昨年12月29日、「サッカーの王様」「サッカーの神様」と呼ばれたペレが亡くなりました。享年82。12月に開催されていたワールドカップ・カタール大会を見届けての旅立ちでした。12月10日の準々決勝のクロアチア戦でネイマールが得点し、ブラジル代表歴代1位タイ(77得点)となったときは、ペレの記録に並んだと世界的なニュースになりました(ちなみにペレは91試合77得点、ネイマールは124試合77得点)。細かな偉業に関しては、サッカー専門誌やサイトの追悼記事を参考にしていただきたいですが、ペレによって、背番号「10」がサッカーにおけるエースナンバーになり、あまりにペレを止めるためのラフプレーが多くなったことで「イエローカード(警告)/レッドカード(退場)」がルールとして登場するようになったと言われるほどの多大な影響があったプレイヤーです。

私の世代ですと、うっすらと釜本邦茂さんの引退試合(1984年)のニュースを憶えているくらいです。いま記録映像などを観ると、画期的で魔術的なプレーとそれを支える強靱なフィジカル、豹のような柔軟性にも優れた選手だったことが分かります。技術や環境面などの進んだ現在でも、きっと「王様らしい」悠々としたプレーで観客を喜ばせたに違いありません。謹んでご冥福をお祈りいたします。

さて、なぜ東京創元社がペレの追悼を? 
実は、ペレ著『ワールドカップ殺人事件』という作品があるからです(残念ながら現在は品切れ中)。Jリーグも始まる以前の1990年、ワールドカップ・イタリア大会の直後に創元推理文庫で刊行されました。サッカーの世界的な普及に尽力してきたペレが、なんとミステリを書いていたなんて、と驚かれる方も多いはず。

ワールドカップ殺人事件

弊社HPの紹介では以下のようになっています。

世界最大のサッカー大会ワールドカップ。開催国のアメリカは大方の予想を覆し決勝にまで進出した。その折り、プロ・ティームのオーナーが競技場内で殺される。死体の頭部にはスパイクの跡。スポーツ記者マークは恋人を嫌疑から救うため、真犯人究明に乗りだす。〈王様〉ペレがサッカーへの情熱を謳いあげたスポーツミステリ。

サッカーの知識が進んだいまだからこそ、興味をそそられるのではないでしょうか? 次の2026年大会は、『ワールドカップ殺人事件』の舞台ともなったアメリカを含む、北中米大会です。
また、毎年恒例の「復刊フェア」の銘柄のアンケートを募集しています。ぜひ応募もお願いいたします。


――なんて記事を書いていたところ、1月26日にTBSラジオ「たまむすび」にて、『ワールドカップ殺人事件』のご紹介がありました。