2021年の単行本刊行時に大きな反響を呼び、同年第4回細谷正充賞を受賞した、羽生飛鳥さん『蝶として死す 平家物語推理抄』。「本格ミステリと歴史小説の巧みな融合を果たした」として高く評価されたデビュー作が、待望の文庫化となって登場します!
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一一八三年、平清盛の異母弟・平頼盛は一門と決別し、源氏の木曾義仲の監視下、都に留まっていた。そんな頼盛は、彼を知恵者と聞いた義仲に、「首がない五つの屍から恩人の屍を特定してほしい」と依頼され……。第15回ミステリーズ!新人賞受賞作「屍実盛(かばねさねもり)」ほか全五編。平清盛や源頼朝などの権力者たちと対峙しながら、推理力を武器に生き抜いた頼盛の生涯を描く、連作ミステリ。********************
主人公にして探偵役は、平頼盛。異母兄の平清盛に疎まれ、清盛の存命中は抑圧され続けた不遇の人物ですが、平家滅亡後は、自らは己の家族と共に生き残った――という、波瀾万丈の生涯を送りました。
羽生さんの「そんな彼は何度窮地に陥っても、その度に生き延びるため知恵を働かせていたことが、文献史料から感じ取れる。頭が切れて何があっても諦めない彼こそ、探偵役にふさわしいのでは?」というユニークな着眼点から、唯一無二の本作は生まれました。
頼盛は生き残るため、時の権力者たちから依頼される五つの難事件に挑みます。
平清盛が都に放った童子は、なぜ惨殺されたのか?――第14回ミステリーズ!新人賞最終候補作の改稿「禿髪(かぶろ)殺し」。
木曾義仲から依頼され、首のない五つの死体からある人物の死体を特定した方法とは?――第15回ミステリーズ!新人賞受賞作「屍実盛」。遠く離れた場所にいたはずの大姫が、父・源頼朝の話の内容を言い当てられた秘密とは?――『本格王2021』に収録された「弔千手(とむらいせんじゅ)」。
どの短編も、『平家物語』の時代ならではの謎と真相を描いており、読み応えがあります。加えて、時代に翻弄されながらも、頭脳ひとつで一族郎党を守り切った頼盛の格好良い生き様に、胸が熱くなります。
ちなみに書き下ろしのあとがきでは、羽生さんがそんな頼盛への想いや、各話の元ネタとなった古今東西のミステリについても語っています。
解説は細谷正充さん。「なぜ『蝶として死す』は細谷正充賞を受賞したのか」が伝わる、本作の魅力について、たっぷり解説いただきました。
また、帯には単行本刊行時、宮部みゆき先生が『読売新聞』の書評欄でお書きになった、「歴史ミステリーの佳品。平家物語の世界を舞台にしたパズラーで、探偵役を務める頼盛は武人であり貴人であり、一匹の蝶だ」という素敵な言葉を掲載させていただきました。
目印は、すり餌さんによるシックな装画です!新時代の本格ミステリ×歴史小説の逸品を、どうぞよろしくお願いいたします!