この世は竜の創りしもの。
彼らが天を舞わば、気流が生まれ、
海に潜らば、海流が生まれ、
地に降り立てば、その大いなる爪にて土を耕し、
その身を震わせば、雲湧き、雨降り来たる。
竜あるところに豊穣あり。
彼らは草原に花を、森に果実を、畑に麦穂をもたらし給う。
ただし。
それは彼らの健やかなる時のみ。
悠久なる竜が病みし時、
彼らは大地に破壊をもたらし給う。
〈竜ノ医師〉とは災厄たる〈竜ノ病〉を退ける者。
優れし医師のあるところに、竜は舞い降りたる。
かつて竜の身のうちを見透かすが如く病を暴き、
竜と同じ世を見るが如くに真理を語る医師あり。
不毛の地に数多の竜を招きしこの医師を、
〈竜ノ目を持つ者〉と人は呼びき。

極北の国カランバス。虐げられし民ヤポネ人で孤児院出身の少年リョウは、憲兵から逃れ必死で飛空船の発着場を目指していた。カランバスでは学ぶことも読み書きすら禁じられているヤポネの民だったが、〈竜ノ医師団〉は治外法権、飛空船で辿り着き入団できれば、ヤポネ人でも道が開ける。なんとか憲兵の目を逃れて発着場に向かう途中、リョウはどう見ても上流階級のお坊ちゃんレオニートに出会う。実は彼も〈竜ノ医師団〉に入団しようと家を捨て名を捨てて来たのだという。同じ目的のために二人は協力してなんとか船に乗りこみ、医師団の本拠地〈竜ノ巣〉にたどり着くが、そこで待ち構えていたのは想像を絶する巨大な竜ディドウスと対峙するという、とんでもない試験だった。

『水使いの森』で第4 回創元ファンタジイ新人賞優秀賞受賞の著者が贈る、竜の医師を目指す少年たちの異世界青春医療ファンタジイ!

以下ネットギャリーで『竜の医師団1』の先読みをして下さったNet Galley会員の皆様のレビューをご紹介いたします。

そこで終わる?
最後まで読んで、そう思った。
「1」とあったから、続きがあるとは思っていたけど。
読み始めたら止まらなくて、この世界観も、登場人物たちも、目新しくて、面白かった。

竜のために、ああでもない、こうでもないと奔走する龍の医師団。
人間のために、できるだけ、そーっっと動いてくれる(ように思える)お爺さん竜。
竜が病に苦しめば、ちょっとした不調でも、人間にとっては大災害。
竜も、医師団の師匠たちも、とても可愛げのある人たち。

早く続きが読みたい。
“辰年“にぴったりの1作品だった。
(図書館関係者) 

ここで終わるんですか!!!なんという生殺し!!
ファンタジーブームがきている私には、設定も登場人物も世界観も最高に面白い一冊だったのに、まさかここで終わるなんて。世間のいう「続きが気になる」なんて惹句は全く信じていなかったのに、この本は「続きが気になって夜も眠れない」と言わざるを得ないし、星の最大数が5個じゃ足りない。
(書店関係者) 

竜の医師団を目指す少年、リョウとレオニート。
医師団の入団条件はただ一つ。「竜に対峙できるか、否か」ただそれのみ。竜が創った世界において、竜の医師団が果たす役割とは?

竜の創った世界とはいったいどんな世界だろう、少年たちはなぜ医師団を目指すのか、新しいファンタジーの世界が開かれワクワクしながら読みました。
竜の病名があの体型ならあり得そうと思うもので、物語の世界観にすっと入りこむことができました。例えば〈胃食道逆流症〉など、竜の首の位置を思い浮かべたらかなり苦しいだろうなとリアリティを感じました。なぜここまでリアルな症状が書けるのかと思っていたら、巻末の著者の庵野ゆきさんの紹介を読んで納得しました。
続きがとても先が気になるラストで、ここから竜の医師を目指す少年たちがこの先どんな症例の竜と出会うのか、どう成長していくのかとても楽しみです。
(レビュアー) 

巨大な竜の群れが列をなして飛び、気候を創る。列をなして泳ぎ、海流を創る。そんな神のごとき竜が年老い、病にかかるとは。更にそれを治すのが、遥かに矮小な人間だとは。この世界にしばし呆然とした。そして、軽妙な口調でもしっかりとした視点で物語は語られていく。
その〈竜の医師団〉に入ったリョウとレオニート。人種から来る見た目も性格も相反する、いや〈対〉となる2人。
そして、山のような巨体の竜を診察するために、文字通り竜登りをする〈竜医大〉の学生達。何というスケール。

それにしても、各話の冒頭にカルテ、終末に病気(人間もかかる)の解説があるとは。あまりにも生き物らし過ぎる竜たち。

なんという世界。巨大な竜の群れが空を飛ぶことで気象が創られ、海を泳ぐことで海流が創られる。まさに竜達によって、人が住むことができる世界。
でも、神のごとき山のような体躯の竜でも、それは生き物。年もとるし病にもかかる。でも、そのサイズ、能力のために国家レベルの大災害をもたらす恐れがある。だから、そんな竜の診断と治療を決死の覚悟で行ってきたのが、長き歴史をもった各診療科目から成る「竜の医療団」。
こんな世界観に出会うのは初めて。そして、その活躍の様を軽妙な口調で物語っていく。いや、人としての在り方の的を得ているが、あえて軽妙な口調としている。この世界とそこに生きる者が背負う大きなものを、少しでも軽くしてあげようとしている。

それにしても、世界最高齢、世界最大の老いた竜ディドウスを診察し、症状の奥底に潜む真の病気を特定し、その治療法を決定して実行する。その群像劇はまさに「医療ミステリ」。ただ、相手が山のように大きな竜だけに、スケールがあまりにも常識外れなのに息を飲む。竜のちょっとした動きに「登ってとり付いている医療団」はつぶされかける。やっとたどりついた皮膚(巨大な鱗にしか見えない)で見つけた菌の群体は人にとってはまさに林。そして竜の抗体反応にやられたら瞬時で終わり。まさに、国の、世界の命運をかけた決死の「医療ストーリー」。各話の最初に今回のカルテが、最後に(人間も罹患する)その病気の解説があることが、「医療ストーリー」であることを示している。サイズが竜である場合の重大さをさりげなく示しながら。

そんな「竜の医師団」になるために学ぶリョウとレオ。特に、可視光が赤外線側に広いなどのリョウの特異性がだんだんと明らかになってくる。それでも、「リョウ・リュウ・ジ」という名前と「ヤポン」という民族名。どうしてもそれがひっかかる。そう。「日本」を連想してしまうから。何か繋がりがあるのか?
予想もしなかったエンディングの先を知りたいし、この謎が続編で明らかになることを期待しながら、読了。
(教育関係者) 

最高に面白かった! 竜ときたら大体『剣と魔法』なのに、まさかのお医者さん。しかも、その病気の状態や説明がとってもわかりやすい(著者のプロフィールを見て納得)。壮大な感じで始まったと思って読み進めていけば『おじいちゃん竜と愉快な仲間たち』テンポの良い会話と文章で読みやすく、面白くて一気読みしてしまった。
なのにここで終わるのかッ!! まだ発売もしていないけど、こんなに続きが気になる作品は久々。早く続きを読ませてください……
(書店関係者) 

虐げられし民の主人公は上流階級の少年と出会い、竜の医師団を目指す。この世界の竜は巨大で豊穣や災害をもたらす存在。巨大な竜の表皮に生態系があり治療には重機を使ったりする。学舎の少年達が生き生きと元気で良い。ファンタジーだが、病気や治療法は具体的。作者は二人組で一人は医師だそうで納得。
(レビュアー) 

虐げられた境遇を飄々と諦めたようでありつつも、真っ直ぐな情熱と竜への愛を隠せない、主人公リョウの軽妙な語り口が魅力的。
巨大さゆえに容易に天変地異を引き起こし、人間たちの生活インフラを担う竜は、猫のような孤高さと犬のような親しみを併せ持つ愛嬌豊かな隣人でもある。
彼らが患う病もまた、現実の人間や動物で見覚えのあるものだ。診断を巡っての程よい意外性を含むやりとりが、竜への愛しさを際立たせる。
今巻においては「老い」という誰もに訪れる現象に付随して患う病に焦点が当てられた。
その先に待ち受ける「死」に対しても竜の医師は向き合うことを避けられない。
老竜デイドゥスの娘ドゥーチェにまつわる物語など、竜の死は既に様々な形を取ってリョウ、そしてレオニートの前にちらついている。
こちらは、諦めたようでいて燃える情熱を押し殺せないリョウとは対照的に、にこやかな振る舞いの裏に心の陰りを隠したレオニートこそが乗り越えることを求められる課題なのかもしれない。
竜というあまりに大きな存在を二人の主人公がどのように追いかけていくのか、3月に発売する続刊からも目が話せない。
(レビュアー) 

そんな殺生な!!!
そこで話を終わらせるなんて生殺しです!!
早く続きを読ませて下さいお願いします!!!
と、叫び出したい程面白かったです。
世界そのものを創造する竜も病に掛かれば医者にかかる。伝説上の生き物も、この話の中では注射が嫌いだったり薬がいやだったりと何だかとても親近感が沸いて、色んな竜の事が知りたいからリリに講義をして欲しい!となりました。
治療も魔法とかではなくちゃんと医療に基づいていてなるほど〜となるし、各科の人間関係も読んでいてとても面白かったです。
しかも魅力的なのは竜だけではなくそれはそれはバラエティに飛んだ魅力溢れる登場人物達の数々!
竜の歴史と色々な種族の歴史等が混ざり合いこれからこの魅力溢れる世界がどんな風に広がっていくのか…読んでいるだけで鮮やかに広がって行く世界観は最高にワクワクしました!!

早く本の形で欲しいです!!
(書店関係者) 

 1巻を読んで「ここで終わる!?」と叫んでしまった皆様、ご安心下さい。『竜の医師団2』は3月中旬刊行です。

■書誌情報
書名:『竜の医師団1』(りゅうのいしだん いち)
著者:庵野ゆき(あんの・ゆき)
判型:創元推理文庫
定価:1,056円 (本体価格:960円)
ページ数:310ページ
装画:岩本ゼロゴ
装幀:岡本歌織(next door design)
刊行:2024年2月29日
ISBN:978-4-488-52410-4

書名:『竜の医師団2』(りゅうのいしだん に)
著者:庵野ゆき(あんの・ゆき)
判型:創元推理文庫
定価:1,056円 (本体価格:960円)
ページ数:320ページ
装画:岩本ゼロゴ
装幀:岡本歌織(next door design)
刊行:2024年3月18日
ISBN:978-4-488-52411-1

■著者紹介
庵野ゆき(あんの・ゆき)
徳島県生まれのフォトグラファーと、愛知県生まれの医師の共同ペンネーム。2019年『水使いの森』(応募時のタイトルは『門のある島』)で第4回創元ファンタジイ新人賞優秀賞を受賞。


竜の医師団1 (創元推理文庫)
庵野 ゆき
東京創元社
2024-02-29


竜の医師団2 (創元推理文庫)
庵野 ゆき
東京創元社
2024-03-16


水使いの森 (創元推理文庫)
庵野 ゆき
東京創元社
2020-03-12