ささやかな日常の謎を通して、少年少女の心の機微を瑞々しく描いた第28回鮎川哲也賞受賞作、『探偵は教室にいない』。札幌を舞台にした温かな青春ミステリが、この度待望の文庫化をします!
主人公は、「わたし」こと、中学2年生の少女・海砂真史(うみすなまふみ)。バスケットボールが得意なスポーツ少女で、大人と見紛うほど長身の彼女には、少し変わった幼馴染みの少年がいます。
彼の名は、鳥飼歩(とりかいあゆむ)。真史とは対照的に、丸メガネをかけた小柄な少年で、幼稚園の頃から妙に大人びていた頭の切れる子供でした。真史と歩は長いこと会っていませんでしたが、ある日真史の許に差出人不明のラブレターが届いたことで、変化が訪れます。
「学校で差出人不明のラブレターをもらうなんて、どうしてこんなことが起きたんだろう。クラスメイトの誰かの仕業? それなら、友達には相談しにくい。だったら、できれば学校の外の人に相談したい。ある程度信用できて、頭が切れる人……」。困った真史が頼った相手として歩を選んだことで、二人――幼馴染み同士にして、依頼人となぜか学校に通わない名探偵は、九年ぶりに再会を果たします。
第1話「Love letter from…」で、「真史がお菓子を持って、奇妙な謎について歩の家まで相談しに訪れる→歩がお菓子を食べつつ、話を聞くだけで解決」した時、真史にとって歩は「変人だけど、頼りになる名探偵」となりました。
以降、合唱コンクールの伴奏をするピアニストをめぐって生じたトラブル、真史の男友達とその恋人との間に起きたある出来事、真史が滞在地を告げずに家出してしまう事件……など、日常生活で少年少女が遭遇した謎が四編にわたり描かれます。
大人にとっては些細な出来事かもしれなくても、中学生の少年少女たちにとっては一大事。真史たちが謎を通して大切なことに気づいていく様子を、瑞々しく繊細に描いています。
また、札幌を中心とした北海道各地の有名スポットのシーンも見逃せません(札幌の円山公園や、余市のニッカウヰスキー蒸留所に行ってみたい……)。
文庫版には、川澄さんによる創作秘話を綴った、書き下ろしの後書きを収録しています。新たな青春ミステリの傑作を、どうぞご堪能ください!