緻密な伏線と論理展開の妙、「亜愛一郎」「曾我佳城」「ヨギ ガンジー」などの愛すべきキャラクターなどで、読者を魅了した泡坂妻夫。
2023年は、そんな「ミステリ界の魔術師」と称された偉大なミステリ作家の生誕90周年にあたります。その節目の年を記念して、創元推理文庫から隠れた名作を復刊します!第1弾は、名品『煙の殺意』に匹敵する、どんでん返しを数多く収録した傑作短編集『ダイヤル7をまわす時』です。
暴力団・北浦組と大門組は、事あるごとにいがみ合っていた。そんなある日、北浦組の組長が殺害される。鑑識の結果、殺害後の現場で犯人が電話を使った痕跡が見つかった。犯人はなぜすぐに立ち去らなかったのか、どこに電話を掛けたのか? ――巻頭に収録された、あっと驚く犯人当て「ダイヤル7」を読めば、たちまち泡坂マジックの虜になることは間違いありません。
また、
なぜ犯人は死体の身体中に、トランプのカードを仕込んだのか? 「芍薬(しゃくやく)に孔雀(くじゃく)」
夫の殺害容疑をかけられた妻の真意とは?「可愛い動機」
なぜ友人が憧れるのは、名前に「広重」という字が入る相手ばかりなのか?「広重好み」
など、驚きに満ちた珠玉の全7編を収録しています。
どの作品も、さりげない伏線と意外な真相に惹きつけられます。奇術師としても名高い著者が駆使した、騙しのテクニックがちりばめられているので、ミステリの楽しさを存分に味わえます。
本書の解説は、デビュー時から泡坂妻夫への敬愛を公言している櫻田智也さんが担当。帯に引用した、「泡坂ワールドのすべてを愉しみ、愛することができたのは、この本に出会えたからだ」という言葉をはじめ、泡坂ミステリの魅力について大いに語っていただきました。
そして、生誕90年記念出版として、第2弾『折鶴』(第16回泉鏡花文学賞受賞作)を5月に、第3弾『蔭桔梗』(第103回直木賞受賞作)を8月に刊行を予定しています。決して色褪せない鮮やかな魅力を放つ魔術的ミステリを、どうぞお楽しみください!