アルファ碁の登場以来、囲碁界は何かというとAIの話になる。NHK杯でも画面の上部にAIによる評価を表示しているくらいである。一手打つと、それまで双方50%であったものが、黒75%とか表示される。それが良いのか悪いのか、そんな時代になったとしか言いようがない。
AIは絶対的に強い。そのAIに対して、そもそもAIとは何ぞやと研究する人がいる。好んで対局しようとする人もいる。またAIの打つ手を研究して自分の対局の参考にする人もいる。自分の打った手をAIに評価をゆだねる人もいる。総じてAIを利用して、自身の棋力を向上させようと考える人が、プロはもちろん、アマチュアの中にも増えてきたようだ。また将棋界にも同じようなことが起こっていると聞いている。
本書は、『イ・チャンホのAI探求 布石編』の続編である。以前の布石は、中盤に備えるための準備段階と考えられていて、互いにゆっくりと大きなところを占め合って、そこから中盤の戦いが開始されるのが常識的な流れであった。ところがAIの場合は、布石の段階でも関係なく相手の石にツケて、いきなり接近戦が始まることも珍しくない。
既存の囲碁では、「布石」「中盤」「ヨセ」という一般的な流れを維持しながら打っていた。ところがAIは、序盤からすぐに戦いに突入する傾向があるのだ。その影響で中盤の戦いで勝敗が決まることが多くなり、ヨセ勝負の割合が格段に減少してきた。圧倒的な比重で中盤の戦いが重要視されるようになり、中盤に関連する様々な技術をいかに身に付けることができるかが、上達の絶対的な課題となった。
本書『イ・チャンホのAI探求 中盤編』は、頻繁に登場する基本型を集中的に分析し、中盤に関する多様な技術を、アマチュアにも理解できるように変化図を付して構成したものである。本書が棋力向上の一助になることは間違いない。