東京創元社初となる長編ホラー小説を募る公募型新人賞「創元ホラー長編賞」、おかげさまで続々投稿いただいております。本賞は、総合文芸誌「紙魚の手帖」創刊と弊社創業70周年を記念する、一回限りの新人賞です。
東京創元社は今までに、「鮎川哲也賞」「ミステリーズ!新人賞(二〇二三年より「創元ミステリ短編賞」に改称)」、「創元SF短編賞」「創元ファンタジイ新人賞」など、複数の新人賞より斯界の人材を輩出して参りました。ホラーにおいても同じように、ジャンルの力となる新たな才能の発掘に尽力いたします。今回の記事では、そもそもなぜホラー小説の新人賞を創設したのか? という経緯を書き記そうと思います。
・最近、国内作品で気になるホラー小説が多い、という感想が編集部で交される。
・この流れでホラーの新人賞を主催したらどんな作品が投稿されるか楽しみ、という意見が出る。
・いわゆる実話怪談は一大ジャンルとなって、現在も広く読者を獲得している。フィクションのホラーもさらに読者を開拓できる余地があると考えられる。
・東京創元社では、いままでホラーに特化した賞は設立されたことがないが、逆になんでなかったのか不思議である。
・創立七十周年も近いし、この機会に一回やってみても良いのでは、という声が上がる。
・予算下りるかなあ。
・あ、下りた。
・そういえば、最初にだれが新人賞をやろうって言ったんだっけ?
・私じゃないよ。
・僕でもありません。
・……じゃあだれが?
私はこれを、イタズラな神様がくれた素敵なチャンス、とポジティブに捉えてます。投稿をお考えの方もあまり肩肘張らず、神様のお茶目に乗っかっていただければと願っております。
これだけだとあまりにもあれなので、もう少し真面目な話を。
ホラーというジャンルは、怪談も含め、多彩な書き方が可能なジャンルです。とりわけ、ミステリやSFやファンタジイなど、ほかのジャンルと大きく異なるのは、ひとえに「恐怖」という「感情」に基づいている点かと思います。
感情に働きかけるのに、必要なものはなんでしょうか? 技巧はもちろん、題材を選ぶセンス、読者の共感を誘うキャラクター……様々な要素が思い浮かびますが、恐怖の根源を「信じる」、まるで目の前にそれがあるかのように感じ取る、そういう心のありようではないかと思います。
もちろん、全く恐怖を感じないという立ち位置から、万人を震え上がらせる小説を書くことも不可能ではないと考えます。ていうかちょっと読んでみたい。
つまりは、制約を設けず自由に書いてください、というのが結論です。応募要項の範囲内で……。
さて、初めて小説を投稿する人でも安心して参加いただけるよう、投稿時に気をつけるべきことを以下にまとめました。
※切り抜いてパソコンの前に貼りましょう※
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・応募規定をよく読みましょう!
ごくごく基本的なことです。しかし基本的なことだからこそ、何度でもお伝えしたい!
規定に違反してしまっていると判断されると、残念ながら選考の俎上に上がることすらかないません。「規定枚数を満たしているか/超過していないか」「プロフィールに欠落がないか」など、指さし確認した上で、投稿いただけると幸いです。
・そのネタ大丈夫? 「ネタ被り」に気をつけましょう!
世の中には「ネタ被り」という不幸な現象が存在します。
今までに読んだ本や映画の影響から書き始めること自体は自然なことですが、「そっくりそのまま」使ってしまうのはよろしくありません。
具体的な対策としては「既存の文章をそのまま自作に取り込んでいないかを意識する」「アイデアを無意識的に好きな作品から流用していないか、書き上がった後熟読して確認する」ことを推奨いたします。
・誤字と脱字は天敵です!
新人賞の下読みに参加していると、この原稿面白ーい。でも誤字脱字が多くて読みにくーい……ということが時折あります。
「神は細部に宿る」という格言がありますが、隅々まで注意を払って書かれている文章は、読む人に好感を与えます。ぜひ、渾身の原稿をできる限り最良の形でお送りください。
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選考委員には、古今東西の怪談文学やホラー小説に造詣の深い東雅夫先生と、実作者として創作に通じ、かつ投稿者にとって目標となるであろう澤村伊智先生にお願い出来れば理想的と考えました。打診の際には、お二人とも大変ご多忙にも関わらず、快くお引き受け下さいました。末筆になりますが、改めて東先生と澤村先生に深謝いたします。
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編集部 F