8年ぶりに因縁のある旅人と再会した料理人の話、飢饉に苦しむ国を救った商人の話、不思議なナイフで自らの“影”を切り離した男の話。一見関係が無さそうな3つのエピソードが並行して語られ、終盤でひとつになるとき、驚愕の真相が浮かび上がる! 大胆な仕掛けと巧みに張り巡らされた伏線で、本格ミステリの謎解きを紡いだ、第7回ミステリーズ!新人賞佳作「商人(あきんど)の空誓文(からせいもん)」。
どんな賭けにも負けない力を得た少女、あらゆる傷を跡形なく消し去る名医……。この世の理に背く力に人生を狂わされる者たちの五つの物語と、その背後で進行する、国の存亡に関わる陰謀。架空の異国を舞台に、本格ミステリの興趣を巧みに織り込んだ、異色のミステリ連作集。
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2010年度の第7回ミステリーズ!新人賞は、美輪和音さん「強欲な羊」が受賞作、『盤上の夜』の宮内悠介さんや『コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎』の笛吹太郎さんの作品が最終候補に残るという激戦の年でした。
その際、明神しじまさんは本書に収録された「商人の空誓文」が、「異国を舞台にした寓話風のミステリ」として評価され、深緑野分さん「オーブランの少女」と同時佳作入選となりました。その期待の著者が12年を費やし、腕に縒りをかけて紡ぎ出した、異色の連作ミステリがいよいよ登場します!
本書は入選作のほか、同一のファンタジックな世界を舞台にした、様々な事件を全5編収録しています。どんな賭けにも負けない少女。あらゆる傷を跡形なく消し去る名医。魔女との契約で、「この世の理に背く力」を得た彼らをめぐって起こる事件の真相を、人間が論理的に解き明かすので、本格ミステリとしての読み応えは充分。青柳碧人さん『むかしむかしあるところに、死体がありました。』をはじめ、今、著名な作家陣が多く書いている「特殊設定ミステリ」に連なる、新たな傑作です!
選考委員の桜庭一樹さんが、選評で「読後は、世界と人間に対してのちいさな発見を得た。これこそ、物語を読む醍醐味だ」と絶賛したように、巧みな語り口で紡がれるミステリは唯一無二の魅力を放っています。新世代の語り部が紡ぐ、謎と面白さに満ちた極上の物語をお楽しみください!