読み進むにつれ、面白くて面白くてページをめくる手が止まらず、つねに斜め上をいく登場人物たちの行動に思いきり振り回され、わくわくドキドキ、ヒヤヒヤはらはら、ときには手に汗握り、ときには爆笑しながら一気に読了。
 こんなに面白い小説があったなんて!
 絶対に訳したい!!
(訳者あとがきより)  

みなさんこんにちは。フェレットとラムネをこよなく愛する翻訳班Sでございます。最近、Twitterのアイコンにしているフェレットの写真をネズミと間違えられてショックを受けました。フェレット(イタチ)の魅力をもっと伝えねばと決意しました。

さて、2月19日に創元推理文庫『平凡すぎて殺される』が発売です。とにかく面白い! 先が読めない! ページをめくる手が止まらない! このミステリ、実は翻訳者の青木悦子さんがとことん惚れ込んで出版が決まった一冊なのです。

あらすじは……

“平凡すぎる”顔が特徴の青年・ポールは、わけあって無職のまま、ボランティアで病院を訪問して、彼を身内と思いこんだ入院中の老人を癒(いや)す日々を送っていた。ある日、慰問した老人に誰かと間違えられて刺されてしまう。実は老人は有名な誘拐事件に関わったギャングだった。そのためポールは爆弾で命を狙われ、さらに……。身を守るには逃げながら誘拐の真相を探るしかない!? アイルランド発、巧みな構成が光るノンストップ・ミステリ!

本書の原題はA Man With One Of Those Faces(よくある顔の男)。これは主人公のポールを表しています。28歳、わけあって無職、いろいろあってくすぶっているポールの特徴は、“平凡であること”。この特徴から、彼は病院のボランティアで、さまざまな老人たちに自分の身内(息子とか、孫とか、使用人とか)と思いこまれています。寂しさを抱える老人たちに話を合わせて、慰めるというボランティアの最中に、彼は“平凡である顔”のせいで誰かと間違われ、ある老人に肩を刺されてしまいます。老人はなんと、“ラプンツェル事件”といわれる有名な誘拐事件の関係者でした。その老人が死んでしまったことで、何か秘密を握ったと思われたポールは、組織や殺し屋からあの手この手で命を狙われる羽目に……。

もうこの作品、読み始めると止まりません! 軽妙な会話とどこに転がっていくかわからない展開、そして時折挟まれる笑えるエピソードやしんみりする場面の連続に、物語に没頭して、とにかく楽しんで読める作品です。そもそも、ポールはなぜ刺されたのか? 30年前の誘拐事件に、一体どんな秘密があるのか? などのさまざまな謎や不可解な点が一気に解決するクライマックスが最高です!

ミステリとしての面白さだけではなく、キャラクターもすごくいいのです。主人公のポールはもちろん、ミステリや刑事ドラマが大好きな看護師ブリジット、警察のはみだし者でポールの天敵の刑事バニー、ことあるごとに危ないものを振り回す粋なおばあちゃん、ドラマや映画マニアの叩き上げ警部補などなど……。脇役まで全員めちゃめちゃ個性的で、読み終わる頃には彼らが大好きになっているはずです。

本書を翻訳された青木悦子さんは、「英語の小説で何か面白いのないかなあ……」とネットを彷徨していた際に、ふと原書の書影が目に留まって本書を読まれたそうです。そして冒頭の訳者あとがきに書かれたように、「こんなに面白い小説があったなんて! 絶対に訳したい!!」と決意されて、翻訳企画を持ち込んでくださいました。

翻訳者さんの熱意が読者のみなさんに届くように、担当編集であるわたしも、楽しみつつ力を入れて編集作業を進めました。カバーイラストには岡野賢介さんが格好よく絶妙な表情のポールを描いてくださいました。ナイフがポールを狙っていますが、帯の下にいる“あるもの”もとても危険なので要注目です。そしてカバーデザインは、藤田知子さんがスタイリッシュに仕上げてくださいました! 真っ赤なカバーが目印ですので、ぜひお手にとっていただけると嬉しいです。

『平凡すぎて殺される』、このヘンテコなタイトルが気になる方には熱烈におすすめいたしますので、お楽しみいただけると嬉しいです!

(東京創元社S)