2023ミステリランキング03

2022年も残り1か月を切り、毎年恒例の年末ミステリランキング四つがすべて出そろいました。
おかげさまで、今年も東京創元社の刊行物に高評価をいただき、四つのランキングすべてに多数の作品がランクインしました。
それら読みごたえ抜群のタイトルを、一挙にご紹介いたします。
まだ読んでいない作品、気になった作品があれば、ぜひお手に取ってみてください。

※海外、国内ともいずれかのランキングで20位以内に入賞した作品を取り上げています。


■海外ミステリ

殺しへのライン ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ (創元推理文庫)

『殺しへのライン』アンソニー・ホロヴィッツ/山田蘭訳(創元推理文庫)
第2位 このミステリーがすごい!2023年版
第2位 週刊文春2022ミステリーベスト10
第2位 2023 本格ミステリ・ベスト10
第2位 ミステリが読みたい!2023年版
『メインテーマは殺人』の刊行まであと3ヵ月。プロモーションとして、探偵ダニエル・ホーソーンとわたし、作家のアンソニー・ホロヴィッツは、初めて開催される文芸フェスに参加するため、チャンネル諸島のオルダニー島を訪れた。どことなく不穏な雰囲気が漂っていたところ、文芸フェスの関係者のひとりが死体で発見される。椅子に手足をテープで固定されていたが、なぜか右手だけは自由なままで……。年末ミステリランキングを完全制覇した『メインテーマは殺人』『その裁きは死』に並ぶ、〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズ最新刊!

優等生は探偵に向かない 自由研究には向かない殺人 (創元推理文庫)

『優等生は探偵に向かない』ホリー・ジャクソン/服部京子訳(創元推理文庫)
第3位 週刊文春2022ミステリーベスト10
第3位 ミステリが読みたい!2023年版
第5位 このミステリーがすごい!2023年版
第7位 2023 本格ミステリ・ベスト10
高校生のピップは、友人から失踪した兄ジェイミーの行方を探してくれと依頼され、ポッドキャストで調査の進捗を配信し、リスナーから手がかりを集めることに。関係者へのインタビューやSNSも調べ、少しずつ明らかになっていく、失踪までのジェイミーの行動。やがてピップの類(たぐ)い稀(まれ)な推理が、恐るべき真相を暴きだす。『自由研究には向かない殺人』に続く傑作謎解きミステリ! 解説=阿津川辰海

ロンドン・アイの謎

『ロンドン・アイの謎』シヴォーン・ダウド/越前敏弥訳(東京創元社/単行本)
第4位 2023 本格ミステリ・ベスト10
第7位 このミステリーがすごい!2023年版
第9位 週刊文春2022ミステリーベスト10
12歳のテッドは、いとこのサリムの希望で、巨大な観覧車ロンドン・アイにのりにでかけた。テッドと姉のカット、サリムの三人でチケット売り場の長い行列に並んでいたところ、見知らぬ男が話しかけてきて、自分のチケットを一枚ゆずってくれると言う。テッドとカットは下で待っていることにして、サリムだけが、たくさんの乗客といっしょに大きな観覧車のカプセルに乗りこんでいった。だが、一周しておりてきたカプセルに、サリムの姿はなかった。サリムは、閉ざされた場所からどうやって、なぜ消えてしまったのか? 人の気持ちを理解するのは苦手だが、事実や物事の仕組みについて考えるのは得意で、気象学の知識は専門家並み。「ほかの人とはちがう」、優秀な頭脳を持つ少年テッドが謎に挑む。カーネギー賞受賞作家の清々しい謎解き長編ミステリ! 訳者あとがき=越前敏弥

彼は彼女の顔が見えない (創元推理文庫)

『彼は彼女の顔が見えない』アリス・フィーニー/越智睦訳(創元推理文庫)
第4位 ミステリが読みたい!2023年版
第8位 このミステリーがすごい!2023年版
アダムとアメリアの夫婦はずっとうまくいっていなかった。そんなふたりは、カウンセラーの助言を受け、旅行へと出かける。夫婦だけで滞在することになったのは、泊まれるように改装された山奥の古いチャペル。不審な出来事が続発するなか、ふたりは大雪で身動きがとれなくなり――。だれが何を狙っているのか? 『彼と彼女の衝撃の瞬間』の著者が贈る、驚愕の傑作サスペンス! 解説=村上貴史

アリスが語らないことは (創元推理文庫)

『アリスが語らないことは』ピーター・スワンソン/務台夏子訳(創元推理文庫)
第7位 ミステリが読みたい!2023年版
第12位 週刊文春2022ミステリーベスト10
大学生のハリーは、父親の事故死を知らされる。急ぎ実家に戻ると、傷心の美しい継母アリスが待っていた。刑事によれば、海辺の遊歩道から転落する前、父親は頭を殴られていたという。しかしアリスは事件について話したがらず、ハリーは疑いを抱く。――これは悲劇か、巧妙な殺人か? 過去と現在を行き来する物語は、ある場面で予想をはるかに超えた展開に! 圧巻のサスペンス。解説=吉野仁

窓辺の愛書家 〈刑事ハービンダー・カー〉シリーズ (創元推理文庫)

『窓辺の愛書家』エリー・グリフィス/上條ひろみ訳(創元推理文庫)
第10位 週刊文春2022ミステリーベスト10
第11位 ミステリが読みたい!2023年版

第13位 このミステリーがすごい!2023年版
多くの推理作家の執筆に協力していた、本好きの老婦人ペギーが死んだ。死因は心臓発作だが、介護士のナタルカは不審に思い、刑事ハービンダーに相談しつつ友人二人と真相を探りはじめる。しかしペギーの部屋を調べていると、銃を持った覆面の人物が侵入してきて、一冊の推理小説を奪って消えた。謎の人物は誰で、なぜそんな行動を?『見知らぬ人』の著者が贈る傑作謎解き長編。解説=杉江松恋

ガラスの顔

『ガラスの顔』フランシス・ハーディング/児玉敦子訳(東京創元社/単行本)
第15位 このミステリーがすごい!2023年版
人々が《面》と呼ばれる表情を顔にまとって暮らす地下都市を舞台に、はねっかえりの少女が、国をゆるがす陰謀に巻き込まれる。名著『嘘の木』の著者による冒険ファンタジイ。


■国内ミステリ

大鞠家殺人事件

『大鞠家殺人事件』芦辺拓(東京創元社/単行本)
第75回日本推理作家協会[長編及び連作短編集部門]受賞作
第22回本格ミステリ大賞[小説部門]受賞作
第3位 ミステリが読みたい!2023年版
第6位 2022 本格ミステリ・ベスト10
第8位 このミステリーがすごい!2023年版
大阪の商人文化の中心地として栄華を極めた船場。戦下の昭和18年、陸軍軍人の娘・中久世美禰子は婦人化粧品販売で富を築いた大鞠家の長男に嫁いだ。だが夫・多一郎は軍医として出征し、美禰子は新婚早々、一癖も二癖もある大鞠家の人々と同居することになる。やがて彼女は一族を襲う惨劇に巻き込まれ……大阪大空襲前夜に起きる怪異と驚愕の連続を描いた、正統派本格推理の歴史に新たな頁を加える傑作長編ミステリ!

名探偵に甘美なる死を 〈竜泉家の一族〉シリーズ

『名探偵に甘美なる死を』方丈貴恵(東京創元社/単行本)
第4位 2023 本格ミステリ・ベスト10
第19位 週刊文春2022ミステリーベスト10
「犯人役を演じてもらいたい」と、世界有数のゲーム会社・メガロドンソフトから依頼を受け、VRミステリゲームのイベント監修を請け負った加茂冬馬。会場であるメガロドン荘に集ったのは『素人探偵』8名、その中には「幽世島(かくりよじま)」の事件に関わり現在はミステリ作家となった竜泉佑樹もいた……。だが、穏やかな幕開けを迎えるはずだったイベントは一転、探偵と人質になったその家族や恋人の命を賭けた殺戮ゲームへと変貌を遂げる。生き延びるには、VR空間と現実世界の両方で起きる殺人事件を解き明かすしかない――! 『時空旅行者の砂時計』『孤島の来訪者』に続く、“館もの”本格ミステリ長編。

仕掛島

『仕掛島』東川篤哉(東京創元社/単行本)
第9位 2023 本格ミステリ・ベスト10
岡山の名士が遺した二通の遺言状。一通目の遺言に従って、一族の面々は瀬戸内の孤島・斜島に集められた。行方を晦ましていた怪しげな親族までも別荘『御影荘』に招かれて奇妙な空気に包まれるなか、もう一通の遺言状は読みあげられた。その翌朝、相続人の一人が死体となって発見される。折しも嵐によって島は外界から隔絶される事態に。相続人探しの依頼を受けていた私立探偵・小早川隆生と遺言執行人の代理を務める弁護士・矢野沙耶香、ふたりは次から次へ奇怪な事件に巻き込まれていく。鬼面の怪人物の跳梁、消える人影、そして一族が秘密にしていた二十三年前の悲劇――続発する怪事の果て、探偵たちの眼前に驚愕の真相が現出する! 本屋大賞作家が満を持して放つ、謎解きの興趣を隅々まで凝らした長編ミステリ。

馬鹿みたいな話!: 昭和36年のミステリ

『馬鹿みたいな話! 昭和36年のミステリ』辻真先(東京創元社/単行本)
第10位 週刊文春2022ミステリーベスト10
第16位 このミステリーがすごい!2023年版
昭和36年、中央放送協会(CHK)でプロデューサーとなった大杉日出夫の計らいで、ミュージカル仕立てのミステリ・ドラマの脚本を手がけることになった風早勝利。四苦八苦しながら脚本を完成させ、ようやく迎えた本番。アクシデントを乗り切り、さあフィナーレという最中に主演女優が殺害された。現場は衆人環視下の生放送中のスタジオ。駆け出しミステリ作家・風早と那珂一兵が、殺人事件の謎解きに挑む! 戦前の名古屋を活写した『深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説』、年末ミステリランキングを席巻した『たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説』に続く、“昭和ミステリ”シリーズ第3弾。ミステリ作家デビュー『仮題・中学殺人事件』から50周年&卒寿記念出版。

ダミー・プロット 山沢晴雄セレクション (創元推理文庫)

『ダミー・プロット 〈山沢晴雄セレクション〉』山沢晴雄/戸田和光編(創元推理文庫)
第12位 このミステリーがすごい!2023年版
第12位 2023 本格ミステリ・ベスト10
配送された手首。地下鉄の網棚の上に置き去られた首。占い教室の床に横たわった胴体。これらはすべて同一人物のものと特定されたが、この死者は誰なのか。縺れ合う複数のアリバイ工作が解きほぐされた果てに、探偵砧順之介の前に姿を現した犯人とは――。孤高の本格推理作家が「私の書いた全作品中一番出来のいい作品」と自ら認めた幻の傑作長編を、ついに創元推理文庫に収める。編者解題=戸田和光/解説=芦辺拓

コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎 (ミステリ・フロンティア)

『コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎』笛吹太郎(ミステリ・フロンティア/単行本)
第15位 2023 本格ミステリ・ベスト10
昨日行った居酒屋が消えた? 引き出しのお金が四万七千円も増えていた? 誰も死んでいないのに姉が四方八方に喪中はがきを送りつけていた? ミステリ談義の集まりにひとりゲストをお呼びして、毎回カフェでゆるゆると行う推理合戦。それなりにみんながんばるのだけど、いつも謎を解き明かすのは店長の茶畑さんなのだった。もっと気軽に謎解きを楽しみたいと思っていた皆さんへ贈る、ユーモラスなパズル・ストーリー七編。期待の新鋭、本格的デビュー。著者あとがき=笛吹太郎

揺籃の都 (ミステリ・フロンティア 113)

『揺籃の都 平家物語推理抄』羽生飛鳥(ミステリ・フロンティア/単行本)
第16位 2023 本格ミステリ・ベスト10
第17位 ミステリが読みたい!2023年版
治承四年(一一八〇年)。平清盛は、高倉上皇や平家一門の反対を押し切って、京から福原への遷都を強行する。清盛の息子たち、宗盛・知盛・重衡は父親に富士川の戦いでの大敗を報告し、都を京へ戻すよう説得しようと清盛邸を訪れるが、その夜、邸で怪事件が続発する。清盛の寝所から平家を守護する刀が消え、「化鳥を目撃した」という物(もの)の怪(け)騒ぎが起き、翌日には平家にとって不吉な夢を見たと喧伝していた青侍が、ばらばらに切断された屍で発見されたのだ。邸に泊まっていた清盛の異母弟・平頼盛は、甥たちから源頼朝との内通を疑われながらも、事件解決に乗り出すが……。第四回細谷正充賞を受賞した話題作『蝶として死す』に続く、長編歴史ミステリ!