本書『グッゲンハイムの謎』は、2022年の7月に刊行したシヴォーン・ダウド著『ロンドン・アイの謎』の続編です。前作は12歳の少年の謎解きと成長を描いたミステリとして、大人から子供までたくさんの方に読んでいただきました。
そして『ロンドン・アイの謎』は、さまざまな年末ミステリ・ランキングで10位以内にランクインしました!
第4位「2023本格ミステリ・ベスト10」
第7位「このミステリーがすごい!2023年版」
第9位「週刊文春2022ミステリーベスト10」
ミステリとしても児童書としてもたくさんの方に楽しんでいただきましたようで、嬉しいです!! この記事では、続編の『グッゲンハイムの謎』についてご紹介いたします。
まずはあらすじを……。
夏休みを迎えた12歳のテッドは、母と姉といっしょに、グロリアおばさんといとこのサリムが住むニューヨークを訪れた。おばさんはグッゲンハイム美術館の主任学芸員で、休館日に特別に入館させてくれた。ところが改装中の館内を見学していると、突然、何かのきついにおいと、白くて濃い煙が。火事だ! テッドたちは、大急ぎで美術館の外に避難した。だが火事は見せかけで、館内の全員が外に出た隙に、カンディンスキーの名画〈黒い正方形のなかに〉が盗まれていたのだ。しかも、おばさんが犯人だと疑われて逮捕されてしまう。なんとしても絵を取りもどして、おばさんの無実を証明しなければ。「ほかの人とはちがう」不思議な頭脳を持つテッドは、絵の行方と真犯人を探すため謎解きに挑む。『ロンドン・アイの謎』につづく爽快なミステリ長編!
『グッゲンハイムの謎』は、『お嬢さま学校にはふさわしくない死体』のミステリ作家、ロビン・スティーヴンスが執筆したものになります。シヴォーン・ダウドは残念ながら、2007年の『ロンドン・アイの謎』刊行後すぐに、The Guggenheim Mysteryというタイトルを遺して病気で亡くなってしまいました。そして2015年に、シヴォーン・ダウド財団からスティーヴンスに続編の執筆が依頼され、2017年にイギリスで刊行されました。
スティーヴンスは『ロンドン・アイの謎』にも序文を寄せており、ダウドの大ファンだと公言しています。『グッゲンハイムの謎』は、別の作家が書いたとは思えないほど、ぴったりの登場人物の造形や文体、そして謎解きの魅力が感じられる作品になっています。
本書は、夏休みを利用して主人公のテッドがグロリアおばさんといとこのサリムが住むニューヨークを訪れるところからはじまります。そして計り知れない価値を持つ名画が何者かに盗まれ、グロリアおばさんが疑われて逮捕されてしまうという衝撃の展開に。おばさんを刑務所に入れないため、テッドと姉のカット、そしてサリムは力を合わせて謎を解決しようとニューヨークを駆け巡ります。
前作でもそうでしたが、本書でもテッドの観察力と賢さにあっ!と驚かされます。他人の気持ちを理解するのは苦手でも、事実や物事の仕組みについて考えるのは得意で、気象学の知識は専門家並み。「ほかの人とはちがう」不思議な頭脳を持つ少年テッドの謎解きを存分に味わうことができます。テッドが語る世界はこんなに面白いのかと、新しい視点を得ることができる素晴らしい作品です!
『ロンドン・アイの謎』と同様に、本書も子供さんに楽しく読んでもらいたいと思い、中学生以上で習う漢字にはルビを振っています。越前敏弥先生のすてきな訳文もとてもわかりやすく、読書が好きな子なら小学校低学年からでも読めるのではないでしょうか。わたしも友人の息子さんにプレゼントしました。こういう作品を読んで、ミステリを好きになってもらいたい、謎解きの面白さにひたってもらいたいと思いながら編集作業を進めました。
『ロンドン・アイの謎』と同様に、装画は船津真琴さん、装幀は中村聡さんが手がけてくださいました。2冊並ぶと壮観です! 巨大な観覧車ロンドン・アイと、面白いかたちのグッゲンハイム美術館。ロンドンとニューヨークの違いもこの2冊の大きな魅力となっています。ぜひお手に取ってご覧いただけますと幸いです。
【前作『ロンドン・アイの謎』紹介記事はこちら!】