昨年末、文庫版『ただし、無音に限り』を刊行したばかりの織守きょうやさんの同シリーズ第二作、『夏に祈りを ただし、無音に限り』が登場です。主人公の天野春近は霊を視ることができる特異体質の私立探偵。しかも霊がいる場所で眠ると、生前のその人物の記憶を視ることが可能で、これまでも様々な事件を解決に結びつけてきました。とはいえ、探偵事務所にひっきりなしに依頼があるわけでもなく、前作の事件で知り合った、中学生男子・羽澄楓の家庭教師のアルバイトも続けています。
ある日、楓の家の家政婦である小池すみれから、私立探偵としての依頼(というか相談)が舞い込むのが、今作のスタートになります。保育園の園長をしている小池の友人から、ちょっと気になる子がいるという相談になります。その園児は虐待などの怪我や言動もないものの何かが引っ掛かるという。長年園児を見てきた園長のカンでしかないと話すのだが……。
園長との話し合いから、春近が園の補助ボランティアとして加わって様子を見ていくという結論におちつきます。ボランティアには、学校が夏休みに入った楓も参加し、園児たちを注意深く見守ります。そして、園児たちの散歩に同行した際に、こちらに不思議な動きを見せる子どもの霊の存在に気づきます。どうやら少し前に事故で亡くなった園児の霊で、園長が気になると言っていた園児と仲が良かったらしい。男の子の霊の動きは、いったい何を意味するのか? この場所で春近が眠って霊の記憶を探ってみるものの……。
著者の織守さんは、昨夏に刊行した『花束は毒』(文藝春秋)が、「王様のブランチ」の読書コーナーなどで紹介されるなど、注目度がアップしています。『夏に祈りを』の二転三転する展開にも、ぜひご期待ください。