第11回ミステリーズ!新人賞受賞作「消えた脳病変」のシャープな謎解きに魅了されたファンの皆様、お待たせいたしました。浅ノ宮遼が贈る最新作『情無連盟の殺人』がいよいよ刊行です。謎解きのシャープさはそのままに、さらにパワーアップした長編ミステリに仕上がりました。また今作は、浅ノ宮遼のミステリ仲間である眞庵との共作になります。

麻酔科医の伝城英二は、徐々に感情が失われていく奇病アエルズに罹り、患者とのトラブルから医師を辞め、献血センターでの時々のアルバイトと、アエルズ専門医の元を定期的に訪ねるのみの生活を送っている。欲求がないため、ファッションに興味が無く、食事も栄養さえ摂れればよいということからほぼ同じメニューである。
そんな折、伝城はアエルズ患者が共同生活をおくる「情無連盟」から、参加の打診を受ける。髪型も服装も同じにした八名が暮らす「情無連盟」。その屋敷を訪ねた伝城を待ち受けていたのは、不可能状況下で連盟員の一人が惨殺されるという事件だった! 他人をうらやむことも憎むこともしない、ましてや金銭にも興味がないのに、なぜ殺人事件が起こったのか? 連盟の面々は、伝城にこの事件を調査することを依頼する。完全には感情が失われてはおらず、現時点では部外者である伝城であれば、犯人を見つけることができると踏んだためだ。果たして、伝城の感情が完全に失われるまでに事件の謎を解くことができるのか?

本書の魅力は、帯でも紹介したように、様々な本格ミステリの魅力に溢れているところでしょう。現役医師二人が「アエルズ」という架空の病気を設定(特殊設定)、屋敷に集う怪しい九名の人物(館ミステリ)、真相が57通りある中での犯人当て、ミステリ好き二人の共作といったところです。

蛇足ながら個人的には、アエルズ専門医の五味のキャラクターが、いい味をだしていて気に入っています。浅ノ宮遼、眞庵の代表作『情無連盟の殺人』をじっくりと楽しんでいただければ幸いです。