先日、『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』(文春文庫)の韓国での映像化と、ドラマのダブル映像化が決定した、注目の著者・丸山正樹さんの新刊『刑事何森 逃走の行先』が登場です。〈デフ・ヴォイス〉シリーズ随一の人気キャラクター・何森稔(いずもり・みのる)を主人公とした警察ミステリの第二弾です。

 埼玉県警の何森稔刑事は、優秀ながらもとある事情で、県内各地の署をたらい回しにされている。シリーズ第一弾の『刑事何森 孤高の相貌』の第3話「ロスト」と同様に、荒井みゆきとコンビを組んだ三つの事件が本書で描かれます。
 ファンの方はおなじみかとは存じますが、この荒井みゆきは、〈デフ・ヴォイス〉シリーズの主人公・荒井尚人の奥さんであります(荒井も元埼玉県警の事務職員)。時系列的には、〈デフ・ヴォイス〉シリーズの『わたしのいないテーブルで』とほぼ同じくらいとなります。母親として二人の娘のことで思い悩む姿とは異なり、刑事として事件に向かう描写に、注目していただけたら幸いです。

 今作は、非常にタイムリーな話題を盛り込んだ、硬派なミステリに仕上がっています。
 ベトナム人技能実習生、女性の貧困、入管の問題……。特に入管の問題は、つい先日入管法改正案が採決され、大きな話題を呼びました。ある意味、現代日本の病巣ともいうべき、“社会的弱者”が犯した罪に、定年間近の何森は思い悩みます。

 さてドラマ版〈デフ・ヴォイス〉のキャストは6月20日現在のところ、主人公がアナウンスされたのみ。何森は、みゆきはいったいどなたが演じるのか? まだまだ話題はつきません。年末の放送まで、じっくりと〈デフ・ヴォイス〉ワールドに浸ってください。