一冊の小説が世界を変える。
それを、証明しなければ。
冷戦下、超大国ソ連と戦うCIAの女性たちを描く傑作長編、文庫化!


2020年4月に単行本で翻訳版を出版したラーラ・プレスコットの『あの本は読まれているか』は、デビュー作にもかかわらず、アメリカで出版契約金200万ドル(約2億円)だったという驚きの一作でした。本国で初版20万部で刊行され、世界30か国で翻訳決定。アメリカ探偵作家クラブ(MWA)主催の2020年エドガー賞最優秀新人賞の最終候補作となりました。
また日本でも、年末ミステリ・ランキングで高順位にランクインし、話題沸騰の1冊となりました。

*第3位〈週刊文春〉2020ミステリーベスト10 海外部門
*第5位〈ハヤカワ・ミステリマガジン〉ミステリが読みたい! 海外篇
*第9位『このミステリーがすごい! 2021年版』海外編 


そんな話題作がこの夏、文庫化! この機会にぜひたくさんの方に読んでいただきたいです!!
まずはあらすじを……。

冷戦下のアメリカ。ロシア移民の娘であるイリーナは、CIAにタイピストとして雇われる。だが実際はスパイの才能を見こまれており、訓練を受けて、ある特殊作戦に抜擢された。その作戦の目的は、共産圏で禁書とされたボリス・パステルナークの小説『ドクトル・ジバゴ』をソ連国民の手に渡し、言論統制や検閲で人々を迫害するソ連の現状を知らしめること。危険な極秘任務に挑む女性たちを描いた傑作長編!

本書は巧みに描かれたスパイ小説であり、歴史小説、恋愛小説でもあります。そして何よりも――「本」の力を信じている人々の物語です。
『ドクトル・ジバゴ』をソ連国民の手に渡し、政治体制への批判の芽を育てようとするという特殊作戦は、かつてCIAが実際に行なった対ソ戦略のひとつでした。実際にあった歴史的な出来事を題材に、著者が生み出した登場人物が生き生きと描かれており、素晴らしいフィクションに仕上がっています。

冷戦下のアメリカとソ連が舞台で、それぞれの世界で懸命に生きる人々の姿が胸を打ちます。西側ではCIAでタイピストとして働く女性たちの日常を描きながら、自由な社会にもある差別やハラスメントなどを浮かび上がらせます。
そして東側では、『ドクトル・ジバゴ』の著者パステルナークと愛人のオリガの人生を題材に、ソ連の秘密警察の恐ろしさ、オリガが経験した矯正収容所の悲惨さが克明に描写されます。圧倒的な力強さを持った読み応えたっぷりの物語です。

文庫化に際し、書評家の大矢博子さんに素晴らしい解説をご執筆いただきました。歴史的背景をわかりやすく説明していただくと同時に、本書のさまざまな魅力を深く掘り下げていただきました。ぜひご一読いただけると嬉しいです!!
文庫版の装画は、M!DOR!さんが単行本の時の素敵な装画を、文庫版に再構成してくださいました。スタイリッシュなコラージュによって、本書の魅力がダイレクトに伝わってきます。装幀は藤田知子さんが、しなやかな強さを感じさせるインパクト抜群のデザインに仕上げてくださいました。単行本をお持ちの方も、ぜひお手に取っていただけると嬉しいです!

『あの本は読まれているか』は好評発売中です。どうぞよろしくお願いいたします!


(東京創元社S)  


◇吉澤康子/ラーラ・プレスコット『あの本は読まれているか(単行本版)』訳者あとがき(全文)



◇海外書評より

著者は楽しみながら執筆したにちがいない。その結果、この本は永久に読み続けられるべき小説となった。そして、本書で語られた「秘密」はずっと語り継がれていくはずだ。
――〈サンフランシスコ・クロニクル〉紙 

著者は歴史の闇に埋もれた諜報活動や冷戦下のプロパガンダ作戦を描き、類いまれなスパイ小説を創りあげた。
――〈ウォールストリート・ジャーナル〉紙 

見事なスパイ小説であり、歴史フィクションであり、心を揺さぶる恋愛も描いている。ページをめくる手が止まらなくなる壮大な作品だ。
――〈コロンバス・ディスパッチ〉紙 

◇編集部より

これは、「本」の力を信じている人々の物語です。歴史的な知識がなくてもするする読めるし、とんでもなく面白い。この本のすごさをあらゆる人に伝えたい!
(担当編集者S) 

物語はどんどんとんでもない方向に転がっていく。とにかく夢中で最後まで読んで、登場人物に共感したり、腹が立ったり。著者の掌で踊らされているのはわかっているけど、とても満足。
(編集部KK) 

黎明期のCIA、女性たちの物語に引き込まれ、夢中で読み進めるうちに、気がついたら世界的な大事件の物語の波に翻弄されているという、類い稀な読書体験でした。
(編集部I)