こんにちは、翻訳班のKMです。
11月18日、ミック・ジャクソン『こうしてイギリスから熊がいなくなりました』文庫版が発売されます。チョコミントみたいに美味しそうな見た目が特徴です。「チョコミントは美味しくない」という意見をお持ちの方はご一報ください。夜が更けるまで語らいましょう。
帯を外すとこうなります。縦長のタイトルと、にょ~んと立ち上がった熊が調和していて素敵です。本書のデザイナーは藤田知子さん。デイヴィッド・ロバーツ氏の魅力あふれる挿絵の中からどれをカバーイラストに使おうか、という相談にも乗っていただきました。おや、熊の腕に抱かれているのは……?と首をかしげられた方は、ぜひ本書をぱらぱらめくり、この絵の状況をお確かめください。
●内容紹介
電灯もオイル・ランプもない時代、森を忍び歩く悪魔として恐れられた「精霊熊」。死者への供物を食べさせられ、故人の罪を押しつけられた「罪食い熊」。スポットライトの下、人間の服装で綱渡りをさせられた「サーカスの熊」――彼らはなぜ、どのようにしていなくなったのでしょう。『10の奇妙な話』の著者であるブッカー賞最終候補作家が皮肉とユーモアを交えて紡ぐ8つの物語。訳者あとがき=田内志文/解説=酉島伝法
田内志文先生が訳者あとがきで詳述されているように、現在のイギリスには野生の熊がいません。彼らがいなくなった経緯を、著者が想像力をたっぷり詰めこんで書き上げたのが本作です。虚実を軽々と行き来する文章は、奇妙で自由で、ときに微笑を誘います。なのに読み終えると、もういない熊たちの姿が切なく胸に残ります。
解説は酉島伝法先生にお願いしました。ミック・ジャクソンに負けず劣らず奇妙な小説を書かれている方ですが、解説では親しみやすい文章で、熊たちに温かい目を向けられています。一方、人間と熊の関係に向ける目は鋭く、カバーの熊についての言及には深く頷かされます。
ということで、日本にお住まいの人間と熊のみなさまも、ぜひ本書をお手にとり、英国の熊たちの歩みを見届けていただければと思います。