たかが殺人じゃないか

 2020年の年末ミステリベストを席巻した、『たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説』が、いよいよ文庫刊行です。
 昨年、シリーズ第三弾の『馬鹿みたいな話! 昭和36年のミステリ』を刊行し、シリーズ三部作が完結したばかり。
『たかが殺人じゃないか』はシリーズ第二弾で、戦後すぐの昭和24年、高校3年生の男女が夏休み中に遭遇した二つの殺人事件を描いた長編ミステリです。学制改革のあおりを受けて、主人公たちの世代は旧制中学(5年制のため17歳で卒業)から、新制高校の3年生に進学します。たった1年だけの高校生活、しかも初めての男女共学にとまどう学生たちを、みずみずしく描きます。今作の紹介で何度か記していますが、主人公たちはまさに著者である、辻真先さんご自身がモデルです。著者自身が経験したことに裏付けされた高校生活を横軸に、不可解な殺人事件を縦軸に話は進んでいきます。
 戦後すぐという日本の混乱期に起こった事件ということで、この時代を知らない多くの方々に読んでいただきたい一冊です。もちろん、シリーズ第一作を読んでいなくとも問題はございませんので、ご安心を。

 あらすじは以下です。

昭和24年、ミステリ作家志望の風早勝利は名古屋市内の新制高校3年生になった。学制改革による、1年だけの男女共学の高校生活。そんな夏休みに、勝利は湯谷温泉での密室殺人と、嵐の夜に廃墟で起きた首切り殺人に巻き込まれる! 自ら体験した戦後の混乱期と青春の日々を、著者がみずみずしく描き出す。『深夜の博覧会』に続く、“昭和ミステリ”シリーズ第2弾、待望の文庫化。

 そして、来月4月末には辻さんのミステリデビュー作『仮題・中学殺人事件』の新装版をお届けします。1972年に刊行(50年前!)された伝説的な作品ですが、この当時から辻真先らしさ全開です! ご期待下さいませ。