野球、サッカー、競馬などのスポーツ関連、新聞記者もの、医療ものなど、さまざまなジャンル、主人公の作品を手がけてきた著者が贈る、衝撃のミステリ『にごりの月に誘われ』刊行となります。
今作の主人公・上阪傑は、経済紙の記者から独立したフリーライター。記者時代から数々の書籍のゴーストライターも務めていたが、なかなか自身の単著は振るわない。物語は、傑が旧知のIT大企業会長からの連絡で幕を開ける。余命6カ月だという会長・釜田芳人が、最後の自叙伝の執筆を傑に依頼。かつて釜田の自叙伝2冊を手がけた傑は、11年前に印税の支払いトラブルとなっており、当初は依頼を断るつもりでいたのだが……。
最後の自叙伝、初版5万部という餌につられて代筆を引き受けた傑だが、一日一時間の取材で会長にインタビューを試みると、以前の自叙伝でも、そのほかのインタビュー等でも聞いたことのないエピソードの連続ばかりに驚く。何のために、この最後の自叙伝で新たなエピソードを話してくるのか? そして、「にごりの月」とは何を意味するのか? そもそもなぜ11年ぶりにゴーストライターを頼んできたのか――。著者の新たな代表作を、じっくりとご堪能くださいませ。
いち早く、ゲラにてお読みただいた書店員さんからのコメントをご紹介していきます(※いただいた順にご紹介させていただきます)。みなさまありがとうございます。
・『コメリ書房鈴鹿店』森田洋子さん
ゴーストライターの依頼を引き受けることになったフリーライターの上阪傑。取材をしていくうちに謎がどんどん深まりいろいろ考えさせられる。明るみになるエピソードは驚きの連続と切なさも秘めていた。ステキなミステリーでした。
・『椿書房』渡部哩菜さん
度肝を抜かれるミステリ。この「うおおおおっ!」となる感覚は、読んだ人間にしかわからない。ネタバレしないように紹介する語彙力を持ち合わせていないので、どうか手に取ってみてほしいと思います。
・『ジュンク堂書店滋賀草津店』山中真理さま
たどりついたものは、自分の気持ちの中でふくらんで、真実は薮の中にある。読後、これで自分が思ったことでいいんだよねと納得しようとしている。お互いリスペクトし合い、遠くにいても気にし合い、お互いの幸せを願うそういう存在がいるということは、生涯の一番の宝物だと思った。まさか最後、そんな!と呆然とした。
・『萬松堂』中山英さん
ライター魂ここに極まれり。取材で明らかになる新事実、迫りくる締切、そして報酬の不安。文筆業の苦悩と葛藤を描いた傑作。こうして完成した本を店頭で並べているという現実に書店員として改めて深く敬意を表したいと思う。
・『書泉ブックタワー』山田麻紀子さん
がめつくて見栄っ張りな社長の語る半世紀に反発を覚えつつ、このまま上阪氏がふりまわされるだけの話で終わってしまったらどうしようかとやきもきしながら読んでいました。金、人、技術と熱意をフル活用する社長とは一筋縄ではいかない生きものだとかみしめた1冊でした。
・『(株)新進』宮地友則さん
“真実しか書かない!”覚悟のうえに突きつめたものは何と、計画的な偽装――。親子の絆のウラにあった真相を騙されやすいが、行動力ある好青年が暴いていく。“月”は自ら光らずとも、太陽の光をはね返して輝く。太陽となるのか、月になるのか……。自らの天分を問う、珠玉のミステリーとなった!
・『マルサン書店サントムーン店』原田里子さん
――そう焦るな。これからじっくり話すから。各人の章を一つ読み終えると、もう秘められた過去と今の思惑が気になって読んでる間も目が次の文字、次の行と止まらず、釜田芳人の上阪傑への言葉が自分に言われたいるみたいだった。人の一生は箇条書きにした事実だけではその思いには至れない。他人から見れば悪と見えることに深い友情が潜んでいる。しかしその友情もただ白い思い一色ではなく清濁併せ持った複雑な色をし「にごった」色の中で強くなっていくのだと教えられる作品でした。
・『ジュンク堂書店神戸住吉店』大橋加奈子さん正直なところ、取材されるIT企業の会長について、共感も好感も持てないものの、本の面白さは別問題。取材で得たいくつもの事実が次々と線になっていくところのワクワク感が楽しくて、一気に読んじゃいました。