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本作「新世界(ニュー・ワールド)」はイギリスの作家パトリック・ネスのSF三部作〈混沌(カオス)の叫び〉の前日譚にあたるスピンオフ短編です。これだけでも独立した物語として楽しめますが、『心のナイフ』と併せてお読みいただけますと面白さが倍増します。〈混沌の叫び〉は第一部『心のナイフ』がガーディアン賞、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞、ブックトラスト・ティーンエイジ賞を、第二部『問う者、答える者』がコスタ賞児童書部門を、第三部『人という怪物』がカーネギー賞を受賞しています。賞だけが作品の質を保証するものではありませんが、この受賞歴を見れば、〈混沌の叫び〉の三部作がいかに多くの読者に読まれ、感動を与えたかがわかることと思います。
舞台は地球から遠く離れた惑星〈新世界(ニュー・ワールド)〉。プレンティスタウンは〈新世界〉のたったひとつの町。この星に入植した人々は土着の生き物スパクルと戦いになった。そしてスパクルがまいた細菌のせいで女はすべて死に絶えて、生き残った男たちも互いの思考がすべて“ノイズ”として聞こえるようになってしまったという。
トッド・ヒューイットはあとひと月で13歳、つまり正式な大人になる。プレンティスタウンで一番若い。女たちが死んでしまったということは、もう子どもは産まれないのだから、トッドは最後の子どもなのだ。町外れの農場に、親代わりのベンとキリアンと犬のマンチーと一緒に住んでいる。
ある日、トッドは沼地でノイズを全く発しない不思議な存在に出会う。これは何? それとも誰? スパクルではない、それは死に絶えてしまったと思われていた女、いや、女の子だったのだ。
たったひとりの少年とこの世にいないはずの少女。ふたりが出会ったとき、世界は動き始める……
2021年11月12日からは著者自身が脚本に関わった映画「カオス・ウォーキング」が公開されました。映画ではこの「新世界(ニュー・ワールド)」の部分も映像化されています。
また、以前に公開したスピンオフ短編「広い広い海」「スノースケープ」はこちらからご覧いただけます。本国でも電子のみで発表された作品です。
本編と繫がった設定ですので、『心のナイフ』のあとにこちらをお読みになることをおすすめします。