10月23日、僕の心の師匠・樋口有介さんがお亡くなりになりました。呆然としてしまい、ご連絡いただいた方に再度詳細を問い合わせたほどです。71歳、まだまだ若すぎます。コロナ禍でここ数年はお目にかかれず、2018年に『亀と観覧車』の舞台を皆で観劇したのが最後かもしれません。お電話とメールでのやり取りが主だったものでした。〈柚木草平シリーズ〉は最終巻に向けて故郷(札幌)に向かう話はどうかとか、尾道を舞台にしたノンシリーズの青春ミステリを次は書こうか、と相談している段階でした。ともにロケハンが必要な土地柄でしたので、久しぶりにお会いできるかなと考えていたのですが、それもかなわずです……。

〈柚木草平シリーズ〉の再刊をお願いに初めてお目にかかったのは2005年頃かと思います。同僚と共にご自宅にお邪魔すると、にこやかに迎えてくださいました。ご自宅ではいつも、手料理(しかもとてもおいしい!)で迎えてくださり、夜8時頃になるとなじみの店をはしごしていくのが常でしたね。前橋だけでなく引っ越しの度に、なかなか行く機会のない呑み屋に連れて行ってくださいました。デビュー20周年の際には、伊香保温泉で各社の担当を集めて呑み明かしました。また、沖縄のお店はなかなかのディープなお店だったのは、強烈な思い出です。

「柚木みたいな38歳になりたい」と、打ち合わせの度に話すと、困ったように苦笑いされてらっしゃいました。そんな自分もあっという間にその柚木の年齢も超えてしまっています。ひょっとしたら樋口さんには女性編集者の方がよかったのかもしれませんが、僕としてはお仕事ご一緒できて光栄でした。本当にありがとうございました。慎んでご冥福をお祈り致します。

(東京創元社編集部K原)