2024年は東京創元社の創立70周年となる記念すべき年。その記念企画のひとつである、《ベスト1ミステリ・セレクション》が今月より創元推理文庫でスタートします。

どんな企画かと申しますと「東京創元社の創立70周年を記念し、各種ランキングで1位となった翻訳ミステリの名作を、装いも新たにお届けする企画(帯より引用)」です。すべて文庫での刊行、「新訳」ではなく「新装版」となります。

1月29日(月)に発売となる、その第1弾に選ばれた作品が、「このミステリーがすごい!」海外編第1位と「IN★POCKET 文庫翻訳ミステリー・ベスト10」総合部門1位の2冠に輝いたジェレミー・ドロンフィールド/越前敏弥訳『飛蝗(ばった)の農場』です。「装いも新たに」ということで、新しくなったカバーがこちら。

飛蝗の農場

本書の復刊にあたってはカバーを一新したほか、訳文の見直しをおこない、越前先生には「新装版 訳者あとがき」を書き下ろしていただきました。三橋曉さんによる解説も、刊行後の翻訳ミステリ界の推移を踏まえての加筆がなされています。さらに今回は電子書籍版も同時発売しますので、各種端末でもお読みいただけます。

【あらすじ】
ヨークシャーの荒れ野で農場を営むキャロルのもとに、謎めいた男が一夜の宿を求めて現れる。不幸な経緯から彼女は男に怪我を負わせ、傷が癒えるまで泊めることになるが、意識を取りもどした男は、過去の記憶がまるでないと言う――幻惑的な冒頭から忘れがたい結末まで、圧倒的な筆力で紡がれる悪夢と戦慄の謎物語。デビュー作にしてミステリランキング二冠に輝いた驚嘆の長編!

……あえて分類するなら「サスペンス」なのですが、この物語の最大の魅力は、上記あらすじからはどうしてもこぼれてしまう部分――思いもよらぬ話の展開、奇妙なくらい印象に残る挿話の数々、想像だにしなかった地点へ着地する結末――にあります。本国イギリスでの原書刊行が1998年、創元推理文庫での初刊が2002年と、いずれも20年以上が経過していますが、そのあと読んだどんな小説とも似ていない(もちろんそれ以前に読んだ本とも)、強烈なオリジナリティを有する傑作です。初読のかたも、再読となるかたも、このたびの新装版で、唯一無二の読書体験を味わっていただければ。

なお、著者紹介にもありますとおり、ドロンフィールドは十年あまりの断筆期間を経て復活、現在は小説家ではなくノンフィクション作家として活躍しています。そのノンフィクションの一冊が、本書と同じく越前敏弥先生の翻訳で2024年内に河出書房新社より刊行される予定です(刊行年がそろったのはまったくの偶然で、本書の復刊を越前先生へお伝えした際に教えてもらって大変びっくりしました)。その内容については「新装版あとがき」をご覧ください。やはり傑作だそうですよ。

東京創元社創立70周年記念企画《ベスト1ミステリ・セレクション》第1弾、ジェレミー・ドロンフィールド/越前敏弥訳『飛蝗の農場【新装版】』(創元推理文庫)は1月29日発売です。

そして第2弾となるジル・マゴーン/中村有希訳『騙し絵の檻【新装版】』(創元推理文庫)は3月刊行予定です。こちらもお楽しみに!


■書誌情報
書名:『飛蝗の農場【新装版】』(ばったののうじょう しんそうばん)
原題:The Locust Farm
著者:ジェレミー・ドロンフィールド
訳者:越前敏弥(えちぜん・としや)
判型:創元推理文庫
定価:1,540円 (本体価格:1,400円)
ページ数:508ページ
写真:Nick Clark/Getty Images
装幀:岡本洋平(岡本デザイン室)
刊行:2024年1月29日

■著者紹介
ジェレミー・ドロンフィールド(Jeremy Dronfield)
1965年、イギリスのウェールズ南部に生まれる。98年、『飛蝗の農場』で小説家デビュー。同書は英国推理作家協会(CWA)最優秀デビュー長編賞の最終候補作となり、日本でも各種ランキングの1位に選出された。その他の小説に『サルバドールの復活』(1999)などがある。十余年におよぶ執筆活動の中断を経て、2015年に歴史ノンフィクション作家として再デビュー。以降、精力的に活動している。

飛蝗の農場 (創元推理文庫)
ジェレミー・ドロンフィールド
東京創元社
2024-01-29