孤児の少女ル・フェは、魔導士の訓練校であるネレイス城で働くことになった。少数民族セルディア人のル・フェは、魔導の才はありながら虐げられてきた過去ゆえに口をきくことができない。
そんなル・フェだったが、ネレイス城で出会った同じ使用人らしい少年ローレンや、城で学ぶ魔導士の卵セレスなど、彼女を気にかけ、彼女の価値を認めてくれる人々と出会い、少しずつだが心をひらいていく。一方ネレイス城で学ぶ魔導士の卵たちの間では、城にまつわる不気味な噂が囁かれていた。丁度百年前、この国で国王の後継者争いが勃発した。王子のひとりが王位継承者である第一王子に反旗を翻して兵を挙げたものの、反乱を察知した第一王子に逆に攻められ、最後に居城であるネレイス城を包囲され、臣下ともども討たれたというのだ。
年月を経て、ネレイス城は魔導士の訓練校になったが、いまだに訓練生のあいだでは幽霊を見たというもの、夜中にどこからともなく泣き声や叫び声を聞いたというものがあとをたたない。ましてや、今年は事件があってから丁度百年目、訓練生だけではなく城の近くの村人までもが落ち着かず、何事かを怖れている様子だった。
そんななか、下働きとして働き始めたル・フェは、この城はなにか変だと感じ始めていた。虐げられ続けたために自分に自信を失ってしまったル・フェ、聡明で不正を見逃せず、妥協を赦さないせいで孤立してしまう訓練生の少女セレス、臆病で事なかれ主義の自分に嫌悪を抱く訓練生の少年ギイ。ネレイス城で出会った3人が呪われた城の秘密に挑む!
『魔導の系譜』の著者が若き魔導士たちの友情と葛藤を描く、感動のファンタジイ。
カバーイラスト、登場人物紹介、本文の挿絵は、マグコミで好評配信中のコミック版『魔導の系譜』のイヌヅカヒロ先生。
巻末のおまけ4コマ漫画もとても可愛いのです。