サスペンス作家が殺人を邪魔するには

みなさんこんにちは。翻訳班Sです。いま「ほんやくはん」とキーボードを打ったら「翻訳犯」と変換されて笑ってしまいました。無理やり翻訳をして現場(?)から去って行くのでしょうか(笑)。

今回ご紹介するのは、エル・コシマノ『サスペンス作家が殺人を邪魔するには』(辻早苗訳、創元推理文庫)です! 昨年刊行した『サスペンス作家が人をうまく殺すには』に続くシリーズ第2弾となります。

シリーズの主人公は、ロマンティック・サスペンス作家のフィンレイ。作家として〆切に追われながら、4歳と2歳の子どもたちの子育てにも奮闘するシングルマザーです。1作目の『サスペンス作家が人をうまく殺すには』で書き始めたシリーズが好調で作家の仕事が軌道に乗り始めた矢先、とんでもない事実が判明! なんと元夫のスティーヴンが何者かに命を狙われているらしいのです。

2作目の『サスペンス作家が殺人を邪魔するには』のあらすじはこちらです。

オンラインの掲示板に、元夫の殺害依頼が投稿された! しかも、プロの殺人請負人らしき人物が依頼に食いつこうとしている。サスペンス作家のフィンレイは、子育てに奮闘しつつ原稿の執筆に取り組んでいたが、この件が気になって仕事が手につかない。同居人のヴェロと一緒に、元夫の殺害を阻止しようと奔走するが……。極上の巻きこまれ型ジェットコースター・サスペンス第2弾!

元夫のスティーヴンとは、彼の浮気が原因で離婚しているものの、大事な子どもたちの父親を殺させるわけにはいかない! そんなわけで、フィンレイは子どもたちのベビーシッターで同居人でもある女性ヴェロと、元夫の殺害を阻止するべく奔走します。

1作目は、レストランで執筆中のサスペンスについて打ち合わせをしていたら、会話の内容からなんと殺し屋に間違えられて殺人を依頼されるという驚きの展開でしたが、この2作目も負けていません! 作家としてさまざまな知識はあるものの、オンラインの掲示板で殺人依頼をした人物をどうやって突き止めればいいのか? 実際に危険な目に遭いはじめたスティーヴンに気づかれないようにするには? そして滞っている執筆はうまく進むのか? さまざまな困難がフィンレイに襲いかかるうえに、中盤でとんでもない出来事が!! ほんとうにもう、先が読めなさすぎて最高に面白い!! まさに一度乗ったら止まらないジェットコースター系サスペンスです。

とにかく災難な目にあうフィンレイですが、心強い相棒がいます。それが同居人のヴェロです。
ヴェロは1作目から登場しているベビーシッターで、現在はフィンレイの家に同居して子どもたちの面倒をみてくれています。コミュニティ・カレッジの学生らしいのですが、今回はそんな彼女が抱えている問題の一端が明らかに……。襲いかかるさまざまな事件や出来事を通して、フィンレイとヴェロの絆が強くなっていくのが、本シリーズの魅力でもあります。

フィンレイとヴェロ、相棒感ありつつ、共犯者感もあるのがいいんですよね~! 『サスペンス作家が人をうまく殺すには』の冒頭にこんな献辞があります。

アシュリーとメガンへ
あなたたちなら、どちらとでも一緒に死体を埋める覚悟があるわ。

著者のコシマノさんが親友たちにと向けた言葉でしょうか。こういう、一緒に死体を埋められる関係(?)を書きたくて、著者はこのシリーズを執筆しているのかなと思わされる、シスターフッドあふれる物語でもあります。
今回はその点も意識して、イラストレーターのオカダシゲコさんにフィンレイとヴェロのふたりを描いていただきました。スタイリッシュなふたりが何かを監視している(!)お洒落なイラストで嬉しいです! デザインは藤田知子さんです。背景の黄色が特に魅力的で、こちらのデザイン案が送られてきたとき、「ぜひこれでお願いします!!」と即決しました。1巻目に引き続き、おふたりの力で素敵なカバーに仕上げていただき、とても嬉しいです。

そして若林踏さんによる解説にもご注目ください! 「懐かしさと新しさが同居したミステリ小説」として、面白さをわかりやすく語ってくださっています。

『サスペンス作家が殺人を邪魔するには』は10月31日ごろ発売です! どうぞよろしくお願いいたします。

(東京創元社S)