囲碁では、養成所で一定の成績をあげて初段になった人をプロと言う。プロ同士の対局は常に互先(たがいせん)で、プロの初段と九段の対局でも同じように互先である。黒番が有利だと言われていて、黒番には6目半のコミ(ハンディのこと)がある。つまり終局で黒番は7目リードしていないと勝ちではない。
また囲ったところを地(ジ)というが、何目というふうに数える。また子とは石数のことで、目は地のことなのだが、混同して使ってしまう場合がある。同じ意味で使ったりすることがあるからである。かつては打込十番碁といったようなイベントもあったけれど、プロ同士は置碁を打たない。置碁というとアマチュアがプロに打ってもらう指導碁というようなイメージが強いのだが、アマチュア同士は置いたり置かせたりして、実は互先よりも置碁を打っている場合が多い。アマチュアの場合、一級差、一段差で一子の差というのが決まりである。
例えば五段の人に初段の人は四子置くというふうに。自分はA氏に四子置いているが、B氏には三子置かせているとか言って、自分の棋力を表現する。余談だが、或る人を認める言葉に「あの人には一目置いている」というのがあるが、囲碁からきた言葉である。最近の碁会所では点数制になっているところが多く、例えば一子分を12点として、1点はコミ1目に相当し、負けると持ち点が1点減点され、勝つと1点加算されるという風になっている。あの人に13点差などというと風情がないけれど、今頃ではそのようになっている。
さて、アマチュアの対局で置碁が多く打たれているのにも関わらず、置碁の本というのは少ない。ほとんどが互先の技術を扱っている。もちろん置碁の技術も本質的には互先と大きく変わるところはない。しかし戦術的な選択には違いがある。置いた石の威力を有効活用することは大切なことだが、置碁の黒は棋力が白よりは落ちる為、複雑で難しい形を避けて打つのが一般的な要領と言えよう。上手に乱打戦で挑戦すると、損をする可能性が高いのは下手である。したがって、出来るだけ簡潔な進行を選んで上手が腕力を発揮する箇所を減らし、地合いで優位を確立するのが良い戦略である。
本書は、特に置碁の醍醐味が感じられる三子局と四子局によく登場する技術を扱った。本書によって、三子局、四子局の常用手段を身に付ければ、「天下四目」と言って、四子置けば誰にも負けないと言うような棋力を獲得できるはずである。