70周年記念ロゴ

あけましておめでとうございます。

恒例となっております、新年の特別企画。
2024年は東京創元社の創立70周年に当たります。そんな記念すべき年に刊行予定の書籍を2日にわたりお知らせします。初日の本日は翻訳ミステリ・文芸とノンフィクション・評論のラインナップ、あす2日はSFとファンタジイの予定をご案内いたします。

本年も東京創元社は引きつづき、読者の皆さまに良質な作品をご紹介したいと思っております。ご愛読のほど、なにとぞよろしくお願いいたします。

(特記のない本はすべて【創元推理文庫】より刊行。日本語タイトルは一部を除き仮題です)


【強烈プッシュ作】

■クリスティン・ペリン/上條ひろみ訳白薔薇殺人事件(仮)
『白薔薇殺人事件』
ミステリ作家の卵であるアニーは、大叔母からキャッスルノール村の屋敷に招かれた。大叔母は17歳のときに占い師から告げられた「いつかおまえは殺される」という予言を信じ続けており、大邸宅に住む奇妙な老婦人として知られている。アニーが屋敷を訪れると、書斎で大叔母が死んでいた。両手には血の痕があり、床には茎の長い白薔薇が落ちていた。かつての予言通りに殺害されてしまった大叔母が、予言が的中したときのために約60年をかけて集めた村人たちの調査記録をもとに、アニーは犯人探しに挑む。新鋭が贈る犯人当てミステリの大傑作!

Close to Death
テムズ川沿いのリッチモンドはロンドンで最も理想的な住環境を誇る地区である。当該地区にある閑静なゲーテッド・コミュニティたるリヴァービュー・クロースにいたっては、住人に完璧な生活を約束するといってよかった――ジャイルズ・ケンワージーが、その妻、躾のできていない子供、四台の邪魔な超大型車、やかましい取り巻き、庭にプールを新設する計画とともに引っ越してくるまでは。だからケンワージーがクロスボウで首を射抜かれ死亡したとき、関係者全員が容疑者とされたのは当然の成り行きだったのだ。捜査が行き詰まり、警察はしぶしぶ元刑事のダニエル・ホーソーンを招聘する。しかしホーソーンをもってすら、この事件は解決不可能に思われた――。舞台は大都会の中の閉鎖空間ともいえる、ロンドンのゲーテッド・コミュニティ。そこで発生した、関係者全員が同じ動機を持っている事件は、どうやったら解決できるのか? 『メインテーマは殺人』『その裁きは死』『殺しへのライン』『ナイフをひねれば』に続く人気シリーズ第五弾。

高校生のピップにある招待状が届いた。試験が終わった週末、友人宅で架空の殺人の犯人当てゲームが開催されるという。舞台は1924年、孤島に建つ大富豪の館という設定で、参加者は同級生とその兄の7人。開始早々、館の主の刺殺死体が発見される。当初は乗り気ではなかったピップだが、次第にゲームにのめり込んでいき……。爽やかで楽しい『自由研究には向かない殺人』三部作前日譚!


【名匠・大家たちの最新作】

アーナルデュル・インドリダソン(アイスランド)/柳沢由実子訳悪い男
『悪い男』(単行本)※1月刊
レイキャヴィクの中心街で半裸の男が錠剤を口に押し込まれ、鋭い刃物で首を裂かれて失血死した状態で発見された。錠剤はデートレイプ・ドラッグとして知られるもので、現場には他に被害者が身につけていた女物のTシャツとショール。レイキャヴィクの犯罪捜査官エリンボルグはショールに残っていた香辛料の香りを頼りに捜査を始める。人気シリーズ第7弾。


ジル・ペイトン・ウォルシュ/猪俣美江子訳debts-of-dishonour
Debts of Dishonour
セント・アガサ・カレッジの卒業生で国際的大企業のカリスマ経営者、ジュリアス・ファランが死亡した。英国東部海岸の町イーストハムでアルコール依存症の高級療養施設〈ヘッドランズ〉に滞在していたところ、深夜の散歩中に崖から転落したのだ。妻と院長のランダム医師が遺体の身元を確認し、ファラン・グループの経営は娘婿のマックスが継承。世間の騒ぎも徐々におさまった。しかし、事件の数か月前、サー・ジュリアンはセント・アガサの晩餐会で酔っ払って転倒し、イモージェンの手当てを受けていたのだがその冷静な対応に惚れ込んだサー・ジュリアンは、自分はさまざまな相手から命を狙われているのだと彼女に打ち明けていた……。『ウィンダム図書館の奇妙な事件』『ケンブリッジ大学の途切れた原稿の謎』に続く、〈イモージェン・クワイ〉シリーズ第3弾。

ジョン・コナリー/田内志文訳キャクストン私設図書館
『キャクストン私設図書館』
ある日、本好きのバージャー氏は奇妙な体験ののちに〈キャクストン私設図書館&書物保管庫〉に辿り着く。初版本と手稿本を所蔵するこの古びた図書館には、アンナ・カレーニナ、ハムレット、シャーロック・ホームズなど、本から抜け出して“実体化”した名作の登場人物が住んでいた。図書館の秘密を知ったバージャー氏は〈物語〉の世界を揺るがすある計画を思いつき――。本好きの功罪を優しく切なく魅力たっぷりに描き、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞とアンソニー賞を受賞した表題作に加え、同じく〈キャクストン私設図書館〉の“もっとも不可思議なできごとのひとつ”に数えられるシャーロック・ホームズにまつわる逸話、世界各国で話題の異世界冒険譚『失われたものたちの本』のスピンオフ短編、触れた者に次々と怪奇現象が起きる奇書をめぐる中編の全4作を収録。非日常の世界に没頭する楽しみをじっくり味わえる、本や物語をテーマにした作品集が文庫化!(書影は単行本版のものです)

ピーター・トレメイン/田村美佐子訳smoke-in-the-wind
Smoke in the Wind(修道女フィデルマ・シリーズ)
新任のカンタベリー大司教を訪問するために、良き相棒エイダルフと共に船に乗っていたフィデルマは、嵐に遭ってウェールズの沿岸に漂着してしまった。ウェールズのGwlyddien王国の国王に助けられたものの、王はフィデルマがアイルランドの高名なドーリィーと知って、王国で起きた不可解な事件を解いて欲しいと依頼してきたのだ。国王の長男も属していた修道院の人々がまるごと消えてしまったというのだ。そしてフィデルマとエイダルフの前に、一見修道士たちが消えた事件とはなんの関係もなさそうな、地元の少女殺害という事件が。だがその背後には想像もつかないような恐ろしい真相が……。シリーズ長篇10作目。

ネレ・ノイハウス/酒寄進一訳友情よここで終われ
『友情よここで終われ』※2月刊
著名な文芸編集者であるハイケが失踪した。彼女の家のドアには血の跡があり、二階には鎖でつながれた老人がいた。捜査が始まり、老人は彼女が介護していた父親だと判明、血痕はハイケのものと断定された。彼女に作品の剽窃を暴露されたベストセラー作家が被疑者に浮かぶが、出版社社長をはじめ、怪しい人物が増えていく。さらに、ハイケと親しい人物が昏睡状態で発見され……。出版業界をめぐる泥沼の事件に刑事オリヴァー&ピアが挑む!

C・J・ボックス/野口百合子訳Vicious Circle
Vicious Circle(猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズ)
猟区管理官ジョー・ピケットのもとに、過去に何度か関わったファーカスから電話があった。留守電に残されていたのは、バーでダラス・ケイツと3人の男女のジョーを襲う計画らしきものを盗み聞いたという警告だった。ダラスはかつてジョーに家族を逮捕され、強烈な恨みを抱いていた。翌日、ファーカスが行方不明になったと判明する。ジョーは空からの捜索に同行し、熱源探知装置でファーカスらしき男が謎の3つの人影に追われて発砲された場面を目撃する。その後遺体を発見し、犯人を捜しはじめるが……。

シャルロッテ・リンク(ドイツ)/浅井晶子訳罪なくして
『罪なくして』
『裏切り』『誘拐犯』に続く、ケイト・リンヴィル・シリーズの第三弾。ケイトはついにスコットランドヤードを辞めて、ケイレブに乞われて故郷のヨークシャーに戻り、スカボロー署で働くことに。同僚からの餞別で旅をしたケイトは、列車内での奇妙な事件に巻き込まれる。一方ケイレブのアルコール依存は相変わらず。絡み合う人間関係と、それぞれの苦しみ……。人間を描く力量と、事件展開の意外性は前二作同様、息を呑むほど。シャルロッテ・リンクらしさ全開です。


【期待の新人・新作登場!】

■アシュリー・エルストン/法村里絵訳First Lie Wins
First Lie Wins
エヴィは、ルイジアナ州の小さな町にあるライアンの家で暮らし始めた。雇い主から、「エヴィという女になりすまし、ライアンについて出来る限り調べろ」という指令を受けている。ごく普通の好青年である彼に、いったいどんな秘密が? エヴィのプロフィールを完璧に頭に入れて調査を続けていく。だがある日、長く町を離れていたライアンの幼なじみが、恋人を連れて現れた。自分にそっくりなその女性は、ルカと名乗った。それはエヴィの本名で、ルカが語った生い立ちも自分とそっくり同じだった……。嘘を武器とし、他人になりすまして生きてきた「私」を誰かが陥れようとしている? 驚愕の結末が待つ、大型新人の傑作サスペンス登場!

■R・J・エロリー/吉野弘人訳The Last Highway
The Last Highway
保安官ヴィクターのもとに、弟が死んだという知らせが届いた。弟とは両親の死後、憎しみ合った果てに12年間会っていなかった。弟は車で何度も轢かれた跡があり、事故ではなく殺人だった。同じく保安官であった彼は何者かに恨まれていたのか? ヴィクターは、弟の娘で、儀の場で初めて会った唯一の肉親である10歳の姪ジェニファーから、真相を調べてほしいと頼まれる。だがヴィクターは、弟がなんらかの不正取引に関与していたと聞かされる。――弟の死の真相を探ることは、弟の人生を知ることだ。死んだ弟と純粋でまっすぐな姪の存在が、男の灰色の人生を切なく鮮やかに彩っていく。『静かなる天使の叫び』の著者が贈る救いと再生のミステリ!

■ジュリアナ・グッドマン/圷香織訳ブラックガールズ
The Black Girls Left Standing ※3月刊
世の中には、夜になっても鍵をかけない家があるのを知ってる?――シカゴの高校に通う黒人の少女ボーは、卒業を機にこの街を出ると決めていた。絵の才能を活かし、盗みも撃ち合いもないどこか遠くへ行くのだ。そんなある冬の未明、姉のカティアが不法侵入の疑いで警官に射殺された。外の安全な世界をボーに語り聞かせてきた姉が、犯罪に手を染めるはずがない。ボーは姉の無実を証明するため、現場から消えた姉の恋人を探し始める。ひたむきな少女の調査行、そして成長と旅立ちを描く、MWA賞最終候補作!

■アン・クレア/谷泰子訳クリスティ書店の事件簿
『クリスティ書店の事件簿』『クリスティ書店の事件簿2』
ここは美しい雪山の書店〈ブック・シャレー〉。故郷に帰ってきたエリーは、姉のメグと看板猫のアガサとともにミステリ好きの集うこの書店を切り盛りしていた。ある日、山腹と麓をつなぐゴンドラのなかで男の刺殺体が発見される。男は死の直前に店を訪れ、クリスティ『春にして君を離れ』のサイン入り初版本を残しており、時を同じくして店からは従業員の女性が姿を消した。ふたつの事件には関係が? エリーは否応なく推理を働かせることになり……。探偵役も容疑者もミステリ好きばかり。謎と雪が降り積もる書店を舞台に贈る新ミステリシリーズ!

■エマ・スタイルズ/圷香織訳ノー・カントリー・フォー・ガールズ
『ノー・カントリー・フォー・ガールズ』
喧嘩で高校を退学になったばかりの少女チャーリーは、自宅の前でナオという血まみれの少女に呼び止められ、ひと晩泊めてくれと頼まれる。ナオと共に家に入ると、姉の暴力的な恋人ダリルが待ち構えていた。盗んだ黄金を返せ――ダリルに詰め寄られたチャーリーは、抵抗の果てに彼を殺してしまう。警察の介入を嫌うナオの提案で二人が湖に死体を捨て家に戻ると、ダリルの仲間と思しき人影が見えた。帰る場所をなくした二人はダリルのピックアップトラックを盗み、陽光降り注ぐオーストラリアを北へ、安全な場所を目指して走り出す。しかし座席の下に隠された黄金が、二人をさらなる血と暴力へと導いていき――。衝動的なチャーリーと理性的なナオ。炎天下の旅路で、それぞれに葛藤を抱えた正反対の二人が相棒となり、血を踏み越えて走り続けるノンストップのクライム・サスペンス! CWA賞最終候補作。

■エヴァ・ドーラン/玉木亨訳終着点
『終着点』
建て替えで立ち退きを迫られ、住民がほとんどいなくなったロンドンの集合住宅。その空き部屋のひとつで、ある晩、若い女性が男を殺してしまい、親しくしている年輩の女性に助けを求める。ふたりは協力して男の死体をエレベーターシャフトに投げこみ、それが事故死として処理されることを願うが、年輩の女性は若い女性の説明にいくつかの矛盾点があることに気づき、しだいに疑心暗鬼に陥っていく。はたして若い女性の言葉はどこまで信用できるのか? 彼女が殺した男はいったい何者だったのか? ひとつの殺人を起点に、過去へとさかのぼっていく章と、現在がそのまま進行していく章とが交互に展開され、事件を取り巻く状況がすこしずつあらわになる。そして最後、ふたりの女性がいきついた先に待っていたのは……。英国ミステリ界の新鋭が放つ衝撃作!

■ジジ・パンディアン/鈴木美朋訳Under Lock
Under Lock & Skeleton Key
主人公のテンペスト・ラージはマジシャン一家の末裔。かつては大スターだったが、不幸な出来事によって引退を余儀なくされ、父の経営する会社を手伝うことになった。その会社とは、隠し部屋や風変わりな仕掛けのある住宅の建築やリフォームを専門とする〈秘密の階段建築社〉。今日の仕事は、築百年以上たっている屋敷のリフォームだったが、テンペストはパントリーに入ったとたん、ぞくりとした。この部屋はどこかおかしい。案の定、壁の中から死体が発見される。壁の中の空間は少なくとも数十年は密閉されていたはずなのに――。秘密の小部屋や謎めいた階段などに心ひかれたことのある人へ贈る、新シリーズ開幕!

■J・L・ブラックハースト/三角和代訳スリー・カード・マーダー
『スリー・カード・マーダー』
被害者は、空から降ってきた。落下したと思われたフラットの5階の部屋は無人で、玄関ドアは内側から釘と板で封じられていた。この不可解な密室殺人を捜査するのは、サセックス警察重大犯罪班のテス・フォックス警部補。しかし彼女は、現場の壁にダーツで止められていたチラシを見て愕然とする。それはかつて、妹を救うために自分が犯した殺人を示唆していた。いまは詐欺師として生きる異母妹のために……。密室殺人×警察小説の新シリーズ開幕!

■アラン・フラド/高山祥子訳ブックスパイ
『ブックスパイ』
真珠湾攻撃の二週間後、ルーズベルト大統領はIDC――外国出版物取得部門間委員会を設立した。これは図書館司書をヨーロッパの中立国へ派遣し、枢軸国の書籍をマイクロフィルム化して本国へ送らせ、その情報を分析する機関である。ニューヨーク公共図書館で働くマリアはその一員に任命され、リスボンへと旅立つことになった。彼女は報道写真家の母親をスペイン内戦で亡くしており、戦争を終結させたいという強い想いを抱いていたのだ。一方リスボンでは、書店を営むティアゴという青年が、書類偽造の天才である店員ローザと共にユダヤ人避難のための秘密活動を行っていた。マリアは二人の助けを得て文書を収集する傍ら、ナチ親衛隊に虚偽情報を流す二重スパイとして戦争に深く関わっていく。戦時のリスボンを舞台に、スパイの密命を帯びた図書館司書の活躍を描く、心揺さぶる傑作長編!

■サイモン・モックラー/冨田ひろみ訳TheDarkThatDoesntSleep
The Dark That Doesn't Sleep
1967年の末。精神科医のジャックは陸軍医療センターに呼び出される。旧知のCIA幹部からの依頼で両手と顔に包帯を巻かれた男、コナーの話を聴くためだ。コナーは、陸軍がグリーンランドの分厚い氷の下に建設した極秘基地で発生した火災の唯一の生存者で、他に隊員2名が死亡していた。出火場所は発電室で、不可解なことにいっぽうは人の形を残しているが、もう一方は灰と化してしまっていた。コナーは出火原因も彼らが巻き込まれた経緯も知らないと言う。謎の火災の真相を調べるうちに、ジャックは想像を絶する事態に巻きこまれていき……。冷戦時代を舞台に謎と陰謀が渦巻く、手に汗握る圧巻のサスペンス!


【人気シリーズ・著者の最新刊】

アシュリー・ウィーヴァー/辻早苗訳金庫破りとスパイの鍵
『金庫破りとスパイの鍵』
第二次大戦下のロンドン。テムズ川で、鍵のかかったカメオ付きのブレスレットをつけた女性の遺体が発見された。陸軍のラムゼイ少佐からの依頼で、金庫破りのエリーはその錠を解錠する。カメオから見つかったものと女性が毒殺されていたことから、彼女はスパイ活動にかかわっていたと判明。エリーは少佐に協力し、殺人事件の犯人と、死んだ女性の背後にいるドイツのスパイを探りだすことに。手がかりは、女性が身につけていた高価な宝石類と、小さな時計の巻き鍵だけ――。凄腕の金庫破りと堅物の青年少佐、正反対のふたりを描く人気シリーズ第2弾!

マーティ・ウィンゲイト/藤井美佐子訳The Librarian
The Librarian Always Rings Twice
わたし、ヘイリー・バークがバースにある初版本協会のキュレーターに就任してから1年が経とうとしていた。協会はミステリ黄金時代の女性作家の初版本収集家だった故レディ・ジョージアナ・ファウリングが設立したもので、彼女の自宅だったミドルバンク館にある。わたしと一緒に協会の運営を担っているのが、レディの長年にわたる親友で、個人秘書を務めていたミセス・ウルガー。現在は協会の終身事務局長だ。このたび、協会の認知度アップや新たな会員の確保を狙い、〈初版本図書館〉である図書室を週に一度、水曜日の午後だけ一般に公開する運びとなった。一方、レディのろくでなしの甥チャールズ・ヘンリー・ディルがわたしのアシスタントとして協会で働きたいと申し出てくる。レディが亡くなってから4年間というもの、あの手この手で遺産をかすめ取ろうと策略を働いてきたディルをおとなしくさせることができるならと、理事会は採用を決定してしまう。そんな折、レディの孫だと名乗る男が現われる。レディに子はいなかったはずだが……。

アレン・エスケンス/務台夏子訳NothingMoreDangerous
Nothing More Dangerous ※3月刊
ボーディはミズーリ州の田舎町で暮らす15歳の少年。父を亡くし母親と寂しい日々を送っている。高校に馴染めず、友達は一人もいない。静かすぎるその町で最近大事件が起きた。町最大の企業〈ライク工業〉に勤める黒人女性が不審な失踪を遂げたのだ。捜査中の保安官が、ボーディが親しくしている隣人のホークを訪ねてきた。女性はかつてホークの部下で、ふたりのあいだには噂があったという。思いがけない事件が、ボーディの日常に不穏な影を落とす――。現実に悩みながらも、少年は鮮やかに成長する。『償いの雪が降る』の著者による心震える青春ミステリ!

マウリツィオ・デ・ジョバンニ(イタリア)/直良和美訳cuccioli
『P分署捜査班 子犬』
ピッツォファルコーネ署近くのゴミ箱に遺棄された赤ん坊を発見したのは、内なる暴力衝動をおさえられないロマーノ巡査長だった。病院に運ばれた赤ん坊はなんとか一命をとりとめ、捜査班の面々は母親を見つけようと動き出す。ところが、副署長のピザネッリが発見した手がかりから捜査は意外な方向へ。時を同じくして、市中のペットや野良犬が何物かに連れ去られる事件が立て続けに起きていて……。『集結』『誘拐』『寒波』に続く〈21世紀の87分署〉シリーズ第四弾!

ジャナ・デリオン/島村浩子訳hurricane force
『嵐にも負けず』(ワニの町へ来たスパイ7)
新町長シーリア就任のせいで、シンフルの町はいまだ落ち着かない。長年、行方不明だったシーリアの怪しい夫も現われ、不穏さは増すばかり。そんななか、ハリケーンが襲来、困難な状況をあまたくぐり抜けてきたフォーチュンも、自然災害にはお手上げだ。なんとかやり過ごしてほっとしたのもつかの間、嵐はとんでもない置き土産を残していっていた……。今度は、偽札に殺人?! フォーチュンに公私ともども最大級の危機が迫る! 破天荒すぎな老婦人ふたりの助けを借りて、フォーチュンは町と自分の窮地を救えるか? 好評〈ワニ町〉シリーズの第七弾!

エリカ・ルース・ノイバウアー/山田順子訳豪華客船の殺人
『豪華客船の殺人』
叔母のミリーを恋人と娘の住む英国に残しひとりアメリカへの帰国の途についたジェーン。だがニューヨークへ向かう大西洋の旅もなぜか波乱にみちたものに……。いきがかり上、気になるが秘密主義なのが気に障る(英国政府の情報機関の所属らしい)レドヴァースと、夫婦のふりをして、ドイツのスパイと噂される人物を探る羽目になってしまう。ところが、乗客のひとりが忽然と姿を消してしまう。スパイの件と関係があるのか? アガサ賞デビュー長篇賞受賞シリーズ。旅情豊かなコージーミステリ第三弾。

アリス・フィーニー/越智睦訳GoodBadGirl
Good Bad Girl
八十歳のエディスはケアハウスで暮らしていた。娘のクリオとは疎遠だが、介護職員として働く十八歳のペイシェンスとは、世代はちがえど友情を築いている。ペイシェンスも、一緒に暮らしていた母親と喧嘩して家出してきた身だった。そんなある日、ケアハウスの所長が何者かに殺害される。実は、数ヵ月前にもここでは別の入居者が不審な死を遂げていて……。『彼と彼女の衝撃の瞬間』『彼は彼女の顔が見えない』のどんでん返しの女王が贈る傑作サスペンス!

クイーム・マクドネル/青木悦子訳有名すぎて原書
『有名すぎて尾行ができない』※2月刊
平凡すぎる顔が特徴の青年ポールは、恋人のブリジット、元警官のバニーと探偵事務所を始めることにした。さっそく、謎の美女が依頼に訪れる。彼女は国中が注目する不動産開発詐欺事件の被告人三人組のひとりの愛人で、その男の浮気調査をしてほしいと言う。ポールは依頼を引き受けたが、相手を尾行しては見失っているうちに、またも殺人事件に巻きこまれてしまい……。『平凡すぎて殺される』に続く大好評ノンストップ・ミステリ第2弾!

アリスン・モントクレア/山田久美子訳71PKFW16DmL
The Unkept Woman(ロンドン謎解き結婚相談所4)
1946年、戦後ロンドン。〈ライト・ソート結婚相談所〉の経営者のひとりアイリスは、出勤前にバーガンディ色のコートの女に尾行されていると気づく。アイリスは戦時中に情報部に所属し、スパイとして働いていた。その際の活動に関係しているのか? アイリスは共同経営者で貴族のグウェンの家に数日泊めてもらうことにするが……。対照的な女性コンビが仕事と殺人事件の調査に奔走する大人気シリーズ第4弾!


C・A・ラーマー/高橋恭美子訳When There Were 9
When There Were 9(マーダー・ミステリ・ブッククラブ)
クリスティ好きが集まった〈マーダー・ミステリ・ブッククラブ〉のメンバーは、新メンバー加入の顔合わせと読書会も兼ねて、人里離れた山の上にある古風な山荘〈ライルズ・ロッジ〉に向かった。読書会の発起人アリシアとリネットの姉妹、旧メンバーの3人に新メンバー4人の総勢9人だ。1930年築のロッジは往時を偲ばせる雰囲気たっぷりの重厚な造りだ。スタッフは支配人料理人の2人で、滞在中の面倒を見てくれる。だが、翌日の朝、ロッジの支配人がベッドで死んでいた。どうやら毒を注射されたらしい。さらに、山の中腹で火事が発生。そして料理人も殺されて……。この山荘でいったい何が起きているのか? 犯人は読書会のメンバーなのか? クリスティへの愛が詰まったシリーズ4作目。


【名作復刻・クラシック新訳版】

『悪魔のひじの家』
悪名高い故ワイルドフェア判事の旧宅である緑樹館は〈悪魔のひじ〉に聳え立つ。前当主クローヴィスの遺言により相続人指名された孫のニックは、ほしくもない遺産を断乎拒否すべく、友人ガレットを伴い緑樹館を訪れた。折しも響き渡る、宵闇を切り裂く銃声。幸い現当主の命に別状はなかったが、幽霊目撃談の真偽は措いても館を覆う不穏な雰囲気は疑いようがない。ニックの助っ人になるはずのガレットは、わがことに心乱れて気もそぞろ。そこへ救世主さながら現れたギディオン・フェル博士とエリオット副警視長が電光石火の早業で事件を収拾する!

エラリー・クイーン/中村有希訳
『Zの悲劇』【名作ミステリ新訳プロジェクト】
権勢を誇る一方で、悪どい噂も絶えない上院議員が何者かに刺殺された。容疑者として逮捕されたのは、前科者の男。警察を退職し、私立探偵となっていたサム警視と、彼を手伝う娘のペイシェンスは容疑者の無実を確信するが、死刑執行の日は刻一刻と迫る。助けを請われ、『Yの悲劇』以来10年ぶりに殺人事件の謎解きに挑む名優ドルリー・レーンは、真犯人を突き止めることができるのか? 解決シーンの異様な迫力で名高い、レーン四部作の第三作を新訳版で贈る。

アガサ・クリスティ/野口百合子訳
 『二人で探偵を』【名作ミステリ新訳プロジェクト】※2月刊
結婚して幸せな生活を送っていたトミーとタペンスは、上司のミスター・カーターからある提案を受ける。英国に対するスパイ活動が疑われる〈国際探偵社〉のミスター・ブラントになりすまし、情報部のために探偵業をしてみないかというのだ。そんなわけで探偵社を引きついだ彼らのところに来る難事件、怪事件、そして奇妙な事件の数々……。トミーとタペンスは古今東西の名探偵の捜査法を真似て事件を解決する。ミステリの女王がおくるコンビ探偵ものの白眉、新訳決定版。

■アガサ・クリスティ/山田順子訳
『チムニーズ荘の秘密』【名作ミステリ新訳プロジェクト】
バトル警視シリーズ。石油王クートの屋敷チムニーズ荘を舞台に、石油の利権を手中に収めようとする要人達たちが集まるなか、殺人事件が発生。冒険好きの青年アンソニーが活躍する。ミステリとしても、サスペンスとしても面白い作品。

『プレイバック』【名作ミステリ新訳プロジェクト】
フィリップ・マーロウが依頼を受け、ユニオン駅で特急から降りた女を尾行する。彼女は駅で男と話した後、サンディエゴまで行き、ホテルに宿泊した。彼女を追って同じホテルにマーロウが泊まると、部屋に女が現われ、彼女の部屋のベランダに駅で話していた相手の男の死体があると言う。しかし、マーロウが部屋を訪ねてみると男の死体は消えていた。「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない」(清水俊二訳)というハードボイルドの代名詞ともいうべきマーロウの台詞は、その後、生島治郎がハードボイルドとは何かを語る際にしばしば引き合いに出し角川映画『野性の証明』で生島の訳を元に「男はタフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない」として使われ定着した。

『スケープゴート』
イギリスの大学教授ジョンは、休暇先で訪れたフランスのトゥールで自分と瓜二つの富豪ジャンと巡り会う。自分の人生のむなしさと人間関係の希薄さに思い悩んでいたジョンは、逆に家族という束縛から逃げ出したいというジャンと酒を飲むうちに意識を失う。翌朝、モーテルで目覚めてみると、ジョンはジャンの持ち物とともに置き去りにされていた。程なく運転手が迎えに現れ、ジョンはジャンの悪質なジョークに腹を立てながらも、ジャンの身代わりを演じることにする。ジャンとして城でくらすうちに様々な問題が明らかになる。だが、事態は好転したと思ったときジャンが帰ってくるとの連絡が……。人間の心の奥底をのぞき込むような切れ味が光る、長編サスペンス。

■ジェレミー・ドロンフィールド/越前敏弥訳飛蝗の農場
『飛蝗の農場【新装版】』【ベスト1ミステリ・セレクション】※1月刊
ヨークシャーの荒れ野で農場を営むキャロルのもとに、奇妙な男が転がりこむ。不運な経緯から彼女は男に怪我を負わせ、回復までの宿を提供することにしたのだが、意識を取り戻した男は、過去の記憶がまるでないと言う。幻惑的な冒頭から忘れがたい結末まで、圧倒的な筆力で紡がれる悪夢と戦慄の謎物語。ミステリランキング2冠に輝く、驚嘆のデビュー長編!

『最上階の殺人』【名作ミステリ新訳プロジェクト】※2月刊
閑静な住宅街、四階建てフラットの最上階で高齢女性の絞殺死体が発見されたとの報を受け、モーズビー首席警部率いる捜査班は現場に急行した。室内はひどく荒らされ、裏庭に面した窓に脱出用のロープが下がっている状況から、警察は物盗りの犯行と断定、容疑者を絞り込んでいく。しかし警察の捜査を実地に見学しようと同行したロジャー・シェリンガムは、建物内に真犯人がいると睨み、被害者の姪を秘書に雇うと調査に乗り出す。探偵小説本来の謎解きの魅力と、才気溢れるユーモア、痛烈な批判精神が奇跡的な融合を果たしたシリーズ屈指の傑作。

■ジル・マゴーン/中村有希訳
『騙し絵の檻【新装版】』【ベスト1ミステリ・セレクション】※3月刊
無実だとの叫びもむなしく、ビル・ホルトは冷酷な殺人犯として投獄された。それから十六年後、仮釈放された彼は真犯人を捜し始める。自分を罠に嵌めたのは、誰だったのか? 次々に浮かび上がる疑惑と仮説。そして、終幕で明らかにされる驚愕の真相! 識者により、2000年代の10年間に翻訳された海外本格ミステリの頂点に選ばれた、犯人当ての大傑作。


【文芸特等席】

■マイケル・オンダーチェ/土屋政雄訳イギリス人の患者
『イギリス人の患者』(創元文芸文庫)※1月刊
王に名を消し去られた風、部族ひとつを溺れさせる砂の海、泳ぐ人々が壁一面に描かれた泉の洞窟――妖しくも美しい情景が、男の記憶には眠っていた。砂漠に墜落し燃え上がる飛行機から生き延びた彼は、顔も名前も失い、かつて野戦病院だった屋敷で暮らす。世界からとり残されたこの場所に、一人で男を看護する女性、両手の親指を失った泥棒、爆弾処理班の工兵と、戦争の癒えぬ傷を抱えた人々が留まり、男の物語に耳を傾ける。それぞれの哀しみは過去と現在を行き来し、記憶と交わりながら、豊饒な小説世界を展開していく。英国最高の文学賞、ブッカー賞五十年の歴史の頂点に輝く長編。

■B・S・ジョンソン/青木純子訳
『老人ホーム 一夜の出来事』(創元ライブラリ)※2月刊
ある老人施設の一夜。八人の老人と、一人の寮母。いつもどおりの夕食と作業とお楽しみ会。老人たちは体力も知力もまちまちで、歩けない人、何もわからなくなっている人もいる。それぞれが、自分だけの世界にひきこもり、過去を思い現在を思う(あるいは何も思わず?)。それでも一夜の時は流れ、八人の行動と思考はシンクロしてはまた離れてゆく。独立した九章が同時に進行するスタイルで老いの真実、人間の真実を滑稽に、残酷に、浮き彫りにする極めて実験的小説。ついに文庫化!

■B・S・ジョンソン/若島正訳
『不運な奴ら』(単行本)
「ストーリーは小説の第一条件ではない。人生はストーリーを語らない。……人生は混沌として、流動的なもので、乱雑なままに終わる」というのがジョンソンの主張である。主人公のサッカー記者が、かつて親友夫妻と住んでいた、ある町に仕事で派遣された。そこで彼は病で29歳にして死んだ友人の記憶を再編成しようと試み、そして再びもといたところに帰っていくという物語。彼の現在と過去は対等に現前する。その同時性を表わすために、ジョンソンは全体を27の部分にわけて、「最初」と「最後」という二部以外はアトランダムに箱に入れて過去と現在の混じり合う混淆と欠落を表現した。実験的手法が人生を鮮やかに描き出す。


■ケヴィン・ブロックマイヤー/市田泉訳
『いろいろな幽霊』(単行本)
失恋した瞬間を永遠に繰り返す幽霊、雨となって降り注ぐ幽霊、方向音痴の幽霊、瞬間転送装置が生み出す幽霊……イタロ・カルヴィーノ短編賞受賞作家が贈る、時に切なく、時におかしく、そして時にはちょっと怖い幽霊たちの物語を100編収めた不思議な短編集。


シヴォーン・ダウド/宮坂宏美訳ASwiftPureCry
A Swift Pure Cry(単行本)
1984年の春。アイルランド南部の小さな村で、15歳の少女シェルは鬱屈した毎日を送っていた。母親を病気で亡くして以来、酒浸りの父親と、反抗的な弟、幼い妹の世話に明け暮れていたのだ。そんなとき、幼なじみの少年に誘われ、深い関係になってしまう。やがて妊娠に気づき、だれにも相談できずに悩みつづけて……。「助けて」と声をあげることができなかったひとりの少女の孤独、絶望、そして成長――。カーネギー賞、ガーディアン賞、ドイツ児童文学賞など、数々の賞にノミネートされ、ブランフォード・ボウズ賞とアイリーシュ・ディロン賞に輝いた、シヴォーン・ダウドの伝説的なデビュー作!

■ヤン・ポトツキ/工藤幸雄訳
『サラゴサ手稿』(創元ライブラリ)
ポーランドの大貴族の生まれであるポトツキは、旅行家、歴史家などとして知られる人物だが、その彼が生み出した物語が『サラゴサ手稿』です。
 本書をめぐる物語は『手稿』そのものに劣らず、多くの問題を抱えこんでいる。『手稿』の入り組んだ話の筋があくまで架空なのにひきかえ、作者の生い立ちと生涯、加えて『サラゴサ手稿』の出版とそのその後の経緯は、現実であると断るまでもない。だが、この書の架空の『手稿』の発見者が架空のフラランス軍士官であり、あくまでも物語の執筆者と異なる。にもかかわらず、いつしか読者は実在の作者と架空の人物群とを混同しがちである。それに似て、実在の『サラゴサ手稿』の辿った運命もまた『サラゴサ手稿』のくりひろげる数奇な運命同様に、いくつかの別物語をつづり出すかのようだ。
これは、生前工藤幸雄先生が本書について書き残された文章の一部です。
というわけで様々な異本のある『サラゴサ手稿』の、2008年に出た決定版とも言われる版以前のバージョンに、ポーランド語版を参照しての翻訳がこのライブラリ版となります。何が真実で、何が架空の物語なのか……。『サラゴサ手稿』の謎にみちた存在の一端を本書からも味わっていただければ幸いです。

■E・T・A・ホフマン/酒寄進一訳
『牡猫ムルの人生観』(単行本)
ホフマンによる、奇妙な二重構造の小説。共にローレンス・スターンの『トリストラム・シャンディの生活(生涯)と意見』の影響を受けた夏目漱石とホフマン。漱石は『吾輩は猫である』を書き、ホフマンは『牡猫ムルの人生観』を書いたと言われるが、漱石は『ムル』を読んで『吾輩』を書いたといわれるのをいやがったという。真相はいかに? それはさておき、『ムル』は祖先に『長靴をはいた猫』を持ち、川に捨てられた子猫時代にある魔術師に助けられ、主人の机の上に座り、彼が音読する本を聴き、文字を目で追い、言葉(ドイツ語)を習得。羽根ペンを使って自伝を書くようになる。近くにあった『クライスラー伝』という本のページを破っては、吸い取り紙として挟み込んでいたため、ホフマンが友人に勧められて、本にすべく出版社に渡して、出来上がってみると、ムルの自伝は『クライスラー伝』とのつぎはぎの、前代未聞の二重構造の作品になっていた! しかも『クライスラー伝』の部分は犯罪小説仕立て、という奇怪な本なのである。実は未完。

■アリス・マンロー/小竹由美子訳
『小説のように』(創元文芸文庫)
その音楽教師の女性は、子連れの若い女性に夫を奪われながらもプロの音楽家として大成し、新たな家庭を築いていた。老境にさしかかった彼女の前に一冊の小説が現れる。そこでは彼女自身の人生が、ある少女の目を通じて語られていた――表題作「小説のように」ほか、流れゆく人生に訪れる、震えるほどの情動の瞬間を描いた10の物語。ノーベル文学賞、国際ブッカー賞受賞の「短編小説の女王」がその才を遺憾なく発揮した、現代文学の最高峰を示す短編集。


【必読ノンフィクション・評論その他】

■ロス・キング/杉田七重訳TheBookseller
The Bookseller of Florence: Vespasiano da Bisticci and the Manuscripts that Illuminated the Renaissance(単行本)
フィレンツェのルネッサンスというと、まず想起されるのは美しいフレスコ画や優美な建築だ。それらは素晴らしい画家や建築家の手によるものであるが、同じほど重要な存在――写本ハンター、写字生、学者、そして書籍商を忘れてはならない。彼らこそが、古代の知恵を発見して人々に広め、新しい世界へといざなったのだ。そして、その活動の中心に、ヴェスパシアーノ・ダ・ビスティッチという傑出した書籍商がいた――。写本から印刷へと本のかたちが移り行く時代と、長く忘れられたルネッサンス期の非凡な書籍商の姿を描く、すべての読書家に贈る傑作ノンフィクション!

■大矢博子クリスティを読む
『クリスティを読む! ミステリの女王の名作入門講座』(キイ・ライブラリー/単行本)※1月刊
数々の名作が世界中で読まれ、翻訳され、映像化・舞台化され、没後48年を経ても変わらぬ人気を保ち続ける――まさしくミステリの女王、アガサ・クリスティ。大人気カルチャー講座「アガサ・クリスティを読む」の講師を長年務める書評家が、〈探偵〉〈舞台と時代〉〈人間関係〉そして〈騙しのテクニック〉に焦点を当て、各章でテーマに添ったおすすめ作品を紹介しながら魅力を丁寧に語る。最終章〈読者をいかにミスリードするか〉では、女王の驚くべきテクニックをじっくり解説。クリスティのすごさを実感できる、入門に最適な一冊!

■北上次郎
『冒険小説論 近代ヒーロー像100年の変遷』※2月刊
スティーヴンスン『宝島』から始まり『水滸伝』を経由して滝沢馬琴『南総里見八犬伝』、そして戦後――英雄なき時代に繚乱する冒険小説のオデッセイアへ。洋の東西さえ越えて、著者は膨大な資料と文献を文字通り縦横無尽に渉猟する。ただ一心に、面白い小説を追い求めて。百年の文学史のなかで切り開かれた豊饒なる小説世界、その山嶺を闊達な筆致で踏破する一大評論。大衆文学研究に確かな里程標を刻み、第77回日本推理作家協会賞を受賞した名著。


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(2024年1月1日)