帝国オロンドリアを二分した、書物と言葉を巡る大乱。そのただ中を生きた四人の女性──貴族出身ながら戦いにその身を投じた剣の乙女、その彼女を愛した遊牧民の歌い手、帝国を支配する思想を創りだした者を父に持つ女司祭、そして反乱を起こした王子の秘密を知る王家の娘。正史の陰に秘められた真実を今、彼女たちが語りはじめる。世界幻想文学大賞など四冠『図書館島』姉妹編の傑作本格ファンタジイ。
訳者あとがき=市田泉/解説=河野聡子

『図書館島』につづくソフィア・サマターの傑作長編ファンタジイ『図書館島異聞 翼ある歴史』、待望の文庫化です。「姉妹編」とあるように、作品としてはどちらを先に読んでも大丈夫。

『図書館島』は文字を持たない島に生まれた青年の、書き記した言葉と語り伝える言葉をめぐる遍歴の物語でしたが、今回テーマとなるのは「書き記された歴史」。歴史というものが誰かによって記述されたものならば、それは誰にとっての真実なのか? 語り手となる四人の女性たちは、それぞれにとっての真実をめぐる物語、「歴史」を書き記してゆきます。

 また本作も『図書館島』同様、緻密に記されていく、むせかえるような異世界の描写が読みどころ。誰も知らない土地に旅をするような気分で、本作を読むのもおすすめです。

『図書館島異聞 翼ある歴史』は10月11日ごろ発売。解説は河野聡子さん。お楽しみに。