エスケンス
東京創元社
2024-03-29


『あの夏が教えてくれた』(創元推理文庫)
著者:アレン・エスケンス
訳者:務台夏子
定価:1386円

孤独な15歳の少年が関わった失踪事件。それは、痛みと共に忘れがたい歓びをもたらした――。『償いの雪が降る』の著者が構想28年で書き上げた、心震える青春ミステリ!

担当者コメント:本書は黒人女性の失踪事件を描いたミステリであると同時に、黒人差別が色濃く残るアメリカの田舎町での、白人と黒人の少年の友情を描いた胸を打つ感動の物語です。心にずっと残り続ける、素晴らしい場面や文章がたくさんあります。同じ著者の既刊『償いの雪が降る』では、自分の編集者歴のうち一、二を争うエモーショナルな帯のキャッチコピーを思いつけたので、それに負けないものを考えよう!と気合いの入った一冊でした。

スリー・カード・マーダー (創元推理文庫)
J・L・ブラックハースト
東京創元社
2024-03-29


『スリー・カード・マーダー』(創元推理文庫)
著者:J・L・ブラックハースト
訳者:三角和代
定価:1386円

被害者は、空から降ってきた。落下したと思われた部屋は無人で、玄関ドアは内側から釘と板で封じられており……。刑事の姉と詐欺師の妹が密室殺人に挑む、新シリーズ開幕!

担当者コメント:「このささやかなスピーチで、あたしはフェル博士の弟子としての地位を確立したんじゃないかな」密室殺人の推理を披露した登場人物が、不可能犯罪の巨匠カーが産んだ名探偵を引き合いに出してドヤ顔で語る! 昨今英米で徐々に増えてきた、密室殺人などの不可能犯罪を真正面から取り上げた、本格ミステリの逸品です。

いかがでしたか? 気になった作品があればぜひ、お手にとってみてください。
4月以降のラインナップについても、メールマガジンや公式SNS等で随時お知らせしていきます。
どうぞお楽しみに!