7月12日に『ロンドン・アイの謎』が刊行となりました! パトリック・ネスが執筆した『怪物はささやく』の原案者であり、『ボグ・チャイルド』でカーネギー賞を受賞した作家シヴォーン・ダウドの長編ミステリです。
『ロンドン・アイの謎』はもともと2007年にイギリスで刊行されたのですが、日本では今まで出版されておらず、翻訳者の越前敏弥先生が東京創元社に企画を持ちこんでくださったことで翻訳出版へと至りました。その詳しい経緯は越前先生のnote(https://note.com/t_echizen/n/ne326b9f1d328)や、文芸誌『紙魚の手帖』vol.05(2022年6月号)のエッセイ「翻訳のはなし」などで語られています。
数々の名作ミステリや文学を翻訳されてきた名翻訳者が「翻訳したい!」と企画を持ち込んでくださった作品なのです!! もう、本当に素晴らしい作品なので、ぜひたくさんの方に読んでもらいたいです!
さて、まずはあらすじを……。
12歳のテッドは、いとこのサリムの希望で、巨大な観覧車ロンドン・アイにのりにでかけた。テッドと姉のカット、サリムの三人でチケット売り場の長い行列に並んでいたところ、見知らぬ男が話しかけてきて、自分のチケットを一枚ゆずってくれると言う。テッドとカットは下で待っていることにして、サリムだけが、たくさんの乗客といっしょに大きな観覧車のカプセルに乗りこんでいった。だが、一周しておりてきたカプセルに、サリムの姿はなかった。サリムは、閉ざされた場所からどうやって、なぜ消えてしまったのか?
人の気持ちを理解するのは苦手だが、事実や物事の仕組みについて考えるのは得意で、気象学の知識は専門家並み。「ほかの人とはちがう」、優秀な頭脳を持つ少年テッドが謎に挑む。カーネギー賞受賞作家の清々しい謎解き長編ミステリ!
本書は魅力的な謎を鮮やかに解決する優れたミステリであると同時に、素晴らしい成長物語でもあります。物語の語り手であるテッドはとても頭がよい少年ですが、学校でも同級生となじめないなど、生きづらさと孤独を抱えています。
そんな彼がサリムと出会い意気投合する場面はとても印象的ですし、勝ち気で意地悪なテッドの姉カットも、謎解きを通して弟への態度に変化が現れます。
そのほか、学校でのいじめなどさまざまな要素が盛り込まれ、読者にべつの視点を提供する物語となっています。子供から大人まで、誰もが楽しめ、考えさせられる作品だと思います!
担当編集者であるわたくし翻訳班Sは、子供のころは児童書のミステリに夢中でした。特に『マガーク少年探偵団』シリーズ(エドマンド・ウォレス・ヒルディック著、蕗沢忠枝訳)が大好きで、今の翻訳ミステリ編集という仕事につながったなあと感じています。
『ロンドン・アイの謎』は12歳の少年が語り手ということで、ぜひ同じくらいの年齢の子供たちに手に取ってもらいたいと思い、ルビ(ふりがな)を多く振っています。
中学生以上、読書好きなら小学生から読めるように工夫しています。文章もとても読みやすく、子供たちが共感できる物語です! こういう作品を読んで、ミステリ好きになってもらいたい、謎解きの面白さに浸ってもらいたいと思いながら編集作業を進めました。
謎の中心であるロンドン・アイは、ロンドンの有名な観光スポットとなっている大観覧車です。越前敏弥先生が今年の5月に訪れ、写真を撮ってきてくださいました! ロンドンの町並みも素敵ですし、観覧車のカプセルってこんな感じなのかー! と思っていただけると思います。ビッグ・ベンも見られますね。
すてきなお写真をありがとうございました!



魅力的な謎、論理的な面白さに満ちた推理、そして少年名探偵! ミステリの面白さがぎゅぎゅっと詰まった『ロンドン・アイの謎』を、ぜひ大勢の方に読んでいただきたいと思います。
*海外書評より
強く心をつかまれる探偵小説だ――〈サンデー・テレグラフ〉
心を捉えて放さない読書体験。――〈インディペンデント〉
素晴らしいミステリだ。笑いあり、ハラハラドキドキあり、優しさもある。テンポもよく、興奮できて、さまざまな場面で真剣に考えさせられる。――〈スクール・ライブラリアン〉
(東京創元社S)