いよいよ来週6月30日発売!『まるで名探偵のような 雑居ビルの事件ノート』の
著者・久青玩具堂(ひさお・がんぐどう)さんのインタビューを公開します!
――まず、簡単な自己紹介をお願いいたします。
久青玩具堂(ひさお・がんぐどう)と申します。ライトノベルのレーベル、角川スニーカー文庫やMF文庫Jでは「玩具堂」の名義で書かせていただいております。
――玩具堂さんは、2010年角川スニーカー大賞〈大賞〉受賞作『子ひつじは迷わない』(「なるたま~あるいは学園パズル」改題)でデビューされました。いつ頃から作家を目指していましたか?
まとまった文章を書き始めたのは大学生の頃だったと思います。その後も作家としてのキャリアはスロウペースで、スニーカー大賞に応募してデビューしたのも社会人になって何年か経ったあとでした。
デビュー作の『子ひつじは迷わない』こそミステリ寄りの内容でしたが、ミステリを専門的に読み書きしてきたわけではないので、今になって東京創元社さんから声をかけていただいたのには驚きました。
――今回、初の単行本での刊行、また名義も変わりました。
何か玩具堂さんの意識の変化などありましたか?
何か玩具堂さんの意識の変化などありましたか?
今回は〈ミステリ・フロンティア〉という推理小説のレーベルでの刊行ということで、想定する読者層をライトノベルの時とは変えていますが、逆に言えばそれくらいです。
創元推理文庫には日頃から読者として触れさせてもらっていますから、文庫化した時そこに並んでも違和感が出ないようチューンしたつもりです。もちろん手探りで書き上げた面もあるので、読者の皆様の感想を楽しみ半分、不安半分でお待ちしております。
――『まるで名探偵のような 雑居ビルの事件ノート』のあらすじを教えてください。
高校生男子の主人公が、たまたま立ち寄った雑居ビルで個性的な住人と奇妙な事件に行き合って、謎解きに挑みます。
形式としては、アイザック・アシモフ『黒後家蜘蛛の会』のように、場に持ち込まれた問題を複数人の回答者が考察したあとに探偵役が結論を出すタイプです。ただ、今作では謎解きのあとに後半パートがあり、事件や登場人物の精神的なわだかまりの解決編が描かれます。
――「雑居ビル」を題材にしたきっかけは?
まず連作短編を書くことを決め、その舞台として雑居ビルを選定しました。
複数の業種が店舗を構え、老若男女の客が出入りするビルなら種々様々な問題を無理なく「持ち込める」かなと。実際、自由度の高い題材選びができました。
ちなみにビルの名前が「ハニコム小室」なのですが、「ハニ"カ"ム」ではなく「ハニ"コ"ム」なのは、後者の方が昭和に建ったビルっぽい表記と思ったからです。郊外の駅前にあるような、色褪せたビルの話なんです。
――本作には5編の短編が収録されています。それぞれどのように謎を考えていきましたか?
第1話の「名刺は語らない」は、最初のエピソードということであいさつ代わりの「名刺」をテーマにした謎解きを考えました。
第2話の「日記の読み方」は、家出した大学生の行方をブログのわずかな記述から突き止めようとする話です。いろいろな種類の文書の読解問題を考えるのが好きで、これもそのバリエーションです。「書くこと」の意味について考える内容にもなっています。
第3話の「不死の一分」は、古文書に記されたとある剣豪の秘剣の正体を見破ろうとする、というあらすじです。5話もあると唐突に時代劇を挿れたくなりますよね(?)。
第4話は「パック寿司とハムレット」。隣人の不審な言動に戸惑う女性を描いた話です。謎解きについては思いついたきっかけがネタバレになってしまうのですが、3話と逆にひどく現代的な題材を扱っており、一冊としてのメリハリになればと配しました。
第5話の「名探偵の死角」は、1~4話の要素を少しずつ合わせながら連作の締めくくりになる話としてデザインしました。
――注目してほしい箇所がありましたら、ぜひ教えてください。
探偵役のヒロインである芹(せり)は無口で無愛想、極端に理に落ちるところのある少女です。名探偵の例に漏れずだいぶ偏屈なキャラクターなのですが、読み終わった時に愛着を感じていただければうれしいです。
――読者に向けて一言お願いいたします。
東京創元社さんでは初めて書かせていただくということで、自分の作風が幅広く乗る構成を目指しました。
各話、ほろ苦い要素もありつつ陰湿にならないカラッとした短編で、気軽に読み進めていただけると思います。よろしくお願いします。
――ありがとうございました。第一話「名刺は語らない」は、発売中の『紙魚の手帖vol.11』でも先にお読みいただけます。謎解きの面白さを堪能できる連作短編集『まるで名探偵のような 雑居ビルの事件ノート』、ぜひお楽しみに!
――ありがとうございました。第一話「名刺は語らない」は、発売中の『紙魚の手帖vol.11』でも先にお読みいただけます。謎解きの面白さを堪能できる連作短編集『まるで名探偵のような 雑居ビルの事件ノート』、ぜひお楽しみに!
■久青玩具堂 (ひさお・がんぐどう)
千葉県出身、在住。2010年、玩具堂名義の「なるたま~あるいは学園パズル」で第15回スニーカー大賞〈大賞〉を受賞。受賞作を改題したデビュー作『子ひつじは迷わない』がシリーズ化され、人気を博す。他の著作に『漂流王国』『探偵くんと鋭い山田さん』などがある。『まるで名探偵のような 雑居ビルの事件ノート』が久青玩具堂名義での初の著書。
千葉県出身、在住。2010年、玩具堂名義の「なるたま~あるいは学園パズル」で第15回スニーカー大賞〈大賞〉を受賞。受賞作を改題したデビュー作『子ひつじは迷わない』がシリーズ化され、人気を博す。他の著作に『漂流王国』『探偵くんと鋭い山田さん』などがある。『まるで名探偵のような 雑居ビルの事件ノート』が久青玩具堂名義での初の著書。